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第10話「ボーナスステージ」
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メタル系モンスターが生息する地域を目指して俺たち二人は野原を歩いていた。
途中出てきたモンスターは時間の無駄なため、俺が盾をしながら適当にあしらう事で先に進む。
それか、狩りをしている別のプレイヤーに誘導して押し付けておいた。
ここが本当にファンタジーの世界ならモンスターの押し付けなど最低な行為になるが、生憎ここはゲームの世界なため逆に感謝されている。
自分が移動せずにモンスターから来てくれれば狩る効率も上がるからだ。
そんなこんなで目的地へと着いたのだが――いつの間にか、ミレスの姿が何処にもなくなっていた。
『ミレス、何処に行ったんだ……?』
俺はすぐにミレスへとチャットを飛ばす。
ゲームの世界だから命の心配をする必要はないが、五感から得られる情報はリアルと遜色ないため不意なトラブルでミレスにトラウマを植え付けてしまう可能性がある。
そうなればもうゲームをしなくなってしまうだろう。
この辺では異様に見た目が怖いモンスターはいないはずだけど、一人で心細い思いをしてるミレスがどう捉えるかはわからないしな。
『シュ、シュンちゃん! 助けて!』
『どうした!? 何かあったのか!?』
ミレスから応答があったのはいいが、彼女の返事には何か焦りのようなが含まれていた。
既に何かしらのトラブルに遭っているようだ。
『落とし穴みたいなところに落ちちゃったんだけど、たくさんのモンスターに囲まれてるの! 今はニャーちゃんが威嚇してくれてるんだけど、このままだと襲われちゃうかも!』
『すぐ行くからそれまでニャーちゃんに頑張ってもらって! いつ落とし穴に落ちたんだ!?』
落とし穴という事はどうやらミレスは隠れステージに行ってしまったようだ。
このゲームにはマップ化されていないステージがところどころにある。
しかもそういうステージのほとんどは強敵モンスターや大量のモンスターが出現する設定になっているのだ。
今回は後者のステージだったのだろう。
この辺に隠れステージがあったという記憶はないし、他の冒険者からも聞いた事がないため最近実装されたのかもしれない。
ニャーちゃんのような仔猫の威嚇がいつまでも通じるとは思えないし、早く助けにいかないとミレスが死んでしまう。
『落ちてすぐに連絡したから……!』
『わかった!』
落ちてすぐという事はこの辺に隠れステージに行く穴があるはずだ。
しかし、目視しようにも辺りは草でおおわれている。
一々手探りで探していたら間に合わなくなるのは一目瞭然だ。
それならば、ミレスが歩いていた辺りを走ってみよう。
同じところを走ればきっと隠れステージに行けるはずだ。
目で探すのではなく同じルートを辿れば隠れステージに行けると判断した俺は、ミレスが歩いていたルートを走ってみる。
すると――数メートル走ったところで落とし穴に落ちてしまった。
多分これがミレスが落ちたという穴なんだろう。
隠れステージにいる大量のモンスターなど俺たち二人で相手など出来るはずがないため、ミレスと合流し次第新規キャラが最初から持っているテレポートストーンで街に戻るしかない。
使い捨てになるからダンジョンでもないところで使うのはいささか勿体ないが、背に腹は代えられないため仕方がなかった。
「――ミレス、無事か!?」
ズルルッと一番下まで滑り降りると、俺はすぐにミレスの姿を探す。
「シュンちゃん!」
何かが飛びついてくる気配を感じたと思ったら、飛びついてきたのはミレスだった。
ミレスはギュッと俺の体に捕まり、ブルブルと体を震わせている。
余程怖かったのだろう。
顔を俺の胸に埋めるように押し付けるミレスの頭を俺は優しく撫でた。
咄嗟にこんな行動をしてしまった事には自分でも驚くが、多分ゲームを始めたばかりの佐奈の姿とミレスの姿が重なってしまったからだろう。
もう一年以上前になるが、佐奈も『ファンタジーリインカーネーション』を始めた頃はモンスターに怯えてずっと俺にくっついていた。
その姿が今のミレスの姿に重なってしまったのだ。
ミレスは驚いたように俺の顔を見つめてきたが、あまり彼女に構っている余裕もない。
ミレスを見つけて安心したのも束の間、現在たくさんのモンスターの気配を肌で感じていた。
十匹やそこらじゃない。
ダンジョン並のモンスターがここにはいる。
「ミレス、テレポートストーンを使――えっ……?」
このままでは二人とも死ぬ事は免れないと判断し、当初の予定通りテレポートストーンを使わせようとしたのだが――俺は目の前に現れたモンスターを見て言葉を止めてしまった。
え、なんでこのモンスターがここに……?
しかもこれほど大量なんて今まで見た事がない。
イベントですらここまで出た事はないぞ。
「シュ、シュンちゃん、どうしたの!?」
俺が固まってしまったからか、ミレスが心配そうに俺の顔を覗きこんでくる。
しかし俺はそんなミレスに対してニヤッと笑みを浮かべた。
「ミレス、予定変更だ。ここでレベル上げをするぞ」
「え? え? だ、大丈夫なの……?」
「大丈夫、心配いらない。こいつらは凄く弱いモンスターなんだ」
そう、このモンスターに攻撃力はほとんどない。
あるのは『ふざけるな』って文句を言いたくなるほどの防御力だけなのだ。
――俺とミレスの前に現れた大量のモンスター。
それは、俺たちが探し求めていたメタル系モンスターだった。
どうやらミレスが見つけたものは、隠れステージは隠れステージでもボーナスステージだったようだ。
途中出てきたモンスターは時間の無駄なため、俺が盾をしながら適当にあしらう事で先に進む。
それか、狩りをしている別のプレイヤーに誘導して押し付けておいた。
ここが本当にファンタジーの世界ならモンスターの押し付けなど最低な行為になるが、生憎ここはゲームの世界なため逆に感謝されている。
自分が移動せずにモンスターから来てくれれば狩る効率も上がるからだ。
そんなこんなで目的地へと着いたのだが――いつの間にか、ミレスの姿が何処にもなくなっていた。
『ミレス、何処に行ったんだ……?』
俺はすぐにミレスへとチャットを飛ばす。
ゲームの世界だから命の心配をする必要はないが、五感から得られる情報はリアルと遜色ないため不意なトラブルでミレスにトラウマを植え付けてしまう可能性がある。
そうなればもうゲームをしなくなってしまうだろう。
この辺では異様に見た目が怖いモンスターはいないはずだけど、一人で心細い思いをしてるミレスがどう捉えるかはわからないしな。
『シュ、シュンちゃん! 助けて!』
『どうした!? 何かあったのか!?』
ミレスから応答があったのはいいが、彼女の返事には何か焦りのようなが含まれていた。
既に何かしらのトラブルに遭っているようだ。
『落とし穴みたいなところに落ちちゃったんだけど、たくさんのモンスターに囲まれてるの! 今はニャーちゃんが威嚇してくれてるんだけど、このままだと襲われちゃうかも!』
『すぐ行くからそれまでニャーちゃんに頑張ってもらって! いつ落とし穴に落ちたんだ!?』
落とし穴という事はどうやらミレスは隠れステージに行ってしまったようだ。
このゲームにはマップ化されていないステージがところどころにある。
しかもそういうステージのほとんどは強敵モンスターや大量のモンスターが出現する設定になっているのだ。
今回は後者のステージだったのだろう。
この辺に隠れステージがあったという記憶はないし、他の冒険者からも聞いた事がないため最近実装されたのかもしれない。
ニャーちゃんのような仔猫の威嚇がいつまでも通じるとは思えないし、早く助けにいかないとミレスが死んでしまう。
『落ちてすぐに連絡したから……!』
『わかった!』
落ちてすぐという事はこの辺に隠れステージに行く穴があるはずだ。
しかし、目視しようにも辺りは草でおおわれている。
一々手探りで探していたら間に合わなくなるのは一目瞭然だ。
それならば、ミレスが歩いていた辺りを走ってみよう。
同じところを走ればきっと隠れステージに行けるはずだ。
目で探すのではなく同じルートを辿れば隠れステージに行けると判断した俺は、ミレスが歩いていたルートを走ってみる。
すると――数メートル走ったところで落とし穴に落ちてしまった。
多分これがミレスが落ちたという穴なんだろう。
隠れステージにいる大量のモンスターなど俺たち二人で相手など出来るはずがないため、ミレスと合流し次第新規キャラが最初から持っているテレポートストーンで街に戻るしかない。
使い捨てになるからダンジョンでもないところで使うのはいささか勿体ないが、背に腹は代えられないため仕方がなかった。
「――ミレス、無事か!?」
ズルルッと一番下まで滑り降りると、俺はすぐにミレスの姿を探す。
「シュンちゃん!」
何かが飛びついてくる気配を感じたと思ったら、飛びついてきたのはミレスだった。
ミレスはギュッと俺の体に捕まり、ブルブルと体を震わせている。
余程怖かったのだろう。
顔を俺の胸に埋めるように押し付けるミレスの頭を俺は優しく撫でた。
咄嗟にこんな行動をしてしまった事には自分でも驚くが、多分ゲームを始めたばかりの佐奈の姿とミレスの姿が重なってしまったからだろう。
もう一年以上前になるが、佐奈も『ファンタジーリインカーネーション』を始めた頃はモンスターに怯えてずっと俺にくっついていた。
その姿が今のミレスの姿に重なってしまったのだ。
ミレスは驚いたように俺の顔を見つめてきたが、あまり彼女に構っている余裕もない。
ミレスを見つけて安心したのも束の間、現在たくさんのモンスターの気配を肌で感じていた。
十匹やそこらじゃない。
ダンジョン並のモンスターがここにはいる。
「ミレス、テレポートストーンを使――えっ……?」
このままでは二人とも死ぬ事は免れないと判断し、当初の予定通りテレポートストーンを使わせようとしたのだが――俺は目の前に現れたモンスターを見て言葉を止めてしまった。
え、なんでこのモンスターがここに……?
しかもこれほど大量なんて今まで見た事がない。
イベントですらここまで出た事はないぞ。
「シュ、シュンちゃん、どうしたの!?」
俺が固まってしまったからか、ミレスが心配そうに俺の顔を覗きこんでくる。
しかし俺はそんなミレスに対してニヤッと笑みを浮かべた。
「ミレス、予定変更だ。ここでレベル上げをするぞ」
「え? え? だ、大丈夫なの……?」
「大丈夫、心配いらない。こいつらは凄く弱いモンスターなんだ」
そう、このモンスターに攻撃力はほとんどない。
あるのは『ふざけるな』って文句を言いたくなるほどの防御力だけなのだ。
――俺とミレスの前に現れた大量のモンスター。
それは、俺たちが探し求めていたメタル系モンスターだった。
どうやらミレスが見つけたものは、隠れステージは隠れステージでもボーナスステージだったようだ。
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