不要とされた私が、拾われた先で人生を立て直すまで

藤原遊

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第5話 領主として扱われる

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翌朝、屋敷の外が少し騒がしかった。

窓の外を見ると、人が集まっている。
数は多くない。
五人ほど――いずれも年嵩で、服装もまちまちだが、立ち位置にははっきりとした序列があった。

「……皆さん、代表の方です」

ロイが小さな声で言う。

「勝手に押しかけるのは失礼なので、
こちらで待ってもらってます」

「分かりました」

私は身支度を整え、広間へ向かった。

扉を開けると、待っていた人々が一斉に頭を下げる。

「おはようございます、領主様」

声を揃えているわけではない。
それでも、動きは揃っていた。

「朝早くから、ありがとうございます」

私がそう返すと、
彼らは顔を上げ、改めて姿勢を正した。

名乗りは簡潔だった。
水を管理している者、畑をまとめている者、
倉の鍵を預かっている者。

全員が、
「判断を仰ぐため」に来ている。

「まず、ご挨拶をと思いまして」

そう前置きしてから、
年配の男が言った。

「領主様が来られた以上、
この地は正式に管理されることになります」

その言い方は丁寧だが、
そこに安堵や期待の色は、ほとんどない。

事実確認。
それだけだ。

「現状について、簡単にご説明します」

話は手短だった。

水は足りているが、設備は古い。
畑は回っているが、余裕はない。
魔境に近いため、夜間の見回りは欠かせない。

「今のところ、大きな問題はありません」

最後にそう付け加えられた。

――問題が起きてからでは遅い、という意味だ。

「ありがとうございます」

私は一つずつ聞き終え、頷いた。

「当面、やり方は変えなくて構いません。
これまで通りで」

その言葉に、
何人かがわずかに目を見開いた。

「……よろしいのですか」

「はい。
現場を知っている方々の判断が、最優先です」

少し間が空く。

彼らは互いに視線を交わし、
それから、再び私を見る。

「必要なことがあれば、
こちらからご相談します」

「ええ。
その際は、必ず話を聞きます」

命令もしない。
裁可を急がせもしない。

それでも、
判断の窓口がここにあることは、
はっきりと示されていた。

話が終わると、彼らは再び深く頭を下げた。

「本日は、これで」

そう言って、静かに引いていく。

去り際まで、距離は保たれたままだ。

扉が閉まったあと、
ロイが少しだけ息を吐いた。

「……皆、かなり緊張してました」

「そうでしょうね」

私は椅子に腰を下ろす。

「これまで、
“名ばかりの領主”しかいなかったので」

「はい」

ロイは短く答える。

「だから、
ちゃんと来た領主をどう扱えばいいのか、
分からないんだと思います」

その言葉は、評価でも不満でもなかった。

ただの観察だ。

「しばらくは、
この距離感でいいと思います」

私がそう言うと、
ロイは一瞬だけこちらを見てから、頷いた。

「……分かりました」

私は窓の外を見る。

畑の向こうに、
魔境との境が、ぼんやりと見えていた。

精霊の気配はない。
けれど、人の営みは、確かにここにある。

領主として扱われる、ということが、
少しだけ現実味を帯びてきた朝だった。
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