ラムネは溶けた、頭の中に

卵男

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プロローグ

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 朝のテレビ番組には、善人しかいない。
 今日一日の天気から、エンタメ情報、はてはファッションの指南まで、爽やかに軽やかに伝え続け、最後には笑顔で「いってらっしゃい」とお辞儀をする。そこに怒声や暴力など存在してはならない。平和で親切な人間しかいない、一つの世界である。
 同時に、だからこそ、「悪」が目立つのだ。
「ねえ、やだちょっと」
 妻に肩を叩かれ、男はスマホからテレビに視線を向けた。そこには「実母を殺害」という派手なテロップと、派手な髪色をした青年の顔が映し出されている。
「これ、あなたの地元じゃないの?」
 ——×××市×××町。
 善人が読み上げるそこは、確かに男の育った町であった。
「もしかして、知り合いじゃないわよね?」
 男は曖昧に返事をして、再びスマホに目を落とした。
 その瞳には、暗い影が満ちていた——。
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