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第三巻 Éternité
第6話「Ignition」②
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「奏!」
気づいたら、セナ君が目の前にいた。
「奏ちゃん、大丈夫?あんなの、気にしなくていいよ。あの人、昔から気まぐれだから」
怜央さんが優しい声をかけてくれる。
「大丈夫だ。あの曲は、誰にもやらせねぇよ」
「そ、そーだよ~!上の人たちだって、あんなの絶対通さないから!!」
みんなが次々と声をかけてくれるのに……
さっきまで感じていた喜びや感動は、どこかに消えてしまっていた。
……胸の奥に、ぽっかりと、穴が開いていた。
1週間後……
私は、またレッスンスタジオに呼び出されていた。
あの後、KAIさんは本当に上層部に掛け合い、事務所も「スターライトパレード」と「G∀ME」、どちらがこの楽曲『Ignition』を持つにふさわしいかを判断することになった。
パフォーマンスを見て、会社としての利益になる方に歌わせる。
そんな……信じられない展開だった。
気が重い。
どうして、こんなことが許されてしまうのか。
私には理解できない“大人の事情”があるんだろうか……
早めにスタジオに到着し、入口で立っていると、
「こんにちは」
「……あ、こんにちは……」
そこには、G∀MEのKAIさんがいた。
「ね、キミが最近のスタライの曲作ってるってホント?」
「……えっと……」
何を聞きたいのかわからず、言葉に詰まる。
けれど、返事をしない私を“肯定”と受け取ったのか、KAIさんは続けた。
「『shooting stars』、良かったよ」
気づいた時には、壁際に追い込まれていた。
私のすぐ横。
ドン、と壁に置かれる腕。
その内側に閉じ込められた私は、KAIさんの顔を間近に見る。
「ね、あいつらじゃなくて……G∀MEの曲、作れよ」
……え?
予想もしていなかった言葉に、目を見開いた。
「俺らの方が、あんたの曲を活かせる。
もっと売ってやるよ、あんたの音を」
“活かす”“売る”
私は、そんなことを望んだことなんて一度もない。
私はただ……みんなの歌を、ファンに届けたかっただけなのに。
「あれ?……キミ、有名になりたくないタイプ?」
その瞬間、確信した。
この人には、絶対に私の曲を歌ってほしくない。
「お前、何してんだ!!奏から離れろ!!」
その声と同時に、セナ君が割って入ってくれた。
KAIさんの腕から、ようやく解放される。
「話してただけなんだけどなー。ね、奏ちゃん?」
「うるせーよ。奏に近寄んな!!」
KAIさんが肩をすくめてスタジオへ入っていくのを見届けた瞬間、全身の力が抜けて、その場にある椅子にへたり込んだ。
「奏……大丈夫か?」
「私は……みんなに歌ってほしいのに……!」
セナ君はフッと笑って、私の頭をぽんと撫でた。
「心配すんなよ」
……この人は、いつだって、助けてくれる。
きっと……大丈夫……
「じゃあ、まずはスターライトパレードから」
リハスタの空気がピリリと張り詰めた。
全員の表情が引き締まり、一歩前に出る。
誰も笑っていない。
……本気だ。
この曲を奪われるわけにはいかない。
そう思ってくれているのが、ひしひしと伝わってくる。
イントロが流れた瞬間、空気が変わった。
爆発するようなビート。
『Ignition』……あの夜、私がすべての情熱をぶつけて生み出した曲。
それを、彼らが全身で踊っている。
切れのあるステップ。
タイミングの揃ったターン。
全員が、ひとつの意志を持って動いている。
セナ君の表情は、いつになく鋭い。
椿さんも怜央さんも、全員が“魅せる”ことに集中していた。
踊り終わると、スタジオがしんと静まり返る。
「……いいじゃん。めっちゃカッコいい」
振付師がぽつりと呟くと、スタッフの間にも軽い拍手が広がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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第6話「Ignition」③は【本日昼】に更新予定です!
ぜひまた覗きに来てくださいね!
気づいたら、セナ君が目の前にいた。
「奏ちゃん、大丈夫?あんなの、気にしなくていいよ。あの人、昔から気まぐれだから」
怜央さんが優しい声をかけてくれる。
「大丈夫だ。あの曲は、誰にもやらせねぇよ」
「そ、そーだよ~!上の人たちだって、あんなの絶対通さないから!!」
みんなが次々と声をかけてくれるのに……
さっきまで感じていた喜びや感動は、どこかに消えてしまっていた。
……胸の奥に、ぽっかりと、穴が開いていた。
1週間後……
私は、またレッスンスタジオに呼び出されていた。
あの後、KAIさんは本当に上層部に掛け合い、事務所も「スターライトパレード」と「G∀ME」、どちらがこの楽曲『Ignition』を持つにふさわしいかを判断することになった。
パフォーマンスを見て、会社としての利益になる方に歌わせる。
そんな……信じられない展開だった。
気が重い。
どうして、こんなことが許されてしまうのか。
私には理解できない“大人の事情”があるんだろうか……
早めにスタジオに到着し、入口で立っていると、
「こんにちは」
「……あ、こんにちは……」
そこには、G∀MEのKAIさんがいた。
「ね、キミが最近のスタライの曲作ってるってホント?」
「……えっと……」
何を聞きたいのかわからず、言葉に詰まる。
けれど、返事をしない私を“肯定”と受け取ったのか、KAIさんは続けた。
「『shooting stars』、良かったよ」
気づいた時には、壁際に追い込まれていた。
私のすぐ横。
ドン、と壁に置かれる腕。
その内側に閉じ込められた私は、KAIさんの顔を間近に見る。
「ね、あいつらじゃなくて……G∀MEの曲、作れよ」
……え?
予想もしていなかった言葉に、目を見開いた。
「俺らの方が、あんたの曲を活かせる。
もっと売ってやるよ、あんたの音を」
“活かす”“売る”
私は、そんなことを望んだことなんて一度もない。
私はただ……みんなの歌を、ファンに届けたかっただけなのに。
「あれ?……キミ、有名になりたくないタイプ?」
その瞬間、確信した。
この人には、絶対に私の曲を歌ってほしくない。
「お前、何してんだ!!奏から離れろ!!」
その声と同時に、セナ君が割って入ってくれた。
KAIさんの腕から、ようやく解放される。
「話してただけなんだけどなー。ね、奏ちゃん?」
「うるせーよ。奏に近寄んな!!」
KAIさんが肩をすくめてスタジオへ入っていくのを見届けた瞬間、全身の力が抜けて、その場にある椅子にへたり込んだ。
「奏……大丈夫か?」
「私は……みんなに歌ってほしいのに……!」
セナ君はフッと笑って、私の頭をぽんと撫でた。
「心配すんなよ」
……この人は、いつだって、助けてくれる。
きっと……大丈夫……
「じゃあ、まずはスターライトパレードから」
リハスタの空気がピリリと張り詰めた。
全員の表情が引き締まり、一歩前に出る。
誰も笑っていない。
……本気だ。
この曲を奪われるわけにはいかない。
そう思ってくれているのが、ひしひしと伝わってくる。
イントロが流れた瞬間、空気が変わった。
爆発するようなビート。
『Ignition』……あの夜、私がすべての情熱をぶつけて生み出した曲。
それを、彼らが全身で踊っている。
切れのあるステップ。
タイミングの揃ったターン。
全員が、ひとつの意志を持って動いている。
セナ君の表情は、いつになく鋭い。
椿さんも怜央さんも、全員が“魅せる”ことに集中していた。
踊り終わると、スタジオがしんと静まり返る。
「……いいじゃん。めっちゃカッコいい」
振付師がぽつりと呟くと、スタッフの間にも軽い拍手が広がった。
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