【完結】前世で教祖(ペテン師)してましたが、転生後「聖女」になって崇められてます

藤原遊

文字の大きさ
12 / 41

第11話:信じる相手が増えるほど、世界はややこしくなる

しおりを挟む
「おかえりなさいませ、マリア様……!」

クラリスが花束を抱えて飛びついてきた。

その勢いで私は花びらに埋もれそうになった。
彼女の目は相変わらず潤んでいて、いやもうマジでどこに水分そんなにストックしてるのか問い詰めたい。

 

「ご無事で何よりです……! 会談のこと、新聞に出てましたよ! “二柱の聖女、神意を交わす”って!」

「うわ、それもうタイトル詐欺のレベルだな……」

「あと、あと、“東の聖女は西の聖女に膝を折った”とも……!」

「それは絶対折れてない!」

 

帰ってきたばかりなのに、私の知らないところで**“奇跡の合戦”みたいな報道**がされていたらしい。
国同士の信仰って、ほんとにもう“戦争以外の戦争”だよね。だから文明ってやつは嫌なんだ。

 

でも、それだけでは終わらなかった。

 

「クラリス、最近このあたりに“東の聖女様の言葉”って書かれた紙、貼られてなかった?」

「あ……はい。村の入口に数枚。あと、子どもたちが“エレオノーラ様式の祈り”を真似していて……」

「え、ちょっと待って。いつの間に?」

「たぶん、巡礼者の方が持ち込んで……でも、あの、私はマリア様だけを……!」

 

やめてその顔、重い! 信仰の重みはバランスが命なの!

 

「……ライオネル、これどう見る?」

私は、壁にもたれていた彼に声をかけた。

ライオネルは腕を組んだまま、目を閉じていたが、ひと言だけつぶやいた。

 

「――“多神化”が始まっているな」

 

その響きは、静かに、だが確かに重かった。

 

「人々は、“本物”と“本物らしさ”の両方を求めている。
あんたは“近くにいる救い”として信じられ、エレオノーラは“遠くにある理想”として信じられている。
共に存在してしまった今、その信仰は混ざり、やがて……割れるかもしれない」

 

……なるほど。

“どちらも神に近い”なら、それは共存できる。

でも、“神の姿が違う”と気づいた瞬間、人は選びたくなる。

どちらが正しいのか。
どちらが神の言葉を語っているのか。

 

「……私は、間違いなく“偽物”なんだけどね」

「だが、人は“それでも信じたい”と思ってる。そこに問題がある」

 

問題。そう、問題。

これまでは、ただ“ありがたがられてる”だけだった。

でも今は、“信仰の基準”が揺れはじめている。

 

人は、選びはじめる。
“聖女マリア”を信じるか、“聖女エレオノーラ”を信じるか。

 

そして私は、ただの詐欺師で。
選ばれる理由なんて、ほんとはどこにもない。

 

──でも、だからこそ。

私はもう、“選ばれた”ことから逃げられない。

 

 

「……とりあえずクラリス、貼り紙の数を調べて、場所もリストアップして。祈りを教えてる人がいたら、接触禁止じゃなくて対話優先で」

「はっ、はい!」

「ライオネル、巡礼者の流れ追える? 教会筋の情報も」

「やってみる。だが……お前が“本気”になる理由は?」

 

私は肩をすくめて、笑った。

 

「そろそろさ、“偽物”がどこまで本気出せるか、見てみたいだけだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

処理中です...