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知りたい猫はその扉を開ける②
しおりを挟む想像の中のルーラントは、ごく普通の下着を見ても綺麗だよと褒めてくれるし、プレゼントの包装を開けるように緊張しながら脱がしてくれる。
布面積が少ないものや、紐でほどくタイプの下着で情欲を強く揺さぶらなくてもその時が来れば、優しくヴァージンをもらってくれるはずだ。
けれど、相手主導では決行の日は遠そうだった。
可愛いデザインやはしたない仕組みのものを身につけていれば、いつどうなっても構わないという胆力がみなぎる。
ぐだぐだと特定の生徒について悩むより、誰からも祝福される相手と結ばれた方が今後の人生が華やぐ。
教師は決して楽な仕事ではないが、頼りになる上司や気の合う同僚とは離れがたいし、慕ってくれる教え子もいる。
今はこの場に身を置いていたいし、ずっとこの仕事を続けてもいいという思いも芽生えつつある。
空の酒杯に自分で葡萄酒を注ぎながら、ヴィユはルーラントを落とす道筋を考えた。
人に語れる恋愛経験もなければ、思い切って誰かに身体を預けたこともないヴィユと違って、ここにいる2人はそういうことに長けている。
もう少し飲めば恥ずかしさもどこかへ追いやれて、実践的な話もできそうだ。
面白いくらいのペースで卓上に空瓶を増やしていく二人より酒量は少ないのに、頬杖なしに顔が上げていられないほど、酔いが回ってくる。
「あらあら、こんなにべろべろになっちゃったらお迎えが必要ね。VVくんのだぁいすきなルーラントを呼んであげましょうか?」
綺麗なお姉さんに撫で回されたい。そんな望みを叶えるような優しい手つきで、ナディルがそうっとヴィユの耳に触れた。
知らない人間がそんなことをしたら、秒で飛び起き反撃するが、彼女には敵わない。
「……めいわく、かけたくない……んで。あの人の予定とかしらない、から」
意識をはっきりさせるために、ヴィユは目を何度もこすった。
「おねむになっても健気なのねぇ。こんなに可愛い君を見たら誰だって狼になっちゃうわ。襲われたくないなら、しっかりしてなさい」
まぶたの重さと戦いながら、ヴィユはナディルに今の気持ちを打ち明ける。
「俺は、ルーラントさんにぜんぶもらってほしい」
ぼやけた視界の中、鈴の音みたいな笑い声が聞こえた。
「あらあら、熱烈ね。君は何もわかってないくせに、変なところだけは鋭いんだから」
「……え?」
「フフ、なんでもない。それより、どういう感じでしたいのか、お姉さんとお話できそう?」
くたくたと煮つめられた豆のように、感覚が崩れていく。
誘導されて、ヴィユは自分があけすけな話をしていると思わず、本音を引き出される。
「部屋の明かりは消してほしい。見えてるとたぶん、おれはダメだから……」
「恥ずかしい?」
「……あのひとは、似てる、から」
ろれつが回らないヴィユの言葉を彼女は静かに聞いてくれる。
「そうね、君の好きな人に彼はよく似ているのよね」
「おれは、だれのことも……」
「でも、ひとりだけ特別に思ってるんでしょう?」
いじめてやるなよと間に入ってきたのはラザリオだ。触れるものがふわふわのグネグネになって、自分がどこを向いてるのかわからなくなる。
ふらつく身体を受け止めてくれたのが、二人のうちのどちらかなんて、もう考えられなかった。
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