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第11話:信じる相手が増えるほど、世界はややこしくなる
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「おかえりなさいませ、マリア様……!」
クラリスが花束を抱えて飛びついてきた。
その勢いで私は花びらに埋もれそうになった。
彼女の目は相変わらず潤んでいて、いやもうマジでどこに水分そんなにストックしてるのか問い詰めたい。
「ご無事で何よりです……! 会談のこと、新聞に出てましたよ! “二柱の聖女、神意を交わす”って!」
「うわ、それもうタイトル詐欺のレベルだな……」
「あと、あと、“東の聖女は西の聖女に膝を折った”とも……!」
「それは絶対折れてない!」
帰ってきたばかりなのに、私の知らないところで**“奇跡の合戦”みたいな報道**がされていたらしい。
国同士の信仰って、ほんとにもう“戦争以外の戦争”だよね。だから文明ってやつは嫌なんだ。
でも、それだけでは終わらなかった。
「クラリス、最近このあたりに“東の聖女様の言葉”って書かれた紙、貼られてなかった?」
「あ……はい。村の入口に数枚。あと、子どもたちが“エレオノーラ様式の祈り”を真似していて……」
「え、ちょっと待って。いつの間に?」
「たぶん、巡礼者の方が持ち込んで……でも、あの、私はマリア様だけを……!」
やめてその顔、重い! 信仰の重みはバランスが命なの!
「……ライオネル、これどう見る?」
私は、壁にもたれていた彼に声をかけた。
ライオネルは腕を組んだまま、目を閉じていたが、ひと言だけつぶやいた。
「――“多神化”が始まっているな」
その響きは、静かに、だが確かに重かった。
「人々は、“本物”と“本物らしさ”の両方を求めている。
あんたは“近くにいる救い”として信じられ、エレオノーラは“遠くにある理想”として信じられている。
共に存在してしまった今、その信仰は混ざり、やがて……割れるかもしれない」
……なるほど。
“どちらも神に近い”なら、それは共存できる。
でも、“神の姿が違う”と気づいた瞬間、人は選びたくなる。
どちらが正しいのか。
どちらが神の言葉を語っているのか。
「……私は、間違いなく“偽物”なんだけどね」
「だが、人は“それでも信じたい”と思ってる。そこに問題がある」
問題。そう、問題。
これまでは、ただ“ありがたがられてる”だけだった。
でも今は、“信仰の基準”が揺れはじめている。
人は、選びはじめる。
“聖女マリア”を信じるか、“聖女エレオノーラ”を信じるか。
そして私は、ただの詐欺師で。
選ばれる理由なんて、ほんとはどこにもない。
──でも、だからこそ。
私はもう、“選ばれた”ことから逃げられない。
「……とりあえずクラリス、貼り紙の数を調べて、場所もリストアップして。祈りを教えてる人がいたら、接触禁止じゃなくて対話優先で」
「はっ、はい!」
「ライオネル、巡礼者の流れ追える? 教会筋の情報も」
「やってみる。だが……お前が“本気”になる理由は?」
私は肩をすくめて、笑った。
「そろそろさ、“偽物”がどこまで本気出せるか、見てみたいだけだよ」
クラリスが花束を抱えて飛びついてきた。
その勢いで私は花びらに埋もれそうになった。
彼女の目は相変わらず潤んでいて、いやもうマジでどこに水分そんなにストックしてるのか問い詰めたい。
「ご無事で何よりです……! 会談のこと、新聞に出てましたよ! “二柱の聖女、神意を交わす”って!」
「うわ、それもうタイトル詐欺のレベルだな……」
「あと、あと、“東の聖女は西の聖女に膝を折った”とも……!」
「それは絶対折れてない!」
帰ってきたばかりなのに、私の知らないところで**“奇跡の合戦”みたいな報道**がされていたらしい。
国同士の信仰って、ほんとにもう“戦争以外の戦争”だよね。だから文明ってやつは嫌なんだ。
でも、それだけでは終わらなかった。
「クラリス、最近このあたりに“東の聖女様の言葉”って書かれた紙、貼られてなかった?」
「あ……はい。村の入口に数枚。あと、子どもたちが“エレオノーラ様式の祈り”を真似していて……」
「え、ちょっと待って。いつの間に?」
「たぶん、巡礼者の方が持ち込んで……でも、あの、私はマリア様だけを……!」
やめてその顔、重い! 信仰の重みはバランスが命なの!
「……ライオネル、これどう見る?」
私は、壁にもたれていた彼に声をかけた。
ライオネルは腕を組んだまま、目を閉じていたが、ひと言だけつぶやいた。
「――“多神化”が始まっているな」
その響きは、静かに、だが確かに重かった。
「人々は、“本物”と“本物らしさ”の両方を求めている。
あんたは“近くにいる救い”として信じられ、エレオノーラは“遠くにある理想”として信じられている。
共に存在してしまった今、その信仰は混ざり、やがて……割れるかもしれない」
……なるほど。
“どちらも神に近い”なら、それは共存できる。
でも、“神の姿が違う”と気づいた瞬間、人は選びたくなる。
どちらが正しいのか。
どちらが神の言葉を語っているのか。
「……私は、間違いなく“偽物”なんだけどね」
「だが、人は“それでも信じたい”と思ってる。そこに問題がある」
問題。そう、問題。
これまでは、ただ“ありがたがられてる”だけだった。
でも今は、“信仰の基準”が揺れはじめている。
人は、選びはじめる。
“聖女マリア”を信じるか、“聖女エレオノーラ”を信じるか。
そして私は、ただの詐欺師で。
選ばれる理由なんて、ほんとはどこにもない。
──でも、だからこそ。
私はもう、“選ばれた”ことから逃げられない。
「……とりあえずクラリス、貼り紙の数を調べて、場所もリストアップして。祈りを教えてる人がいたら、接触禁止じゃなくて対話優先で」
「はっ、はい!」
「ライオネル、巡礼者の流れ追える? 教会筋の情報も」
「やってみる。だが……お前が“本気”になる理由は?」
私は肩をすくめて、笑った。
「そろそろさ、“偽物”がどこまで本気出せるか、見てみたいだけだよ」
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