頼ってください!と教え子たちがうるさいので、ソロ討伐を引退した俺をもらってくれる奇特な誰かがいるそうです

波乃宮

文字の大きさ
6 / 30

知りたい猫はその扉を開ける②

しおりを挟む

 想像の中のルーラントは、ごく普通の下着を見ても綺麗だよと褒めてくれるし、プレゼントの包装を開けるように緊張しながら脱がしてくれる。
 布面積が少ないものや、紐でほどくタイプの下着で情欲を強く揺さぶらなくてもその時が来れば、優しくヴァージンをもらってくれるはずだ。

 けれど、相手主導では決行の日は遠そうだった。
 可愛いデザインやはしたない仕組みのものを身につけていれば、いつどうなっても構わないという胆力がみなぎる。
 ぐだぐだと特定の生徒について悩むより、誰からも祝福される相手と結ばれた方が今後の人生が華やぐ。
 
 教師は決して楽な仕事ではないが、頼りになる上司や気の合う同僚とは離れがたいし、慕ってくれる教え子もいる。
 今はこの場に身を置いていたいし、ずっとこの仕事を続けてもいいという思いも芽生えつつある。
 空の酒杯に自分で葡萄酒を注ぎながら、ヴィユはルーラントを落とす道筋を考えた。
 
 人に語れる恋愛経験もなければ、思い切って誰かに身体を預けたこともないヴィユと違って、ここにいる2人はそういうことに長けている。
 もう少し飲めば恥ずかしさもどこかへ追いやれて、実践的な話もできそうだ。
 面白いくらいのペースで卓上に空瓶を増やしていく二人より酒量は少ないのに、頬杖なしに顔が上げていられないほど、酔いが回ってくる。

「あらあら、こんなにべろべろになっちゃったらお迎えが必要ね。VVヴィヴィくんのだぁいすきなルーラントを呼んであげましょうか?」

 綺麗なお姉さんに撫で回されたい。そんな望みを叶えるような優しい手つきで、ナディルがそうっとヴィユの耳に触れた。
 知らない人間がそんなことをしたら、秒で飛び起き反撃するが、彼女には敵わない。
 
「……めいわく、かけたくない……んで。あの人の予定とかしらない、から」

 意識をはっきりさせるために、ヴィユは目を何度もこすった。

「おねむになっても健気なのねぇ。こんなに可愛い君を見たら誰だって狼になっちゃうわ。襲われたくないなら、しっかりしてなさい」

 まぶたの重さと戦いながら、ヴィユはナディルに今の気持ちを打ち明ける。
 
「俺は、ルーラントさんにぜんぶもらってほしい」

 ぼやけた視界の中、鈴の音みたいな笑い声が聞こえた。
 
「あらあら、熱烈ね。君は何もわかってないくせに、変なところだけは鋭いんだから」
「……え?」
「フフ、なんでもない。それより、どういう感じでしたいのか、お姉さんとお話できそう?」

 くたくたと煮つめられた豆のように、感覚が崩れていく。
 誘導されて、ヴィユは自分があけすけな話をしていると思わず、本音を引き出される。

「部屋の明かりは消してほしい。見えてるとたぶん、おれはダメだから……」
「恥ずかしい?」
「……あのひとは、似てる、から」
 ろれつが回らないヴィユの言葉を彼女は静かに聞いてくれる。

「そうね、君の好きな人に彼はよく似ているのよね」
「おれは、だれのことも……」
「でも、ひとりだけ特別に思ってるんでしょう?」

 いじめてやるなよと間に入ってきたのはラザリオだ。触れるものがふわふわのグネグネになって、自分がどこを向いてるのかわからなくなる。
 ふらつく身体を受け止めてくれたのが、二人のうちのどちらかなんて、もう考えられなかった。
  
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。 「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」 ――新王から事実上の追放を受けたガイ。 副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。 ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。 その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。 兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。 エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに―― 筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。 ※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...