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第17話:本物じゃないのに、名前だけは残るらしい
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「……以上の協議をもって、“マリア=フェルツィア殿”の聖女としての地位は、特例処理とする」
えーっと、それ、日本語で言うと――どうなるんだっけ。
“不問”でもなければ、“正式な免職”でもない。
新設された肩書き、「特例聖女」。
名誉職? 便利屋? どっちにしろ、あまり誉められた立場じゃない。
一応“奇跡を使ってもいい人”には認定されて、
でも“教義的な発言や行動は一部制限”という条件つき。
……ようするに。
「お前のやり方は気に入らないけど、奇跡だけは便利だから黙認な」ってことだ。
うわー、神様の政治力、やっぱすごい。
審問会場を出たところで、私はこっそりクラリスにぼやいた。
「つまり、“神のご機嫌に合わない聖女だけど、役に立つから泳がせとけ”ってこと?」
クラリスは、かろうじて笑っていた。
それでも、その目には涙が浮かんでて。
それでも、それでも、彼女はまっすぐ私を見ていた。
「でも……処分じゃなかっただけ、よかったです……!」
ああ、もう。
そのまなざしは、“信じてよかった”って顔だった。
まるで、自分の信仰を試験にかけられて、なんとか合格点だった子みたいな、そんな目。
外に出ると、広場がざわついていた。
人が、いた。
こんなに? って思うくらい、いた。
村の顔なじみ。
旅の途中で言葉を交わした誰か。
噂をたどってやってきた、名も知らぬ信者の家族。
誰も声はかけなかった。
でも、その場に立っていた。
“信じている”という目で、私を見ていた。
そして、一番最初に言葉をくれたのは――あの子だった。
前に、私の話で泣き止んでくれた、あの小さな男の子。
彼が、ちょっと照れくさそうに、手を合わせてこう言った。
「また、“なんかすごいこと”してください」
……うん。
その曖昧さ、助かる。
「奇跡」とか「癒し」じゃなくて、“なんかすごいこと”。
言語化しない信頼って、たまに救いになる。
私は小さくうなずいて、少しだけ背筋を伸ばして言った。
「……任せなさい」
その言葉が、自分の中から出てきたとき、
ほんの少しだけ――ああ、私はこの立場でも、立てるな、って思えた。
その夜。
教会の書庫の一角で、ある書状が交わされていた。
『“特例”はあくまで暫定的処置です。
“聖女の名を借りた自由信仰”は教義への脅威であり、
今後の議題として正式な“異端認定”に移行するべきです』
――高司祭 ロセリオ・ヴェリウス
なるほどね。やっぱり、そうくるか。
奇跡が、制度の外で使えるのは不都合なんだろう。
信仰が、人のほうを向くのも、不都合なんだろう。
私は、“偽物”として立ち続けることを選んだ。
その代わりに、“神の下”には戻れなくなった。
でも、それでも。
誰かの隣で祈るくらいなら、まだ、できる。
それが“本物の奇跡”じゃなくても。
誰かが“信じたい”って顔で私を見る限り――
私は、その隣に立とうと思う。
えーっと、それ、日本語で言うと――どうなるんだっけ。
“不問”でもなければ、“正式な免職”でもない。
新設された肩書き、「特例聖女」。
名誉職? 便利屋? どっちにしろ、あまり誉められた立場じゃない。
一応“奇跡を使ってもいい人”には認定されて、
でも“教義的な発言や行動は一部制限”という条件つき。
……ようするに。
「お前のやり方は気に入らないけど、奇跡だけは便利だから黙認な」ってことだ。
うわー、神様の政治力、やっぱすごい。
審問会場を出たところで、私はこっそりクラリスにぼやいた。
「つまり、“神のご機嫌に合わない聖女だけど、役に立つから泳がせとけ”ってこと?」
クラリスは、かろうじて笑っていた。
それでも、その目には涙が浮かんでて。
それでも、それでも、彼女はまっすぐ私を見ていた。
「でも……処分じゃなかっただけ、よかったです……!」
ああ、もう。
そのまなざしは、“信じてよかった”って顔だった。
まるで、自分の信仰を試験にかけられて、なんとか合格点だった子みたいな、そんな目。
外に出ると、広場がざわついていた。
人が、いた。
こんなに? って思うくらい、いた。
村の顔なじみ。
旅の途中で言葉を交わした誰か。
噂をたどってやってきた、名も知らぬ信者の家族。
誰も声はかけなかった。
でも、その場に立っていた。
“信じている”という目で、私を見ていた。
そして、一番最初に言葉をくれたのは――あの子だった。
前に、私の話で泣き止んでくれた、あの小さな男の子。
彼が、ちょっと照れくさそうに、手を合わせてこう言った。
「また、“なんかすごいこと”してください」
……うん。
その曖昧さ、助かる。
「奇跡」とか「癒し」じゃなくて、“なんかすごいこと”。
言語化しない信頼って、たまに救いになる。
私は小さくうなずいて、少しだけ背筋を伸ばして言った。
「……任せなさい」
その言葉が、自分の中から出てきたとき、
ほんの少しだけ――ああ、私はこの立場でも、立てるな、って思えた。
その夜。
教会の書庫の一角で、ある書状が交わされていた。
『“特例”はあくまで暫定的処置です。
“聖女の名を借りた自由信仰”は教義への脅威であり、
今後の議題として正式な“異端認定”に移行するべきです』
――高司祭 ロセリオ・ヴェリウス
なるほどね。やっぱり、そうくるか。
奇跡が、制度の外で使えるのは不都合なんだろう。
信仰が、人のほうを向くのも、不都合なんだろう。
私は、“偽物”として立ち続けることを選んだ。
その代わりに、“神の下”には戻れなくなった。
でも、それでも。
誰かの隣で祈るくらいなら、まだ、できる。
それが“本物の奇跡”じゃなくても。
誰かが“信じたい”って顔で私を見る限り――
私は、その隣に立とうと思う。
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