14 / 30
恋灯を手に入れろ!②
しおりを挟む「信じられねぇ……。あの問題で普通、はずさねえって」
くちびるをとがらせて文句を言うラザリオの横でルウェリンが哀れむような顔をした。
ラザリオの担当クラスは、閃風祭でパティスリーを運営する。
生徒たちが用意した清潔感のあるコスチュームは、手足が長くスタイルのいい親友に似合っていた。
白いシャツにエプロン、キャスケット。 モノトーンでシンプルにまとめた制服姿は大好評で他クラスの生徒たちも一目見ようと探し回っていた。
ルウェリンは制服にフリルや花の装飾を追加する閃風祭ならではの装いに変えられたことに不満げだった。
こういうのはやりたい人だけやったらいいと文句を並べていたけれど、フリルも花も彼を飾るにはぴったりである。
三人一組でのクイズバトル決勝戦。
解答権を得るためのボタン早押しダッシュに競り勝ってくれたのはラザリオだ。
教室からグランドまで魔法なしのガチ疾走。勝者としてコメントを求められて『三十代にはきついです』と観衆を笑わせた親友のパフォーマンスは完璧だった。
解答者がルウェリンとラザリオ。
問題ごとに指定される場所に立てられたフラッグを誰よりも先につかむのがヴィユ。
それぞれの適正に合わせて、役割分担をしていたのに、魔法無しでも最短ルートを進み、他の参加者に大差で勝ったヴィユを見てシャッフルルールが追加されてしまった。
解答者とフラッグレース参加者は、毎回ポジションを変更しなければならない。
あと付けのルールのせいで、クイズの予習をまったくしていなかったヴィユは一度も正解を答えられなかった。
『では問題です! 学園長が2番目になるのは、何の順番でしょうか?』
教職員をよく知らないゲストには難しいかもしれない。けれど職員室に出入りする現役の教師なら、誰もが答えられるサービス問題のはずだった。
「身長順じゃなさそうだったから、何となく足の大きさとかかもって思うだろ」
「はあ? 思わねぇよ。俺も学園長の靴のサイズは知らねぇけど、大きい方からも小さい方からも2番目ってことは絶対にないだろ!」
現在得点数では2位に着けているものの、次がラストのクイズになるので、ここからの巻き返しは無理だろう。
5位までは入賞扱いなので、コイン数はゼロではない。
順位によって褒賞の差が大きく変わるため、ヴィユたちより下位のグループも次の問題には全力で挑んでくる。
「次は僕が解答します。今までの傾向からいくと次は学園の施設に関する出題になりそうです。ヴィンバウム先生は、先ほどの失敗を取り戻すためにも必ずフラッグを奪い取ってください」
淡々とした物言いだが、解答のたび足を引っ張ってしまったヴィユをまだ信じてくれている。
生徒の期待に応えなければ、教師としてダメダメである。
「ここは任せてくれ」
「頼むぞ、ヴィユ! 泣いても笑ってもここがラストだ!」
力づけるようにラザリオがぽんと肩に手を乗せた。
真似してくれても構わないのに、軽々しく触れてもいいのか、人の目が気になるルウェリンは、年相応の純朴さを見せてくれる。
スタートを告げる笛が鳴り、参加者は一斉に駆け出す。
魔法さえ使わなければ、どんなルートを使うのも自由だ。
フラッグがはためく目的地はグランド中央。ヴィユは階段を使う正規ルートではなく、窓から渡り廊下の屋根に飛び降り、グランドへ最初に降り立った。
柔軟な身体能力はハイミアの特性だが、ヴィユの場合はそれに加えて実戦仕様で鍛えている。
追いかけてくる若者たちを振り切ってフラッグをつかんだ時、解答権を得たルウェリンが問題に答えた。
それが正しいものであることを見ていた誰もが知っていた。
10
あなたにおすすめの小説
異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました
水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。
世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。
「見つけた、俺の運命」
敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。
冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。
食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。
その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。
敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。
世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない
天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。
「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」
――新王から事実上の追放を受けたガイ。
副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。
ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。
その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。
兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。
エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに――
筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。
※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる