スターライトパレード

木風

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第三巻 Éternité

第2話「マフラーとチョコ」②

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上の階へ向かう私と、下の階へ向かうセナ君。
それぞれ別のエレベーターに乗り込んで、別れる。

部屋に戻った頃、スマホにセナ君からLINEが届いていた。

「部屋、入った?」

私はベランダに出て、下を見下ろす。
そこにはまだ、セナ君の車があった。

『入ったよ』

そのメッセージを送信すると、まるで合図のように車がゆっくりと動き出す。
そのとき、気づいた。

「あ!マフラー!!」

……巻いたままだった。

怜央さんのコートといい、セナ君のマフラーといい……
どうして私は、いつもこうなんだろう。

今度会うときに返さなきゃ。そう思って、ハンガーにかけようとしたけれど……
なんとなく手放せなくて。

その夜は、マフラーをぎゅっと抱きしめたまま、眠ってしまった。


今日は、学年末テストが始まる前に、学校の友達と放課後ショッピング。

街はすっかりバレンタイン一色。
どこを見てもピンクや赤、ハートの装飾があふれていて、自然とそわそわしてしまう。

「てか見て見てこの限定チョコ!箱が可愛すぎるってば!!」
「え、箱目当てで買うやつじゃん~~!」
「私、缶のやつ何気に好きなんだよね~」

笑いながら、チョコレートが並ぶ売り場をぐるぐるまわる。

「……てか、みんな本命とか作る系~~?」
「えー!?ないない!作っても秒で食べられんの腹立つだけだし」
「わかる~!むしろ友チョコのが楽しくない?」
「手作りとかあれ絶対、労力と見返りが釣り合わないやつ!」

スターライトパレードのみんな甘いもの好きかな……?
確か、差し入れに甘いものけっこう置いてあったような記憶がある。
でも……次の約束なんて誰とも何もしていない。
いつ渡せるかなんてわからないチョコを買うのもどうなんだろう……

なんて考えていると、珍しく八神さんからLINEにメッセージが届く。

『渡したいものがあるので、お時間はありますか?』

渡したい物……?何だろう……?
明日は……土曜日……

『明日なら大丈夫です』

時間の指定をされる……

八神さんに会えるなら、みんなにチョコ……渡してもらえるかな。
そんな期待を込めて、チョコを7個。
買い物かごに入れた。



タクシーに乗り込み、指定された住所へ向かう。
手元には、メンバー分のチョコレートが7箱。
それに加えて、スタッフの方への差し入れ用のチョコも1箱。

タクシーを降りた場所は、静かな住宅街。
目の前に現れたのは、整えられた庭のある綺麗な一軒家。

……表札も何もないけど、本当にここで合ってるのかな。
ちょっと不安になりながら、インターホンを押すと……玄関のドアが開き、八神さんが姿を見せた。

「音羽さん、ご足労ありがとうございます。中へどうぞ」

靴を脱いで、そっと一歩を踏み入れた瞬間……
空気の匂いが、ふわっと変わった気がした。

「ここは、撮影用の家なんですよ」

木の床の乾いたような、でもどこか温かい香り。
柔らかな照明に照らされた白い壁。
アンティーク風の家具や雑貨は、ひとつひとつが“誰かのこだわり”で選ばれたように見える。

まるで、おとぎ話の世界に迷い込んだみたいだった。

「……ここ、本当のおうちじゃないんだ」

壁に立てかけられたヴィンテージ調の鏡。
窓辺の鉢植え。くすんだグリーンが、差し込む光に優しく溶け込んでいる。

撮影って、こんな場所で行われるんだ……

「今日、バレンタインなので。よかったら、みんなにこれを……」

差し出した紙袋を見て、八神さんがふっと笑う。

「……直接、渡せばいいですよ」

「え?」

リビングに案内されると……
そこには、スターライトパレードのメンバーたちがいた。


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最後まで読んでいただきありがとうございました!

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第2話「マフラーとチョコ」③は【本日夜】に更新予定です!

ぜひまた覗きに来てくださいね!
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