頼ってください!と教え子たちがうるさいので、ソロ討伐を引退した俺をもらってくれる奇特な誰かがいるそうです

波乃宮

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閃風祭の恋灯③

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「そういえば、この時期は閃風祭の準備が始まっているのでは? 今年は私も何とか時間を作って……」
「来なくていいです! どちらの姿でも、お祖父様が学園に来られたらパニックになるのは目に見えています!」

 普段は穏やかなルウェリンが祖父に対して声を張る。

「ぴちぴちの学生がたくさんいるのに、私のような老爺に目を向けるものでしょうか?」

 憂いを帯びた表情は、言い回しの古さも気品へと押し上げる。
 意見を求められたラザリオはノヴァクの美しさを詩にして捧げ始める。
 それなりの恋愛経験がある彼でこうなら、その手の免疫がない生徒たちには毒となる。
 年相応の姿で訪れても、ちょっとどころではない騒ぎが起きるだろう。

「私の存在が恋の脅威となるのが心配なのですね。可愛いルウェリンからライバルとして疎まれたくないですし、困りましたね」

 ふざけた言い回しも良い声と良い顔がそろっているせいで、理知的にしか聞こえない。
 自分がどう見られているかわかったうえで、ノーブルもアンニュイも使い分けられるなら、これからも連勝が確定だった。
 奔放なようで無垢なノヴァクを置いて戻らなかった男は罪深い。
 祖父の演技に惑わされないルウェリンは、勇ましく宣言した。
  
「ヴィンバウム先生には、年下の方が合っていると思います」
「ルーラントともイチャイチャしてると聞きましたが?」
「先生を尻軽みたいに言うのはやめてください!」

 祖父と孫の元気なやりとりを見守っているラザリオは完全に戦力外だった。

「なるほど、報告通り、まだ最後までは致していないようですね」

 どこからどこまでが推測につなぐための言葉なのか、気取らせない彼は、孫に対して圧倒的に優位である。

「お祖父様、人の恋路を邪魔する者には報いがありますよ」

 せめてもの意趣返しにそんなことを言うルウェリンは子供っぽくて可愛らしい。

「あなたたちがうらやましかっただけです。私の運命の人は、どこに行ったのかわかりませんし。そもそも運命じゃなかったのかもしれないですね」

 拗ねるような口調やムスっとした顔こそがこの人本来のものなのかもしれない。
 彼の元へは戻らなかった人がどうしてそんな選択をしたのか、納得できる理由があってくれと祈りたくなる。

「……あなたはやはり、優しい人ですね」

 他人の心に入り込んで、何もかもを暴いていくノヴァクをもう怖いとは感じなかった。

「あなたが私の家族のひとりなってくれるのが楽しみです」

 聞いていたラザリオがさめざめと泣き始める。
 感情の抑制がおかしくなったのかと思ったけれど、ヴィユの良さをわかってくれたノヴァクに対するわかりみの涙らしい。
 親友は間違いなく善性の持ち主だ。
 そして、孫のために別邸を用意したり、学園での日々を気にかけるノヴァクも愛されるべき人なのだ。


  
 生徒主体で動き出した今年の特別企画のことはまだ外部に告知していない。
 閃風祭の報道は毎年、あらゆる媒体で世界中に届けられてきた。
 どういう理由があって、彼の元へ帰ってこられないのか誰にもわからない。
 事故で記憶を失ったのか、何かの誤解で彼から離れたのか。
 知らないままで子供を育てて一人待つのは不安だったはずだ。
 彼の人生の終盤は、愛情と幸福で満たされるべきである。

 二段構えのサプライズならどうだろうか。
 閃風祭の今年の特別企画は『灯をつないで』──ミッションクリア報酬のコインを集めると魔法のランタン『星灯』を受け取ることができる。
 これを空中に放つと夜空をあたたかく照らす一夜限りの星となってくれる。
 
 ミッションの難易度は様々で、浮遊型の『星灯ほしあかり』ではなく、転送型の『恋灯こいあかり』も選択できる。
 意中の相手へのロマンチックな恋文となる『恋灯』に必要な枚数を集めるなら、宝探しのように隠されたコインだけでは到底足りない。
 飛翔レースの入賞やクイズ大会での高得点で大量にコインを獲得し、想い人へ『恋灯』を渡せる者は限られてくるだろう。

 ルウェリンそっくりの澄まし顔が喜びでめちゃくちゃに崩れるのを見てみたかった。
 それは、きっと誰もが望むハッピーエンドだ。

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