55 / 77
第三巻 Éternité
第9話「ケーキとプレゼント」②
しおりを挟む
「あー、明日もあるし、部屋戻るか」
「だな、そろそろ解散だな」
セナ君の言葉で椿さんがみんなを促す。
「今日は本当にありがとう。また明日も、頑張ってね」
最後に部屋を出ようとしたセナ君が、ふと振り返る。
「手、出して」
……あ、そういえば。
さっきのプレゼントの中に、セナ君のだけ、なかった。
差し出した手の上に、パステルグリーンの小さな箱がそっと置かれる。
「誕生日おめでと。おやすみ」
そう言って、静かに扉の向こうへ。
「え~~~!Tiffanyじゃ~~~ん!!」
「セナ君、ガチすぎでしょ……!」
扉の向こうから聞こえた声に、私の胸がまたぎゅっとなった……
ベッドに座りながら、もらった緑色の箱をそっと開ける。
中に入っていたのは、かわいいハートモチーフのキーリング。
……かわいい。
手に取ると、キーリングにはもうひとつキーホルダーが付いていて……
よく見ると、それには「KANADE OTOHA」と刻印されたドッグタグのようなチャームが揺れている。
「……ピアスとか、ど?」
「私、ピアスの穴……開けてなくて!」
「ん、ホントだ。……じゃ、ホールも、オレが開けてやんよ」
1年前の今日、セナ君と交わしたそんな会話が、耳の奥に蘇る。
ふいに触れられた耳が熱くなって、そっとその場所を指でなぞった。
このキーリングも、本当にうれしい。
でも……昨年の約束を忘れられていた気がして、ほんの少しだけ胸が痛んだ。
それでも、みんなからもらったプレゼントに囲まれてベッドに体を預けると、気づけばそのまま眠りに落ちていた。
まだお客さんが誰もいない東京ドーム。
でも照明も音響も、本番とまったく同じ。
“ゲネプロ”と呼ばれるこの時間は、本番そのもののような緊張感に包まれていた。
「本番のように。じゃなくて、本番以上に」
円陣の中でそう言った椿さんの声が、今も耳に残っている。
私は客席にひとり座り、その光景を見つめていた。
音と振動が、足元から伝わってくる。
そのひとつひとつが、心に響いて止まない。
怜央さんは、立ち位置を確認しながら目線の送り方まで調整していた。
椿さんは演出のテンポをスタッフさんに伝え、真央君は軽やかなステップを何度も何度も繰り返す。
遊里君は大きく手を振って、ファンの視線を想像するように笑顔をキープ。
信さんの歌声は、まだ全力じゃないのに、不思議と心に沁み込むようだった。
そして、セナ君。
カメラを見つけた瞬間、表情を変えるその速さ。
誰よりも早く“アイドルの顔”になる彼を、やっぱりすごいと思った。
そのセナ君が、ステージの上から私を見つけると、手招きをする。
「……あのさ、今日ってライブ後、何か予定ある?」
「予定?まっすぐ帰るつもりだったけど……」
「……ライブ後、ちょっとだけ打ち上げ顔出したら、すぐ帰るから。家、来いよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後まで読んでいただきありがとうございました!
よろしければ❤️をポチッとしてもらえたら励みになります。
少しでも気になってもらえたら、フォローやお気に入り登録よろしくお願いします。
第9話「ケーキとプレゼント」③は【本日夜】に更新予定です!
ぜひまた覗きに来てくださいね!
「だな、そろそろ解散だな」
セナ君の言葉で椿さんがみんなを促す。
「今日は本当にありがとう。また明日も、頑張ってね」
最後に部屋を出ようとしたセナ君が、ふと振り返る。
「手、出して」
……あ、そういえば。
さっきのプレゼントの中に、セナ君のだけ、なかった。
差し出した手の上に、パステルグリーンの小さな箱がそっと置かれる。
「誕生日おめでと。おやすみ」
そう言って、静かに扉の向こうへ。
「え~~~!Tiffanyじゃ~~~ん!!」
「セナ君、ガチすぎでしょ……!」
扉の向こうから聞こえた声に、私の胸がまたぎゅっとなった……
ベッドに座りながら、もらった緑色の箱をそっと開ける。
中に入っていたのは、かわいいハートモチーフのキーリング。
……かわいい。
手に取ると、キーリングにはもうひとつキーホルダーが付いていて……
よく見ると、それには「KANADE OTOHA」と刻印されたドッグタグのようなチャームが揺れている。
「……ピアスとか、ど?」
「私、ピアスの穴……開けてなくて!」
「ん、ホントだ。……じゃ、ホールも、オレが開けてやんよ」
1年前の今日、セナ君と交わしたそんな会話が、耳の奥に蘇る。
ふいに触れられた耳が熱くなって、そっとその場所を指でなぞった。
このキーリングも、本当にうれしい。
でも……昨年の約束を忘れられていた気がして、ほんの少しだけ胸が痛んだ。
それでも、みんなからもらったプレゼントに囲まれてベッドに体を預けると、気づけばそのまま眠りに落ちていた。
まだお客さんが誰もいない東京ドーム。
でも照明も音響も、本番とまったく同じ。
“ゲネプロ”と呼ばれるこの時間は、本番そのもののような緊張感に包まれていた。
「本番のように。じゃなくて、本番以上に」
円陣の中でそう言った椿さんの声が、今も耳に残っている。
私は客席にひとり座り、その光景を見つめていた。
音と振動が、足元から伝わってくる。
そのひとつひとつが、心に響いて止まない。
怜央さんは、立ち位置を確認しながら目線の送り方まで調整していた。
椿さんは演出のテンポをスタッフさんに伝え、真央君は軽やかなステップを何度も何度も繰り返す。
遊里君は大きく手を振って、ファンの視線を想像するように笑顔をキープ。
信さんの歌声は、まだ全力じゃないのに、不思議と心に沁み込むようだった。
そして、セナ君。
カメラを見つけた瞬間、表情を変えるその速さ。
誰よりも早く“アイドルの顔”になる彼を、やっぱりすごいと思った。
そのセナ君が、ステージの上から私を見つけると、手招きをする。
「……あのさ、今日ってライブ後、何か予定ある?」
「予定?まっすぐ帰るつもりだったけど……」
「……ライブ後、ちょっとだけ打ち上げ顔出したら、すぐ帰るから。家、来いよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後まで読んでいただきありがとうございました!
よろしければ❤️をポチッとしてもらえたら励みになります。
少しでも気になってもらえたら、フォローやお気に入り登録よろしくお願いします。
第9話「ケーキとプレゼント」③は【本日夜】に更新予定です!
ぜひまた覗きに来てくださいね!
3
あなたにおすすめの小説
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
いい加減な夜食
秋川滝美
恋愛
ハウスクリーニングのバイトをして学費を稼ぐ大学生、谷本佳乃。ある日彼女が、とある豪邸の厨房を清掃していたところ、その屋敷の使用人頭が困り顔でやってきた。聞けば、主が急に帰ってきて、夜食を所望しているという。料理人もとっくに帰った深夜の出来事。軽い気持ちで夜食づくりを引き受けた佳乃が出したのは、賞味期限切れの食材で作り上げた、いい加減なリゾットだった。それから1ヶ月後。突然その家の主に呼び出されたかと思うと、佳乃は専属の夜食係として強引に雇用契約を結ばされてしまい……。ひょんなことから始まる、一風変わった恋物語。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる