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第4話 掃除から始まる
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明かりが点いたことで、屋敷の中の様子がはっきりした。
広間は広い。
天井も高く、柱や装飾からは、かつてそれなりに手を掛けられていたことが分かる。
ただし、それは「昔」の話だ。
床には埃。
壁際には、長く動かされていない家具。
窓枠には、薄く汚れが溜まっている。
「……」
私は一通り見回してから、袖を軽く整えた。
「まずは、掃除ですね」
口に出したのは、それだけだった。
ロイが、少し意外そうにこちらを見る。
「……やられるんですか」
「はい。
住むなら、避けて通れませんから」
そう答えると、ロイは一瞬、言葉を探すように黙った。
「……掃除道具は、倉にあります。
ただ、使えるかどうかは……」
「見てみましょう」
私がそう言うと、
ロイは小さく頷いて、先に立って歩き出した。
倉は屋敷の裏手にあった。
扉を開けると、こちらも同じように埃っぽい。
中には、箒や布切れ、古い桶がいくつか残っている。
どれも新しくはないが、使えないほどではなかった。
「……これで、十分ですね」
私がそう言うと、
ロイは思わず、といった様子でこちらを見る。
「……貴族の方って、
こういうの、指示する側だと思ってました」
「そういう方も、多いでしょうね」
私は箒を手に取りながら答える。
「でも、私は慣れています」
それ以上は言わなかった。
理由を説明する必要はないし、
今はただ、手を動かせばいい。
箒を動かすと、
床に積もっていた埃が、静かに舞い上がる。
広間の隅から、少しずつ。
無理に急がず、確実に。
ロイは、しばらくその様子を見ていたが、
やがて、何も言わずに別の箒を手に取った。
「……じゃあ、俺はこっちを」
「お願いします」
短いやり取りだった。
言葉は少ないが、
作業は自然と分担されていく。
窓を開けると、
外の空気が流れ込み、埃の匂いが薄れていった。
精霊の気配は、やはり感じられない。
けれど、風は普通に吹いている。
「……」
ロイが、窓の外を一瞬だけ見てから、言った。
「ここ、精霊、ほとんどいないんです」
「そうなんですね」
私がそう返すと、
今度はロイの方が、少し驚いた顔をした。
「……気づいて、ないんですか」
「はい。
あまり、分かりません」
正直に答えると、
ロイは小さく息を吐いた。
「……そっか」
それ以上は、何も言わなかった。
掃除を終えた広間は、
見違えるほどではないが、
「使える」状態にはなった。
床は見えるようになり、
光もきちんと入る。
私は、少しだけ肩の力を抜いた。
「今日は、ここまでにしましょう」
「……はい」
ロイはそう答えてから、
少し間を置いて、ぽつりと言った。
「……貴族の方なのに」
私は、その言葉に振り返る。
「……いえ」
少し考えてから、静かに言った。
「領主ですから」
ロイは、一瞬だけ目を瞬かせ、
それから、何も言わずに頷いた。
広間は広い。
天井も高く、柱や装飾からは、かつてそれなりに手を掛けられていたことが分かる。
ただし、それは「昔」の話だ。
床には埃。
壁際には、長く動かされていない家具。
窓枠には、薄く汚れが溜まっている。
「……」
私は一通り見回してから、袖を軽く整えた。
「まずは、掃除ですね」
口に出したのは、それだけだった。
ロイが、少し意外そうにこちらを見る。
「……やられるんですか」
「はい。
住むなら、避けて通れませんから」
そう答えると、ロイは一瞬、言葉を探すように黙った。
「……掃除道具は、倉にあります。
ただ、使えるかどうかは……」
「見てみましょう」
私がそう言うと、
ロイは小さく頷いて、先に立って歩き出した。
倉は屋敷の裏手にあった。
扉を開けると、こちらも同じように埃っぽい。
中には、箒や布切れ、古い桶がいくつか残っている。
どれも新しくはないが、使えないほどではなかった。
「……これで、十分ですね」
私がそう言うと、
ロイは思わず、といった様子でこちらを見る。
「……貴族の方って、
こういうの、指示する側だと思ってました」
「そういう方も、多いでしょうね」
私は箒を手に取りながら答える。
「でも、私は慣れています」
それ以上は言わなかった。
理由を説明する必要はないし、
今はただ、手を動かせばいい。
箒を動かすと、
床に積もっていた埃が、静かに舞い上がる。
広間の隅から、少しずつ。
無理に急がず、確実に。
ロイは、しばらくその様子を見ていたが、
やがて、何も言わずに別の箒を手に取った。
「……じゃあ、俺はこっちを」
「お願いします」
短いやり取りだった。
言葉は少ないが、
作業は自然と分担されていく。
窓を開けると、
外の空気が流れ込み、埃の匂いが薄れていった。
精霊の気配は、やはり感じられない。
けれど、風は普通に吹いている。
「……」
ロイが、窓の外を一瞬だけ見てから、言った。
「ここ、精霊、ほとんどいないんです」
「そうなんですね」
私がそう返すと、
今度はロイの方が、少し驚いた顔をした。
「……気づいて、ないんですか」
「はい。
あまり、分かりません」
正直に答えると、
ロイは小さく息を吐いた。
「……そっか」
それ以上は、何も言わなかった。
掃除を終えた広間は、
見違えるほどではないが、
「使える」状態にはなった。
床は見えるようになり、
光もきちんと入る。
私は、少しだけ肩の力を抜いた。
「今日は、ここまでにしましょう」
「……はい」
ロイはそう答えてから、
少し間を置いて、ぽつりと言った。
「……貴族の方なのに」
私は、その言葉に振り返る。
「……いえ」
少し考えてから、静かに言った。
「領主ですから」
ロイは、一瞬だけ目を瞬かせ、
それから、何も言わずに頷いた。
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