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第19話 秋の実り
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秋の収穫は、始まってしまえばはっきりと分かった。
数を数えなくても、去年と比べなくても、畑に立った瞬間の空気が違う。
刈り取った麦が次々と運ばれ、籠が思ったより早く埋まっていく。
倉に運び込むたび、床に広がる色が濃くなり、空いている場所を探す時間が短くなっていた。
「……去年、こんなに早く埋まってたか?」
誰かの声に、別の誰かが首を振る。
「いや、もっと後だった」
「置き場で、結構もたついたよな」
言葉は少ないが、皆、同じ感覚を共有している。
セシリアは畑と倉の間を行き来しながら、その流れを見ていた。
麦は揃い、芋も掘るたびに確かな重みがある。どれも無理をした育ち方ではなく、季節に沿って実ったものだった。
「数、取りますか」
ロイが帳面を手に声をかけてくる。
「後ででいいです」
今は、見るだけで足りていた。
水路のそばを通ると、刈り終えた畑がきれいに乾いている。
以前は水が残りがちだった場所も、今年は足を取られることがない。
「あそこ、前はよく溜まってたよな」
「今年は、引きが早い」
水車小屋の方からは、一定の音が聞こえてくる。
麦を粉にする作業は、もう特別なものではなく、収穫の流れの一部として組み込まれていた。
「これ、去年なら何日かかったかな」
「考えたくないな」
そんな声が混じり、作業は止まらない。
倉の中では、税として納める分と、村で使う分が自然に分けられていく。
誰かが指示を出すことはない。置き場も順も、もう身体が覚えている。
ロイが、積み上がる籠を見ながら小さく言った。
「……増えてますよね」
「ええ」
セシリアはそれだけ答えた。
水路を整え、作業の順を決め、場所を作った。
やったことはそれだけだ。だが、それが積み重なった結果が、今、目の前にある。
夕方、倉の扉を閉めると、中から穀物の匂いが立ちのぼる。
湿りすぎていない、重すぎない、冬を越せる匂いだった。
「今年は、冬の心配、少ないな」
誰かがそう言い、誰も否定しなかった。
セシリアは一度だけ倉を振り返る。
まだ数えていない。帳面にも書いていない。けれど、この秋の実りが、自分の指示や整備の延長線上にあることは、疑いようがなかった。
高い空の下で、収穫の音が村に満ちている。
今年は、確かに実っていた。
数を数えなくても、去年と比べなくても、畑に立った瞬間の空気が違う。
刈り取った麦が次々と運ばれ、籠が思ったより早く埋まっていく。
倉に運び込むたび、床に広がる色が濃くなり、空いている場所を探す時間が短くなっていた。
「……去年、こんなに早く埋まってたか?」
誰かの声に、別の誰かが首を振る。
「いや、もっと後だった」
「置き場で、結構もたついたよな」
言葉は少ないが、皆、同じ感覚を共有している。
セシリアは畑と倉の間を行き来しながら、その流れを見ていた。
麦は揃い、芋も掘るたびに確かな重みがある。どれも無理をした育ち方ではなく、季節に沿って実ったものだった。
「数、取りますか」
ロイが帳面を手に声をかけてくる。
「後ででいいです」
今は、見るだけで足りていた。
水路のそばを通ると、刈り終えた畑がきれいに乾いている。
以前は水が残りがちだった場所も、今年は足を取られることがない。
「あそこ、前はよく溜まってたよな」
「今年は、引きが早い」
水車小屋の方からは、一定の音が聞こえてくる。
麦を粉にする作業は、もう特別なものではなく、収穫の流れの一部として組み込まれていた。
「これ、去年なら何日かかったかな」
「考えたくないな」
そんな声が混じり、作業は止まらない。
倉の中では、税として納める分と、村で使う分が自然に分けられていく。
誰かが指示を出すことはない。置き場も順も、もう身体が覚えている。
ロイが、積み上がる籠を見ながら小さく言った。
「……増えてますよね」
「ええ」
セシリアはそれだけ答えた。
水路を整え、作業の順を決め、場所を作った。
やったことはそれだけだ。だが、それが積み重なった結果が、今、目の前にある。
夕方、倉の扉を閉めると、中から穀物の匂いが立ちのぼる。
湿りすぎていない、重すぎない、冬を越せる匂いだった。
「今年は、冬の心配、少ないな」
誰かがそう言い、誰も否定しなかった。
セシリアは一度だけ倉を振り返る。
まだ数えていない。帳面にも書いていない。けれど、この秋の実りが、自分の指示や整備の延長線上にあることは、疑いようがなかった。
高い空の下で、収穫の音が村に満ちている。
今年は、確かに実っていた。
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