頼ってください!と教え子たちがうるさいので、ソロ討伐を引退した俺をもらってくれる奇特な誰かがいるそうです

波乃宮

文字の大きさ
13 / 30

恋灯を手に入れろ!

しおりを挟む

「楽しいことを思いついたのなら、僕も全面的に協力しますよ」

 長年寄り添ってきたパートナーじみたことを言うルウェリンに苦笑を返す。
 まだ何も伝えていないのに察しの良い彼は、作戦の目的を正確に見透かしている。
 予定を変更して邸に戻ってきたノヴァクは外せない商談があるらしく、食事を終えると出かけてしまった。
 当主が不在の今は、作戦を煮詰める絶好の機会である。
 ヴィユは頭にちらついていた懸案事項を口にする。

「ひとつ聞いておきたいんだが、ノヴァクさんの恋人が存命だという確証は?」

 何をしようとしているか、見当はついていたのだろう。
 ルウェリンは祖父思いの孫らしい顔つきになり、答えてくれた。

「どこを探しても目撃情報は集まらず、亡くなったという確証も取れていません。言い方は悪いですが、遺体であればもっと見つけやすかったでしょうね。おそらく名前や見た目を変えて、こちらの探索を逃れながら暮らしてると推測しています」
「昔のことを今更、蒸し返すのはやめておけと言わないのか?」

 家族の意向を確かめたヴィユに、ルウェリンは冷静な意見を述べる。

「今頃になって現れた人がどうしようもないクズなら、新たな恋を見つける力になりますよ。ぐだぐだと思い詰めずに、ずっと好きだし会いたいって自分から発信するべきだったんです」
「……俺が何をしようとしてるか、もうわかってるんだな」

 もちろんですと答える代わりに、ルウェリンが得意げな笑みを作る。
 ノヴァクに見惚れていたラザリオの気持ちを少しだけわかる気がした。
 
「あなたって年上趣味なのか、年下に弱いのか、ハッキリしないですよね」

 両方はあげられないというノヴァクの率直な言葉を思い出す。
 ルウェリンが生徒でなければ、年の差くらいら飛び越えて行けただろうか。

「僕だけじゃなく、叔父にも声をかけるつもりですか?」
「俺から招待する気はないよ。勤務中だ。そこらへんは向こうだってわかってるだろ」
「コインを集めるなら、協力者が一人でも多い方がいいんじゃないですか? 先生方の単独参加は禁止ですよね。チーム戦かコンビで生徒と一緒なら、イベント出場可能ですけど、それは相手も同じ条件なので、簡単には勝てませんよ」

 コイン獲得のためのミニゲームやイベントに、戦闘スキルが直接活かされるものはない。
 けれど、校舎をコースとしたリレーや特殊ルール競技でなら、ヴィユの力は存分に発揮できるだろう。
 教師や仲間と競うことで生徒たちは成長し、経験値を積んでいく。
 学園長が掲げる教育方針を遵守しつつ、ノヴァクのために『恋灯』を掴み取るのはそう難しいことではない。 
 
「俺たちでコインを独占するようなことは避けたい。宝探しで見つけるコインと運任せのゲーム報酬は潔くあきらめよう。お前は専科での役割があるんだろ? 俺とラザリオも自由に使える時間には限りがあるからすり合わせしなきゃな」
「レースに狙いを定めるのは効率がいいと思いますけど、勝てる保証はあるんですか?」

 声をかければナディルや後輩たちも力を貸してくれるはずだ。
 生徒の家族のプライベートな問題を軽々しく吹聴はしないが、教師間の良識的な情報共有くらいは許してほしい。
 ヴィユとラザリオが抜ける時間を彼らにフォローしてもらえるなら、専科での役割分担があるルウェリンと行動を共にしやすくなる。

「そんなものはないが、俺たちは勝ちに行かなきゃな」
「無策なんじゃないですか!」

 そこまでお見通しとはいかなかったのか、ルウェリンがはぁとゆっくり息を吐く。
 
「あのさあ、おふたりさん。さっきから俺の存在、忘れてません?」

 手を挙げて存在を主張した後、ラザリオはベラベラと喋り始める。
 
「話の内容は聞いてたし、まあ大体のことはわかったけど、俺は慧眼でもなければ、以心伝心な関係でもないから、あらためて情報共有してくれない? それとヴィユ!
 生徒ひとりを特別扱いすんのは基本的にはアウトだ! まあ、ルウェリンは専科の学生で、ノヴァクさんはその家族の家族ってこで……、オッケー他人だな!」

 ここまで息切れひとつしない親友に、ヴィユは気になっていたことを訊ねた。

「お前はノヴァクさんに『恋灯』を渡すことに反対しないのか?」
「ここまで大事にしてきた思いなら、ちゃんと届けなきゃな。で、スッキリしたら次の恋だってできるわけだし!」

 清々しい返答に、ヴィユは苦笑した。
 彼のこういう真っ直ぐなところは、学生時代から変わっていない。

「あ! 違うからな! 俺はルウェリンの家族の幸せを一番に願ってるぞ!」
「わかってます。多分、母もそうした方がいいって思ってるはずです」

 外からは想像できない悲しみもあったんだろう。そのうえで、ルウェリンがこの計画に乗ってくれるなら、全力でやるしかない。

「ヨッシャ、獲ろうぜ!」

 腕を振り上げたラザリオに合わせて、ヴィユとルウェリンも力強く団結を示した。

「おう!」

 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。 「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」 ――新王から事実上の追放を受けたガイ。 副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。 ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。 その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。 兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。 エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに―― 筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。 ※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...