異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女

幼女と買い物④

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「おーい! 少年! 待ってくれー!」

 食料を売っているところを探そうと、適当に賑やかな通りを選んでブラブラ歩いていたところで、背中に向かって声が飛んできた。
 耳に覚えのある声色だ。

「あかいひと!」

「そうだな」

 早くもシロが特徴だけで相手を認識している。
 判断基準が雑な割に、妙に正確だ。偉い偉い。

 振り返ると、汗をにじませた赤髪の女戦士――ルナが息を切らしながら駆け寄ってくるところだった。
 背中の大剣がガチャガチャと音を立てて揺れている。

「やっと追いついた……」

「何か用か?」

「素材の件だよ。私は爪の代金しか払ってない」

「なんだ、そんな事か…」

 正直、買い物ができればそれで良かったので、素材の値段についてはあまり気にしていない。
 あの程度の素材なら、家に帰れば腐るほど――もしかすると、文字通り腐っているかもしれんが――いくらでもある。

「そんな事じゃないよ!? あの素材全部で、小さい国だったら買えるぐらいの価値はあるんだからね!?」

 ルナは、信じられない、と言わんばかりに目を見開き、両手をブンブン振り回しながら訴えてくる。
 その度に自己主張の激しい胸が、これまた主張を強めて上下に揺れた。何が詰まっているんだろうな、あれ。

「ほへー」

「すごい……」

 シロとミドリが、そっちに釘付けになっている。
 自分たちの胸をぺたぺた触って見比べては、そっと首を傾げていた。比べる対象が違う。

「シロ、大人にならないと無理だ。諦めろ」

「話聞いてる!?」

「きいてない!」

 俺の代わりに、即答でシロが答えてくれる。
 いや、そこは嘘でも「聞いてる」って言っとけよ、シロよ。フォローという概念を学んでくれ。

「さすがに貰うなんてできないから返そうと思って持ってきたんだ。はいっ」

「えっ……いらないんだが……」

 ルナが亜空間から引っ張り出したのか、袋にまとめた素材をぐい、と差し出してくる。
 この街に来るだけで一苦労なのに、わざわざ追いかけてまで返しに来るあたり、根は真面目らしい。

「この素材も欲しいけど買えるほどのお金持ってないからね。受け取ってくれ」

 どうするか……。

 国が買えると言われても、正直興味はない。
 せっかく倉庫を整理できたと思ったのに、ここで持ち帰ってしまうとまた手間が増えそうだ。

 ――なら、押し付ける方向でいくか。

「いらないから有り難く受け取ってくれ」

「タダで……ってことは出来ない相談だ」

「貸し1だ。俺が困った時、その代金分だけ働いてくれ。名のある冒険者なんだろ?」

 ルナの背中の大剣、街中であの武装を許されている時点で、それなり以上の立場なのはわかる。
 顔も広そうだし、何かあった時に頼れる相手は多いに越したことはない。

「君がそれでいいなら受け取るけれど……返しきれるかな……?」

 ルナが頭をぽりぽり掻きながら、困ったように笑う。

 ここには何度か来るだろうし、知っている人間が一人いるだけでもだいぶ動きやすくなる。
 しかも、ある程度名前が通ってる冒険者なら尚更だ。

「受け取ったな? 早速働いて貰うぞ」

「見た目に反して人使いが荒いんだね」

「初めて言われたな。調味料が売ってるところってあるか?」

「ん? 調味料か。それならこっちだよ」

 道案内ゲットだぜ。

 シロとミドリが、肩の上と腕の中でだんだんとまぶたを重くしてきたので、なるべく早く用事を終わらせたいところだ。

 頭に掴まる形で肩車をしているシロが、万が一後ろに倒れないように、こっそり魔法を展開しておく。
 風魔法の応用で、後ろに重心が傾きかけた瞬間、俺の方へと押し返すよう圧を送る簡易補助だ。

「ここだよ」

 ルナが指差した先には、木枠の窓から棚がずらりと見える、小さな店が並んでいた。
 中には瓶や袋が所狭しと並んでいて、ふわりと香辛料の匂いが漂ってくる。

「そうか、案内感謝する」

 店内に入ると、色とりどりの瓶が棚一面を占拠していた。
 見たことのある塩や砂糖らしきものから、色合い的にどう考えても辛そうな粉、瓶のふたを開けたら涙が出そうな香草まで様々だ。

 ――面倒だ。棚にある調味料、まとめて全部持っていこう。

 小麦粉は、別の亜空間で栽培しているから必要ない。
 卵も倉庫にストックがある。
 目についた油や酢、ソースっぽいもの、香辛料などを次々と籠に放り込んでいく。

「結構買うね?」

「あまり街に来ないからな」

 レジにいた若い店員の娘の顔が、引きつった笑顔に変わる。
 そんなに大量に買っているつもりはないんだが、一般的には多いのだろうか。

「金貨8枚になります……!」

「ほいっ」

 懐から金貨を八枚取り出し、カウンターに置く。

「ちょうどお預かりします……」

 店員の娘は慣れた手つきで金貨を確認すると、レジ横の布袋にそっとしまった。

 代金を支払ったので、購入した調味料とその他の食材を一つ残らず亜空間に投げ入れておく。

 そのタイミングで、シロが完全に寝落ちした。
 頭の上から、じわりと冷たい感触が伝わる。……よだれだ。俺の頭をクッション扱いして幸せそうに寝ている。

「よし、終わりだな」

「え? 食料だけ?」

「ああ」

 ルナが少し不服そうな顔をする。
 一体何を期待していたんだろうか。

「武器とか防具は……必要ないか」

「そうだな。素手でどうにかなる」

 あの森の中にいる魔物たちなら、素手と魔法で十分だ。
 魔力を濃縮して具現化すれば、その場で武器にだってできる。

「帰るか……」

 シロとミドリが、完全に夢の世界に旅立っているので、この状態でどこかに寄るとしたら起こさなければならない。
 寝ている子供を起こすのは、なんだか罪悪感があるので、大人しく帰るとしよう。

「帰るのかい? それならまた来た時にギルドに寄ってくれれば参上するよ。少年の名前は……」

「シュウだ」

「了解したよ。君が来たら私に連絡するように受付に言っておくね」

「わかった、感謝する」

 これで、次に街へ来た時、ギルドへ顔を出せばルナを呼べるというわけだ。
 案内役や、よくわからない風習の説明役としても使えそうだな。

 帰るための魔法を構築する。

 さっきの移動で、この街のおおよその位置は把握した。
 今度は逆に、森の拠点へと空間を繋げる。

「じゃあまた来た時頼むわ。【空間転移】」

「転移系魔法は失伝したって聞いたんだけどなぁ……今度教えてもらえるかな?」

 ルナが感嘆混じりにそう呟いた声を背中で聞きながら、世界がぐにゃりと歪む感覚に身を委ねる。

 瞬き一つした次の瞬間、視界はギルドでも街でもなく、見慣れた我が家の前になっていた。

 成功だ。

 昔は座標の微調整に失敗して、土の中とか木の幹の中とかに転移してそのまま即死、なんてことがザラにあった。
 それを思えば、我ながらよく成長したものだ。

 家の扉を開け、中に入り、そのまま寝室へ向かう。

「んにゅ……? おうち?」

 肩の上でシロが、眠たげな声を漏らした。

「そうだ。寝るならベッドで寝ようか」

 シロをそっと肩から下ろし、ミドリも腕から降ろしてベッドの方を指さして促す。

 2人はふらふらした足取りでベッドに向かいながら、歩きながら器用に服を脱ぎ始める。
 ミドリもそれに倣って服をぽいぽいと床に落としていく。

 ……なぜだ。なぜ毎回脱ぎ捨てる。

 そのうち大きくなったら、服の畳み方から教えるか。
 部屋中に脱ぎ散らかして山を築くような子にはあまりなってほしくない。

「にーに」

 シロがベッドをバンバンと叩く。

 これは「ここに来い」というシロの合図だ。

「はいはい、今行きますよっと」

 腰布と肩からかけていた布を外し、亜空間から取り出した寝間着を直接身に纏う。
 服を引っ掛ける感覚も、すでに慣れたものだ。

 ベッドに腰を下ろすと、シロとミドリが、当然のように左右からくっついてくる。

 ……あっついな!?

 眠い時の子供の体温は、やたらと高い。
 左右から挟まれて、あっという間に布団の中が自前サウナと化した。

 それでも、胸元に顔を埋めて、すぅすぅと寝息を立てる2人の温もりは、悪くない。
 瞼がじんわりと重くなり、俺も迫り来る睡魔に身を委ねた。
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