スターライトパレード

木風

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第一巻 shooting stars

4話「初めて見るステージ」

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週末……
セナ君にもらったチケットを手に、私は横浜にいた。

電車の中から、すでに周りはライブTシャツ姿の女の子たちでいっぱい。
みんなライブ前から楽しそうで、きらきらしてる。

目の前に広がる会場の大きさに、思わず圧倒される。
……こんな大きな会場が満員になるんだ。
何人くらい入るんだろう。ちょっと想像もつかない。

でも……
セナ君の性格なら、そんな緊張もきっと楽しんじゃいそうな気がした。



人の流れに乗って、チケット確認の列に並ぶ。
周りの子たちはスマホで席を確認してる。
でも、私にはセナ君がくれたチケットしかない。

……え、これ本当に入れるのかな?
もしかして……からかわれてたりしないよね?入れなかったらどうしよう……
そんな不安を抱えたまま、スタッフにチケットを見せる。
対応してくれた人が無線で誰かと蓮絡を取り始めた。

「……しばらくお待ちください」

そう言われて、列から外される。

どうしよう……ニュースで“チケット転売で逮捕”とか見たことあるけど……
いや、そんなはずない。ないけど……怖い……

ビクビクしていると、スーツ姿の男性が近づいてきた。

「招待チケットの方ですね?」
「は、はい」
「スターライトパレードのマネージャーをしている八神と申します。ご案内しますので、こちらへ」
「マネージャーさん……!私、先日セナ君と知り合った音羽 奏と申します」

招待チケットだったんだ……
言われるがままついていくけど、内心ドキドキは止まらない。
このまま蓮れていかれて、警察いたらどうしよう……なんて、まだ心の準備ができてない。

そんな不安をよそに、大きな紙袋を手渡された。

「こちら、今回のライブのグッズ一式になります」
「えぇ!?グッズ!?」
「セナから“全部渡してほしい”と頼まれてまして。
お席はこちらです。あとでまたお声がけに伺いますので、どうぞライブをお楽しみください」

案内された席は……アリーナ席、それも花道のすぐそば。
いわゆる“関係者席”らしい。



紙袋を抱えて席に座り、そっと中身を確認する。

パンフレット、Tシャツ、うちわ、リボン、ペンライト……
いろんなグッズがぎっしり詰まってる。

わ……これが、ペンライト……!
一度持ってみたかったやつ!

カチカチとボタンを押すと、色がどんどん変わる。
なにこれ、すごい……

なんだか、とんでもない世界に来ちゃったみたい。
パンフレットを開き、パラパラとページをめくる。
ライブへの意気込み、撮り下ろしのスナップ……
写真からでも、彼らの魅力がまっすぐに伝わってくる。
格好いいなって思う反面、どうしても頭に浮かぶ。

「……なんで私?」

セナ君の言葉がよみがえる。

「絶対楽しいから!」

……うん、きっと楽しいんだよね。

だって周りの女の子たち、開演前から涙ぐんでる子だっているくらい。
それくらい、心から楽しみにしてる。

あの大きなステージに、セナ君が立つ。
……私の方が緊張してきた。

自分がステージに立つわけじゃないのに、不思議な高揚感と緊張。
胸がぎゅっと締めつけられて、なんだか泣きたくなるような感覚になった……そのとき。

会場が一気に暗転した。
直後、耳を劈くような歓声が場内を覆い尽くす。

その歓声と同時に、観客が一斉に立ち上がる。

……ドンッ!!

大きな音とともに、ステージに7人のメンバーが飛び出してきた。
さらに歓声が爆発する。

ステージに立つ彼らの姿は、ただただ圧巻で……

……格好いい。

何度か会ってるセナ君が格好いいのは知ってたけど、
他のメンバーもそれぞれが輝いてて、圧倒される。

動画で観たMVとは、まったく違う。
生の歌声、生のダンス、生の笑顔……

ステージから手を振ってくれるたびに、会場が揺れる。

……アイドルって、すごい。

あの日、「アイドルなんか」ってイラついて口走ってしまった自分が恥ずかしい。

セナ君のあの表情……あれって、きっと悲しかったんだよね。
それでも、私の曲を歌いたいって思ってくれたの?

……この広い会場で……?



何曲目かに差し掛かった頃、さっきのマネージャーさん……八神さんが再び私のもとに来て声をかけてきた。

「セナが音羽さんと話したいと言ってまして。少し、来ていただけますか?」

えっ、ライブ中に……?話したいことって、なに?
戸惑っている私に気づいたのか、彼は穏やかに微笑んで話し出す。

「突然で驚かれましたよね。実は、セナから少し聞いてまして」



「見つけたんだよ!!」
「ずーっと前にさ、めちゃくちゃピアノをキラキラ輝かせて弾いてた子がいて!それが、偶然いたの!!!」
「えー?ピアノ?」
「そう!!ユーリ、わっかんねーかなー!?マジで、他の人と全然違うんだよ!
うわ……あいつ作曲とかやんねーかな!?絶対すっげー曲、作ると思うんだけど!!」
「聞いてみればいいじゃん。“俺らの曲作ってほしい”って、普通にさ。セナ、そういうの得意でしょ?」
「ツバキ、ナイス!だよな!声かけてみるわ!!」
「いや、不審者でしょそれ」
「シン、うるさい!」



「……というやり取りがありまして。まさか本当に連れてくるとは、思いませんでしたけどね」
「…………」

歓迎されてない……のかも。
そりゃそうだよね……ただの女子高生だし。

「……あ、あそこにいます。セナ!」

マネージャーさんの声が弾む。

顔を上げたその先に……
ステージ袖に立つ、セナ君の姿が見えた。
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