スターライトパレード

木風

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第三巻 Éternité

第7話「夏灯花火」②

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演出担当の男性が、無意識に椅子から身を乗り出していた。

「……これ、映像いらないんじゃない?音だけで泣く……」
「……え、今のストリングス、同時に3ライン走ってる?やば……」
「これ、どうやって振り付ければいいの……?逆に、立ってるだけでも成立する曲……」

マーケティング担当が、震える声で呟く。

「この曲、どんだけバズるか想像できないんだけど……」

プロデューサーが腕を組んだまま、目を細めた。

「すごいな……」

メンバーたちも、すぐには口を開けなかった。
やがて、セナ君がそっと言った。

「……もう、何も足す必要ないじゃん。これが、オレらの音だろ」

その声で、ふっと空気が戻る。

「……これで、行こう。決定だ」

あの時と同じく……セナ君に頭をくしゃっとされた

「おつかれ」
「奏~~~~!!!ありがとう」
「わっ」

後ろから遊里君が勢いよく抱きついてきた。

「もう!ほんとヤバかった!今の、鳥肌立った!ていうか泣いた!」
「ユーリいい加減離れろ」

遊里君がようやく離れてくれたかと思ったら、今度は怜央さんが背中をぽんぽんと叩いてきた。

「奏ちゃん、本当にかっこいいよ」
「そんなことないよ……」
「謙遜かよ~!いやでもマジで、奏の音で踊れるの、嬉しいわ俺」

そう言って真央君がニッと笑い、隣の蓮君が小さく頷きながら呟く。

「……あの曲、ライブのラストに持ってきたら絶対泣く」
「っていうか、さっき泣いてたの自分じゃん」
「泣いてない。翔君の気のせい……ちょっと潤んだだけ」

そのやりとりに、ふっと笑い声がこぼれた。
張り詰めていた空気が、ようやく和らいでいく。

私も……胸の奥で、ようやく一息つけた気がした。


怒涛の作曲作業が終わって、気づけば季節はもう5月。
ちょうど1年前、あの音楽堂でセナ君と出会ったんだった。

今日は久しぶりに、あの場所に来てみた。
変わらず置かれているストリートピアノに、そっと手を伸ばす。

もし……あのとき、ピアノを弾いていなかったら。
セナ君は、私を見つけてくれただろうか。

そんなことを思いながら、あの日と同じように、思いつくまま音を紡ぐ。
……少しだけ、自分の音が変わった気がした。
きっと理由は、ひとつだけ。

「ふぅ……いい感じに頭、冴えてきたかも」


メンバーは、アルバムのリリースとツアーを控えて、慌ただしい日々を過ごしていた。

アルバム発売と同時に始まった『Dear You』を使ったCMでは、あの空港のシーンが再現されていて……
見るたびに、胸がぎゅっと熱くなる。

誰かの旅のお供に、あの曲がなっていたら。
そう思うと、嬉しかった。

そろそろかな……

「……もしもし?」
『奏?……起きてた?』

今、メンバーは地方でライブ中。
いつからか、セナ君は公演後に電話をくれるようになった。

「うん。課題やってたとこ。……おつかれさま」
『……』

話す内容は他愛もないことばかり。
ライブのこと、最近の出来事、私の近況。
ただ、それが嬉しくて、つい1時間くらい喋ってしまう。

「どうしたの?疲れてる?」

数日前のLINEやりとりを思い出す。

奏:真央くん、お誕生日おめでとう!

柊真央:え、奏ちゃん……最高やんか
豊田遊里:よっ!!今日の主役!!!
御影怜央:朝イチで“自撮りキメ顔”送ってきたの忘れてないぞ
天野蓮:あれマジで通知で目覚めた
諏訪セナ:オレ開く前に消したわ
柊真央:ひどない!?今日は褒められる日ちゃうん!?!?
椿翔平:はいはい、褒めて伸ばす方式でいきます~
柊真央:……それ、ほんまに褒めてるん!?!?
井上信:褒めてる褒めてる。みんな真央が大好きだよ!

真央君への誕生日プレゼントは事務所に預けた。
でも、まだ受け取れていないみたい。
早く手元に届くといいな。


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最後まで読んでいただきありがとうございました!

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第7話「夏灯花火」③は【本日昼】に更新予定です!

よろしくお願いします!
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