【完結】前世で教祖(ペテン師)してましたが、転生後「聖女」になって崇められてます

藤原遊

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第13話:どちらが“正しい”かを争うとき、信仰は嘘になる

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「エレオノーラ様の祈りの方が神様に届くって、本で読んだもん!」

「でもマリア様の言葉で、おばあちゃんの病気が治ったもん!」

 

村の広場で、子どもたちの声が割れた。
祈りの言葉をめぐって、**小さな“信仰戦争”**が始まっていた。

言い争いは次第に白熱し、大人たちも口を挟み始める。

「いやいや、マリア様の方が現実に救ってるじゃろ」
「でも、神の名を使わない祈りなんて、信仰とは言えないでしょ……?」

 

……そうだよね。

“奇跡”は現実を救うけど、“教義”は心の安全を守る。

どちらも信じる理由になる。

そしてそれは、同時に**「どちらを選ぶか」**という空気を生んでしまう。

 

「マリア様……どうなさいますか?」

クラリスが不安そうに私を見上げた。

その瞳には、“自分の信仰が誰かのせいで否定されるかもしれない”という、素直な恐れが浮かんでいた。

 

私は一歩、子どもたちの輪の中へ進み出た。

そして、ゆっくりしゃがんで、どちらとも言えない子の肩をとんと叩いた。

 

「ねえ、君はどっちの祈りが、好き?」

 

その子は、少しだけ首をかしげて――

「……どっちも、いいと思う。でも、お友達とケンカしたくない」

 

……それが、たぶん答えだ。

 

「ありがとう。うん、すごくいい答えだと思う。
たぶんね、祈りって“どっちが正しいか”より、“誰と祈りたいか”の方が大事なんだと思うよ」

 

そう言って私は、手を合わせた。

エレオノーラの形式でも、私の言葉でもなく、ただ“静かに誰かの幸せを願う”祈りの形で。

 

子どもたちは、少し戸惑ったけど……やがて、真似をした。

誰かの名前を、声に出さず、ただ胸の中で唱えて。

一緒に、目を閉じた。

 

祈りのかたちはバラバラだったけど、
その時間だけは、誰も争っていなかった。

 

 

──その夜。

ライオネルがぽつりと漏らした。

「“正しさ”ではなく、“共に祈れる空気”を作る。……それは、お前にしかできない芸当かもしれないな」

 

私は苦笑いで返した。

「うまくいく保証なんてないけどね。
でも、“誰かを選ばない信仰”を作れたら、少しは楽になれる人もいるかもしれないじゃない?」

 

たぶんそれは、聖女のやり方ではない。

でも、私にできるのは――**“偽物として、祈り方を壊すこと”**だけなんだ。

 

次の日、村の掲示板にひとつだけ、新しい紙を貼った。

そこにはこう書かれていた。

 

「祈りたい人は、どんな言葉でもいいから、毎週水曜に広場においで。
神様の名前があってもなくても、
声に出しても、心の中でも、どんな形でも。
それを、私が全部、まとめて“神様っぽいもの”にしてあげる。」

 

それは祈りじゃない。
信仰でも、教義でもない。

でも――
たぶん、そういうものを必要としている人たちの、拠り所になる気がした。
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