異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女

幼女と買い物①

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 ぐっすりと寝て、日が昇り始めた森の朝。
 木々の隙間から差し込む光が床にまだら模様を描き、鳥の鳴き声が遠く近くで重なっている。

 その中で俺は一人、買い物に行くための準備と最終確認をしていた。

 荷物に関しては問題ない。
 食料は向こうで買うつもりだし、こちらから持っていくのは戦利品と、万一の戦闘に備えた武器と魔導具くらいだ。

 1つ問題があるとしたら――シロとミドリをどうやって連れて行くかだ。

 何の対策もせずに肩車なんてしたら、移動中の風圧で普通に吹き飛んでしまう。
 こっちの感覚からすると「ちょっとそこまで」くらいの距離でも、人間基準からしたら規格外の速度になる。

 街までの距離は二千キロ程度なので、真面目に走れば五秒もあれば着く。

 ……うん、我ながら頭おかしい数字だな。

 脇に抱えて、魔法でいろいろと軽減して、速度を落として走る。
 それが一番無難かもしれん。速度を落とすと言っても、一般的な感覚からすれば普通に超音速なんだが。

「にーにがいない!」

「おいて……いかれた……?」

「にーにー!?」

 奥の寝室から、焦ったような、あたふたした気配と一緒に声が聞こえてきた。

 数秒後、半泣き顔のシロとミドリが、ばたばたと足音を鳴らして寝室から飛び出してくる。

「どうした?」

「にーに!」

「おにーちゃ…」

 問いかけを最後まで言う前に、ガシッと両足にしがみついてきた。

 ああ、先に起きたのは間違いだったな、これ。

「シロたちよりはやくおきちゃめっ!」

「おきてもねてて…?」

 新しいルールが脳内に刻み込まれていく音が聞こえる気がする。

 どうやら、俺はこれから2人と同時に起きなければいけないことになってしまったようだ。

 時間に追われる生活をしていないので、大きな問題は無い……はず。
 ただし、自由時間は確実に減る。

「おう、わかったから服着てこい」

「はーい!」

「うん……」

 返事だけはいい。

 駆け足で寝室に戻って行く2人の背中を見送りながら、
 「今後も準備は静かにこっそりやるべきか否か」というどうでもいい命題が頭をよぎる。

 十分ぐらいすると、今日の服を着て2人が出てきた。

「あー! そのクマさんシロのだよ!」

「おねーちゃん……ねこさん……いいって、いってた……」

「そーだっけ?」

「うん……」

 などという、パンツを巡る熾烈な駆け引きが行われていたのは内緒だ。

 俺の記憶では、シロがネコの模様だった気がするので、ミドリが正しい。
 喧嘩にならないように、今後は2種類ずつ作るか……。

「よし、行くか」

「おー!」

「おー……!」

 いつものようにテンション高めのシロと、少し抑えめだけど目はきらきらしているミドリ。

 2人をそれぞれ脇に抱えて外に出る。

 そのまま、足首に軽く力を込めて、木々の高さを超える程度までジャンプする。

 ふわりと体が浮かび、真上に伸びた幹と枝葉が一気に眼下に沈む。

 下を空間魔法で固定して、宙に足場を作り、その上に立って静止する。

「とんでるねー」

「すごい……」

 シロは純粋に空を飛んでいること自体にテンションが上がっているらしく、足をぱたぱたさせている。
 ミドリは、少し緊張した顔で、でも嬉しそうに、下の森を見下ろしていた。

 そのまま2人ごと風属性の魔力を纏い、空気抵抗を無効にするように調整する。
 幼女二人分の負担軽減設定。重要だ。

「おし、行くぞ」

 足に力を込める。

 空間を蹴った瞬間、景色が、音が、一気に伸びて消えた。

 世界が、線になって後ろに流れていく。

 五分もしないうちに、目の前に砦みたいなものが見えてきた。

 高い石壁と、見張り台。所々に立っている兵士の姿。
 ここが、魔力感知で見えた街だな。

 このままの速度で突撃すると、着地と同時に衝撃波で街が壊滅するので、かなり手前で減速し、周辺で降りる。

「はわー」

「ほへぇ……」

 シロとミドリが放心しているが、そのうち治るだろう。
 初フライトでこれは刺激が強すぎたかもしれない。

 2人を抱き直し、門の方へ向かって歩き出す。

 のんびりと門の方に向かっていると、前から怒鳴るような声が聞こえてきた。

「そこの人! 危ないから早くこっちに来なさい!」

 なるほど、そんなに危ないところにいる人がいるのか。
 門のすぐ近くに何か危険地帯でも――と気になって後ろを振り向いてみる。

 ……誰もいない。

「君だよ!!!」

 前方から、勢いよくツッコミが飛んできた。

 俺か。

 門番の人にこれ以上迷惑をかけるのもアレなので、軽く駆け足で門へと向かう。

「すまないな」

「ホントだよ、こんな厳戒態勢の時に外に出てる人がいるとは思わなかったからね。少し認識が遅れてしまったよ」

 見張り台の上から降りてきたらしい門番が、額の汗を拭きながら肩をすくめる。

「厳戒態勢…? 何かあったのか?」

 戦争寸前だったら、街見物どころじゃない。引き返すまであるぞ、これ。

「知らないのかい? 丁度1週間ぐらい前かな? 『魔の森』から異様なほど濃密な魔力が感知されたんだ。五千年くらい前に封印された邪神の復活の予兆かと言われているんだ」

「そうだったのか…」

 そんなに異様な魔力は感じてないな……。

 俺には脅威に感じなかったのか?
 森にいる魔物ですら尋常じゃない魔力を発しているから、感覚が麻痺してるだけかもしれない。

「そして一昨日かな? また『魔の森』から魔力が飛んできた。一瞬だったけど、濃度が高すぎて街の8割くらいの人が気絶したんだ。一大事だろう?」

「確かにそれは大変だな」

 ……うん。心当たりしかないな。
 魔力使ったの、たぶん俺だ。

「それを王都に報告したら邪神が復活したと認定されて、『魔の森』に対して厳戒態勢が敷かれてるんだ」

 邪神か……気になるな。

 別に俺の日常を阻害しなければ手を出さないが、何かしてくるようであれば、
 倒せるかは別として、全力で対処しよう。自分の生活圏は守りたい。

「にーに、はいらないのー?」

 腕の中から、シロが首だけひょこっと出してくる。

「ああ、そうだ。身分証が無いんだが入れるか?」

「中に入って冒険者ギルドに登録することが条件になるけど入れるよ。そうするかい?」

「そうするとしよう」

 ギルドなるものがあるのか。

 それなら、この素材が売れる……はずだ。
 身分証明と売却が一緒にできて、一石二鳥だな。

「よし、じゃあこれで入れるよ。前線都市バルへようこそ! 冒険者ギルドは入ってすぐ右にあるよ」

 前線都市か。いい名前だ。
 おそらく「人族の住める最前線」という意味だろう。

「ひと……いっぱい……」

「たくさんいるねー!」

 門をくぐると、今まで見たことのない密度で人が行き交っていた。
 露店の店主が声を張り上げ、子供が走り回り、鎧姿の戦士やローブ姿の魔術師らしき人間もちらほら見える。

「まずは物を買うために素材を売るぞー」

「おー!」

 二人の声が揃う。

 親切にギルドの位置を教えてもらったので、そのまま右手側へ向かう。

 しばらく歩くと、目的の建物が見えてきた。

 ここか……。

 外観は、どこか西部劇風の酒場を思わせる。
 木造の壁に、大きく「冒険者ギルド・バル支部」と書かれた看板。
 入口の扉は、よくある押し開きの一枚扉ではなく、腰の高さくらいのスイングドアだ。

 いい雰囲気だ。

 本来なら手で押して入れるが、両脇に大事な荷物――幼女×2――を抱えている。
 シロとミドリを扉に押し当てて開けるのは、さすがに良心が痛む。

 両手が塞がっているので、扉の下端を軽く蹴ってスイングドアを押し開けると、
 ギィィ、と小気味よい音を立てて扉が揺れ、酒場じみたギルドの中にいる人が全員、こちらを見た。

 ……乱暴に入りすぎたか?

「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」

 カウンターの奥から、よく通る声が響いた。

「登録と素材の買い取りを頼む」

「かしこまりました! 先に素材を拝見させてもらっても?」

「これだ」

 空間魔法を使って、亜空間に入れておいた素材を取り出す。

 熊の爪、トカゲの牙、大蛇の毒袋、その他もろもろ二十種類ほどの素材が、
 カウンター横のテーブルの上に、どさどさっと散乱する。

「えーっと…あれ? 無いなぁ…」

 受付嬢が、手元の分厚い本を開きながら、素材を一つ一つ見比べている。
 素材図鑑みたいな感じか?

「あの…よければこの素材の魔物の特徴を教えてくれませんか?」

 そう言って、受付嬢はこの前仕留めた熊の爪を指差した。

「いいぞ、確か十五メートルから二十メートルぐらいの大きさで、全身の体毛は黒、力は非常に強くて、熊のくせに魔力を扱う」

「えっ…?」

「肉は美味しかった」

「おいしかった!」

「また……たべたい……」

「帰ったら作るか」

「やたっ……!」

 シロとミドリが即座に乗ってくる。

 受付嬢の目が、すごい勢いで泳いでいる。
 大丈夫か? 呼吸はしているか?

「しょ、少々お待ちください!」

 慌てて本を閉じると、そのまま奥の方へ駆け足で引っ込んで行ってしまった。

 何か問題でもあったのだろうか……?
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