スターライトパレード

木風

文字の大きさ
23 / 77
第四巻 Only

第8話「愛と願い」

しおりを挟む
なにこれ……
なにこれなにこれなにこれなにこれなにこれ!!!

何より……恥ずかしい!!!!!!!!!!!!

自分の脳内をさらけ出す感じ!!!
たったこれだけのフレーズを書くのに、何度ベッドでのたうち回ったか……!

でも、ふと頭に浮かぶ……
怜央さんと、セナ君の言葉。

「……俺、奏ちゃんのことが好きだから」

「ラブストーリーも何度も演じてきたし、
ラブソングも何度も歌ってきたけど……
俺は、次の曲は“君のことだけ”を想って歌うよ」

「お前のこと、ちゃんと好きなんだよ。
……いつも、我慢してんの。今日も、今も」

「……バスローブもやばかったし、今のその服もやばいし、
素直に“かわいい”って言いたいのに、言ったら全部崩れそうで言えないの、マジで面倒くさい」

……涙が零れそうになる。

……2人は、どんな気持ちであの言葉をくれたんだろう?

どちらかを選んだら……絶対に、どちらかを悲しませる。
こんな素敵な人たちに、まさか自分がそんな想いを向けられるなんて……
想像したこと、なかったのに。

詞って……
きっと“告白”に似ているんだ。

だから、こんなに恥ずかしい。
でも、だからこそ……
ちゃんと、伝えたい。

今の自分の、ありのままの気持ちを。
ピアノに向かって、1小節、1フレーズずつ……
少しずつ、少しずつ、言葉を紡いでいく。

伝えたい“誰か”の胸に、届くように願いながら。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
件名:【歌詞案ご提出の件】「Only」音羽奏様

城田さま

いつもお世話になっております。音羽 奏です。
先日は、ウェディングソング採用のご連絡をいただき、本当にありがとうございました。

まだまだ拙いのですが……この曲に、どうしても自分の想いを込めたくて。
仮ではありますが、歌詞を書いてみました。

詞を書くのは初めてなので、ご迷惑でなければ……という気持ちなのですが、
もし少しでも参考になるようでしたら、ご覧いただけたら嬉しいです。

タイトルは「Only」です。
男性ボーカルを想定して、相手に誓いを立てるような気持ちで書きました。

お手数をおかけいたしますが、ご確認のほど、よろしくお願いいたします。

……
音羽 奏
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

……これがダメで、また前みたいな歌詞が来たらどうしよう。
結果が怖くて。

テスト期間中、メールを開くのが怖くて、ずっと……PCを立ち上げられなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
件名:【ご確認の御礼】歌詞原案「Only」について

音羽 奏 様

いつもお世話になっております。
株式会社RiseTone Management 制作部の城田です。

このたびは、新曲「Only」の歌詞原案をご提出いただき、誠にありがとうございました。

拝読させていただきました。
率直に申し上げて……とても素晴らしかったです。

メロディに寄り添った言葉選び、音数やリズムを意識した配置、
なにより「まっすぐな想い」が伝わってきて、胸を打たれました。

現在、作詞担当とも共有させていただいたうえで、
この原案をベースに最終調整を進めていければと考えております。

ご本人の意図や、表現したいニュアンスなど、
改めてお伺いできる機会を設けられましたら幸いです。

本作は、ドラマ主題歌としても重要な位置づけの楽曲となるため、
リスナーの心に届くよう、引き続き丁寧に形にしてまいりましょう。

また追ってご連絡させていただきます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

……
株式会社RiseTone Management
制作部 A&Rセクション
城田 直也(しろた なおや)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

無事に作詞も完成し、今回はどうしても生演奏にしたくて……
ピアノ+ストリングス+木管という編成で、スタジオミュージシャンの方にお願いすることになった。

今日はその収録日。学校帰りに、スターライトパレードのみんなとスタジオに集められる。

セナ君、怜央さんと会うのは、あの軽井沢以来。

ほんの一瞬だけ、スタジオの空気が張りつめた。

「じゃあ、ピアノいきまーす」

エンジニアの合図とともに、ピアニストが譜面に目を落とす。
深呼吸のあと、静かに鍵盤に触れた。

……けれど。

違う。

思わずヘッドホンをずらして、モニター越しの演奏に耳を澄ませる。
綺麗。でも、綺麗すぎる。

間の取り方も、音の粒も、どこか“予定調和”に感じてしまう。

「もう一度お願いします」

ディレクターの声で、再度テイク。
……やっぱり、違う。

この曲は、ただのラブソングじゃない。
言葉にならなかった想いを、そっと抱きしめるようなメロディ。
その一音一音に、微かにでも“揺らぎ”がなければ、温度が伝わらない……

「……すみません。あの、ピアノ……もう少し、間を……」

思い切ってマイクを取ると、ブースの中のピアニストが、わずかに眉を上げた。
経験豊富な、ベテランのスタジオミュージシャン。

「……了解です」

でも、三度目のテイクも、何かが噛み合わなかった。

「いったん止めましょう」

ディレクターの冷静な判断。
スタジオに、重たい沈黙が流れる。

ミュージシャンの方が、真剣に解釈しようとしてくれているのは、痛いほどわかる。
でも……これじゃ、違う。

「これさ、奏ちゃんのデモの方が良かったな」

椿さんの何気ない一言に、空気がまた変わる。

「奏、これお前が弾けよ」
「でも……私……」

セナ君……そんなこと言っても……セナ君は知ってるじゃない。
私はもう、3年も人前で弾いていない。
この状態で、鍵盤に手を置けるのかすらわからないのに。

「すいません、いったん変わってもらっていっすか」

セナ君がブースの中に声をかける。

「ほら、奏」

……こんな……何人も人がいる前でなんて……
立ち上がれずにいるとセナ君が手を差し出して来る。

「ん」

その手に引かれるようにして、立ち上がる。
ブースへと連れて行かれ……

「お前らもだよ」

セナ君が、メンバーたちに声をかける。

「オレらも一緒に歌うからさ」
「……いいの?」

あまりのプレッシャーに呆然としていると

「音外したらごめんね」
「それフラグやん」
「奏ちゃんの生ピアノ、ちょっと聴いてみたかったんだよね」
「リラックス~リラックス~♪」

全員がブースに入ってきて、私の横に並んだ。

「奏。お前のタイミングでいいから」

音のない空間に、かすかな吐息だけが漂う。
自分の心臓の音が、痛いほど響く。

あぁ、懐かしい。
コンクールの緊張を思い出す。

でも……あの時と違って、今はひとりじゃない。
横を見れば、みんながいる。

大丈夫。

みんなの歌が、いちばんきれいに、格好良くなるように弾けるのは、絶対に私。

「弾きます」

この曲は、ただ“恋に落ちた瞬間”だけを切り取った曲じゃない。
きっと……

10年後も、20年後も、思い出せるような、一瞬の積み重ね。
ひとつひとつ丁寧にすくい上げたような、そんな曲にしたかった。

手を繋いだ帰り道。
夜中に届いた「おやすみ」のLINE。
隣に座って、ただ黙ってテレビを見ていた時間。

その全部が、私にとっての「愛」だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後まで読んでいただきありがとうございました!

よろしければ❤️をポチッとしてもらえたら励みになります。
少しでも気になってもらえたら、フォローやお気に入り登録よろしくお願いします。

次の更新は【明日夜】です!

ぜひまた覗きに来てくださいね!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

いい加減な夜食

秋川滝美
恋愛
ハウスクリーニングのバイトをして学費を稼ぐ大学生、谷本佳乃。ある日彼女が、とある豪邸の厨房を清掃していたところ、その屋敷の使用人頭が困り顔でやってきた。聞けば、主が急に帰ってきて、夜食を所望しているという。料理人もとっくに帰った深夜の出来事。軽い気持ちで夜食づくりを引き受けた佳乃が出したのは、賞味期限切れの食材で作り上げた、いい加減なリゾットだった。それから1ヶ月後。突然その家の主に呼び出されたかと思うと、佳乃は専属の夜食係として強引に雇用契約を結ばされてしまい……。ひょんなことから始まる、一風変わった恋物語。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。 今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。 家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。 だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?

処理中です...