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恋灯を手に入れろ!
しおりを挟む「楽しいことを思いついたのなら、僕も全面的に協力しますよ」
長年寄り添ってきたパートナーじみたことを言うルウェリンに苦笑を返す。
まだ何も伝えていないのに察しの良い彼は、作戦の目的を正確に見透かしている。
予定を変更して邸に戻ってきたノヴァクは外せない商談があるらしく、食事を終えると出かけてしまった。
当主が不在の今は、作戦を煮詰める絶好の機会である。
ヴィユは頭にちらついていた懸案事項を口にする。
「ひとつ聞いておきたいんだが、ノヴァクさんの恋人が存命だという確証は?」
何をしようとしているか、見当はついていたのだろう。
ルウェリンは祖父思いの孫らしい顔つきになり、答えてくれた。
「どこを探しても目撃情報は集まらず、亡くなったという確証も取れていません。言い方は悪いですが、遺体であればもっと見つけやすかったでしょうね。おそらく名前や見た目を変えて、こちらの探索を逃れながら暮らしてると推測しています」
「昔のことを今更、蒸し返すのはやめておけと言わないのか?」
家族の意向を確かめたヴィユに、ルウェリンは冷静な意見を述べる。
「今頃になって現れた人がどうしようもないクズなら、新たな恋を見つける力になりますよ。ぐだぐだと思い詰めずに、ずっと好きだし会いたいって自分から発信するべきだったんです」
「……俺が何をしようとしてるか、もうわかってるんだな」
もちろんですと答える代わりに、ルウェリンが得意げな笑みを作る。
ノヴァクに見惚れていたラザリオの気持ちを少しだけわかる気がした。
「あなたって年上趣味なのか、年下に弱いのか、ハッキリしないですよね」
両方はあげられないというノヴァクの率直な言葉を思い出す。
ルウェリンが生徒でなければ、年の差くらいら飛び越えて行けただろうか。
「僕だけじゃなく、叔父にも声をかけるつもりですか?」
「俺から招待する気はないよ。勤務中だ。そこらへんは向こうだってわかってるだろ」
「コインを集めるなら、協力者が一人でも多い方がいいんじゃないですか? 先生方の単独参加は禁止ですよね。チーム戦かコンビで生徒と一緒なら、イベント出場可能ですけど、それは相手も同じ条件なので、簡単には勝てませんよ」
コイン獲得のためのミニゲームやイベントに、戦闘スキルが直接活かされるものはない。
けれど、校舎をコースとしたリレーや特殊ルール競技でなら、ヴィユの力は存分に発揮できるだろう。
教師や仲間と競うことで生徒たちは成長し、経験値を積んでいく。
学園長が掲げる教育方針を遵守しつつ、ノヴァクのために『恋灯』を掴み取るのはそう難しいことではない。
「俺たちでコインを独占するようなことは避けたい。宝探しで見つけるコインと運任せのゲーム報酬は潔くあきらめよう。お前は専科での役割があるんだろ? 俺とラザリオも自由に使える時間には限りがあるからすり合わせしなきゃな」
「レースに狙いを定めるのは効率がいいと思いますけど、勝てる保証はあるんですか?」
声をかければナディルや後輩たちも力を貸してくれるはずだ。
生徒の家族のプライベートな問題を軽々しく吹聴はしないが、教師間の良識的な情報共有くらいは許してほしい。
ヴィユとラザリオが抜ける時間を彼らにフォローしてもらえるなら、専科での役割分担があるルウェリンと行動を共にしやすくなる。
「そんなものはないが、俺たちは勝ちに行かなきゃな」
「無策なんじゃないですか!」
そこまでお見通しとはいかなかったのか、ルウェリンがはぁとゆっくり息を吐く。
「あのさあ、おふたりさん。さっきから俺の存在、忘れてません?」
手を挙げて存在を主張した後、ラザリオはベラベラと喋り始める。
「話の内容は聞いてたし、まあ大体のことはわかったけど、俺は慧眼でもなければ、以心伝心な関係でもないから、あらためて情報共有してくれない? それとヴィユ!
生徒ひとりを特別扱いすんのは基本的にはアウトだ! まあ、ルウェリンは専科の学生で、ノヴァクさんはその家族の家族ってこで……、オッケー他人だな!」
ここまで息切れひとつしない親友に、ヴィユは気になっていたことを訊ねた。
「お前はノヴァクさんに『恋灯』を渡すことに反対しないのか?」
「ここまで大事にしてきた思いなら、ちゃんと届けなきゃな。で、スッキリしたら次の恋だってできるわけだし!」
清々しい返答に、ヴィユは苦笑した。
彼のこういう真っ直ぐなところは、学生時代から変わっていない。
「あ! 違うからな! 俺はルウェリンの家族の幸せを一番に願ってるぞ!」
「わかってます。多分、母もそうした方がいいって思ってるはずです」
外からは想像できない悲しみもあったんだろう。そのうえで、ルウェリンがこの計画に乗ってくれるなら、全力でやるしかない。
「ヨッシャ、獲ろうぜ!」
腕を振り上げたラザリオに合わせて、ヴィユとルウェリンも力強く団結を示した。
「おう!」
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