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第一巻 shooting stars
アンサーストーリー
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「私からも、お願いしたい。
私に……みんなの曲を作らせてください!!」
え……は?
作るって言った? あいつ、マジで言ったよな?
聞き間違いじゃねーよな……!?
ライブのあと。
メンバーやスタッフとの打ち合わせも兼ねた食事の席で、オレはずっと上の空だった。
メンバーとホテルに戻り、部屋に入って靴を脱ぎかけたところでふと思い出して、しゃがみこんで頭を抱える。
何これ……やっべー。
5年前。
あいつがピアノを弾く姿を見た、あの日のことを思い出す。
それからの5年間、コンクールの結果や出場者をちょこちょこ調べてみても、あいつの名前はどこにも出てこなかった。
5月。
近づいてきたライブのための体力づくりで、いつもの公園を走っていたとき、どこからともなく聞こえてきたピアノの音に、5年前の記憶が一気に蘇った。
音楽堂でピアノを弾いている姿を見て、確信した。
絶対に、あの時の女の子だ。
もう二度と、チャンスは逃したくなかった。
次に会えたら、絶対に声をかけるって決めてた。
あの時のお礼と、作曲に興味がないかちゃんと聞こうって。
それから毎日、同じ時間に公園に通うのが日課になった。
だけど、なかなか会えないまま一週間が過ぎた。
「なぁ、あんた。オレらに曲、書いてくんね?」
絶対に、曲を書いてもらいたかった。
もしかしたら、オレの顔を見たら、自分から「書きたい」って言い出すんじゃないかとすら思ってた。
「ご、ごめんなさいっ……知らない人と話すなって言われてるんで……!」
……それが、まさか逃げられるとか。
それが約1か月前……
やっと。やっとだ……!
デビューの時ですら、こんなふうに何かを強く願ったことはなかった気がする。
ふと、玄関の姿見に映った自分が目に入る。
……自分でも初めて見るような表情だった。
思わず顔を覆って、ドアにもたれかかる。
「なんだよ……やっば……誰にも見せらんねー」
その夜は何度も寝返りを打って、枕をぶん投げて。
いつもならライブ後は心地いい疲労感ですぐに眠れるのに、今日はまったく興奮がおさまらなかった。
あれから一週間……
……あいつからは、一切連絡が来ない。
さっきまでゲームをしていたユーリが、ソファからオレの顔を覗き込んできた。
「ねー、セナ君機嫌悪くなーい? 感じわるーい。ねー、怜央君もこわくないー?」
「遊里、セナはね。いま、初めて悩んでるんだよ」
「おい! 悩むの初めてみたいにゆーな!」
「どっちにしても迷惑だ。スマホばっか眺めてないで、さっさと連絡しろ」
「え!? あれ連絡待ちだったの?」
「あーもうっ。ツバキもレンも黙ってろよ!」
……そうだ。とっとと連絡すればいいんだ。
あの時、ライブのあと。ちゃんとLINE交換したじゃねーか。
人が少ない場所を探して、スマホを開く。
あいつのLINEのホーム画面をタップ。
黒猫と白猫のアイコン。
背景は、オレンジに染まった夕焼け。
……いつの写真だよ。
でも、なんかあいつっぽくて。ふっと、笑ってしまった。
「カナデ……」
名前を呟いた瞬間、心臓がドクンと跳ねた気がした。
びっくりして、思わず辺りを見回す。
……こんなに特別な響きだったっけ?
どこにでもある、よくある名前のはずなのに。
なんならドラマやった時のヒロイン役に同じ名前の子、いた気がする。
それなのに。あいつの名前を口にしただけで、なんか……
「ふーっ……」
きっと、これからライブだからだ。
通話ボタンが押せないのも。
手が、なんか震えてる気がするのも。
さっきから深呼吸ばっかしてるのも。
……全部、この後のライブのせいだ。
たぶん。いや、きっと。……ぜってーそう。うん。
第一声、どうすっかな。
声、震えたりしねーよな……
……そうだ。ライブに誘おう。
顔が見たい。もう一度、オレたちのライブを見てほしい。
あいつの曲ができる前と後、オレたちがどんなふうに変わっていくのか……
ちゃんと見ていてほしいから。
自分でも気づかないフリしてる気持ちに、気づかないように。
見透かされないように。
普段通りの声で。精一杯、普通のオレで。
通話ボタンを押して、電話をかける。
「すすんでるー?」
私に……みんなの曲を作らせてください!!」
え……は?
作るって言った? あいつ、マジで言ったよな?
聞き間違いじゃねーよな……!?
ライブのあと。
メンバーやスタッフとの打ち合わせも兼ねた食事の席で、オレはずっと上の空だった。
メンバーとホテルに戻り、部屋に入って靴を脱ぎかけたところでふと思い出して、しゃがみこんで頭を抱える。
何これ……やっべー。
5年前。
あいつがピアノを弾く姿を見た、あの日のことを思い出す。
それからの5年間、コンクールの結果や出場者をちょこちょこ調べてみても、あいつの名前はどこにも出てこなかった。
5月。
近づいてきたライブのための体力づくりで、いつもの公園を走っていたとき、どこからともなく聞こえてきたピアノの音に、5年前の記憶が一気に蘇った。
音楽堂でピアノを弾いている姿を見て、確信した。
絶対に、あの時の女の子だ。
もう二度と、チャンスは逃したくなかった。
次に会えたら、絶対に声をかけるって決めてた。
あの時のお礼と、作曲に興味がないかちゃんと聞こうって。
それから毎日、同じ時間に公園に通うのが日課になった。
だけど、なかなか会えないまま一週間が過ぎた。
「なぁ、あんた。オレらに曲、書いてくんね?」
絶対に、曲を書いてもらいたかった。
もしかしたら、オレの顔を見たら、自分から「書きたい」って言い出すんじゃないかとすら思ってた。
「ご、ごめんなさいっ……知らない人と話すなって言われてるんで……!」
……それが、まさか逃げられるとか。
それが約1か月前……
やっと。やっとだ……!
デビューの時ですら、こんなふうに何かを強く願ったことはなかった気がする。
ふと、玄関の姿見に映った自分が目に入る。
……自分でも初めて見るような表情だった。
思わず顔を覆って、ドアにもたれかかる。
「なんだよ……やっば……誰にも見せらんねー」
その夜は何度も寝返りを打って、枕をぶん投げて。
いつもならライブ後は心地いい疲労感ですぐに眠れるのに、今日はまったく興奮がおさまらなかった。
あれから一週間……
……あいつからは、一切連絡が来ない。
さっきまでゲームをしていたユーリが、ソファからオレの顔を覗き込んできた。
「ねー、セナ君機嫌悪くなーい? 感じわるーい。ねー、怜央君もこわくないー?」
「遊里、セナはね。いま、初めて悩んでるんだよ」
「おい! 悩むの初めてみたいにゆーな!」
「どっちにしても迷惑だ。スマホばっか眺めてないで、さっさと連絡しろ」
「え!? あれ連絡待ちだったの?」
「あーもうっ。ツバキもレンも黙ってろよ!」
……そうだ。とっとと連絡すればいいんだ。
あの時、ライブのあと。ちゃんとLINE交換したじゃねーか。
人が少ない場所を探して、スマホを開く。
あいつのLINEのホーム画面をタップ。
黒猫と白猫のアイコン。
背景は、オレンジに染まった夕焼け。
……いつの写真だよ。
でも、なんかあいつっぽくて。ふっと、笑ってしまった。
「カナデ……」
名前を呟いた瞬間、心臓がドクンと跳ねた気がした。
びっくりして、思わず辺りを見回す。
……こんなに特別な響きだったっけ?
どこにでもある、よくある名前のはずなのに。
なんならドラマやった時のヒロイン役に同じ名前の子、いた気がする。
それなのに。あいつの名前を口にしただけで、なんか……
「ふーっ……」
きっと、これからライブだからだ。
通話ボタンが押せないのも。
手が、なんか震えてる気がするのも。
さっきから深呼吸ばっかしてるのも。
……全部、この後のライブのせいだ。
たぶん。いや、きっと。……ぜってーそう。うん。
第一声、どうすっかな。
声、震えたりしねーよな……
……そうだ。ライブに誘おう。
顔が見たい。もう一度、オレたちのライブを見てほしい。
あいつの曲ができる前と後、オレたちがどんなふうに変わっていくのか……
ちゃんと見ていてほしいから。
自分でも気づかないフリしてる気持ちに、気づかないように。
見透かされないように。
普段通りの声で。精一杯、普通のオレで。
通話ボタンを押して、電話をかける。
「すすんでるー?」
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