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恋する猫はRTAの夢を見るか⑥
しおりを挟むくたりと芯を失った自分のものに、ヴィユは触ってもいなかった。
掛布には厚みがあるし、向こうから透けて見えるわけでもない。
ルウェリンは担当クラスの生徒ではないが、ヴィユは学園の教師なのだから、関係性が目の前に立ちふさがっている。
言われた通りに再開して行為に集中できるほど、恋情に思考を委ねてはいない。
うるさい気が散ると制して、利き手をへそのあたりまで持ってくる。
それ以上はヴィユの理性が許してはくれなかった。
それっぽく見せるための小細工も恥ずかしくて、背中側をルウェリンに向ける。
「……僕は、見られても平気ですよ」
掛布という目隠しもないくせに、そう離れていないベッドの端で、悩ましげな声を漏らすルウェリンに感覚が引きずられていく。
あの綺麗な指が昂りを包み、やわらかい手のひらが濡れた筒の代わりをする。
生々しい連想で腰から下をじわり重くする自分をヴィユは恥じた。
「……ん」
何が行われているか示す物音と息遣いが耳をやかましくする。
見えないからこそ、想像がふくらんでヴィユの前は触れないまま、質量を変えていた。
「ぁ……んッ」
解放を促すように手の動きが早くなる。一連の行為が自分の内側で再生されるのだと思うと腹の奥がぎゅうと引きつって切なくなった。
教師と生徒の間柄で淫行にふけるなんて、あってはならない。
彼を大事に思うなら、毅然と拒否してふしだらな行為から遠ざけるべきだ。
情欲を持て余す若者を諭すべき大人が惑わされてはいけないのに、ヴィユの手は受け入れる場所へと指を進める。
挿入のために慣らしたわけでもない後ろは、きつく閉じたままだ。
慎ましく過ごしてきたのだとルウェリンが知るのはいつだろう。
潤滑剤をまとわない指を結ばれた場所に押し付けて、ヴィユはその時を夢見る。
出会えるまでにかかった時間を思えば、その日までの待機なんてほんの一瞬。
ここで、振り向いてルウェリンと交わるより、きっと二人とも満たされる。そう思うことで掛布に覆われた醜い欲が霧散していった。
ヴィー先生でも、ヴィンバウム先生でもない呼び方がルウェリンの口からこぼれ落ちた。
彼の相手役を務めるもう一人のヴィユを愛おしむ声音に嫉妬を覚えた。
独り占めにできる権利を分け与えたくはない。
掛布でのガードを甘くしてから、枕の方へ身体を向けるとルウェリンは衣服を乱してもいなかった。
手も汚れていない彼を見て、ヴィユはしてやられたことを知る。
「いい演技、出来てたじゃないか」
指導教官のような嫌味をぶつけるとルウェリンはかすかに笑ってみせた。
「貴方だって、してる風に見せかけてたんですから同じでしょう?」
声や物音に引きずられて、あんなところにまで触れていたと言えるはずがない。
耳や目元まで熱が集まってきて、ヴィユは耐えきれず掛布をかぶり直す。
「え?」
その反応ですべてを悟ってくれたルウェリンが掛布ごしにぎゅうと抱きしめてくる。
「さわるな、バカ」
幼い子どもみたいな抵抗を彼は聞き入れない。
「触ってません。寒そうだからこうして掛布を巻き直してあげてるだけです」
「もう1回複製箱使って、帰れよばーか」
「そのつもりでしたが、やっぱり床でいいので泊めてもらいます」
防音魔法をかけてなければ、隣に会話は筒抜けだっかたかもしれない。
念のために使った魔法が功を奏した。
今日一日で、たくさんの幸せな思い出が積み上がっていった。
この日が最良だったと思い返し、辛くなる未来があるかもしれない。
それでも、今はルウェリンを信じていたかった。
「客用の寝具なんてないぞ。お前、寝心地良いベッド以外は無理そうだけど」
「貴方の部屋にいられるだけでうれしいし、身体はそれなりに鍛えてます。ナディル先生とラザリオ先生に体力強化メニューもらってますし」
何のための体力増強かは聞かずにおこう。同僚の性欲が過剰だと決めつけている彼らには、一応釘を差した方が良さそうだ。
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