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第23話:正しさの中で、誰かが泣いてるのを見た
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俺は、“信仰”という言葉を、剣で守ってきた。
いや、もっと正確に言えば――
“信仰制度”のほうだ。
形を守るため、教義を支えるため、俺は何度も剣を抜いた。
だが今、目の前で。
一人の少女が、震える手で祈りを組み、
「ありがとう」と初めて口にしたのを見て。
その全ての“正しさ”が、急に色褪せて見えた。
マリア様は、矛盾している。
教会の制度には逆らい、
信者たちの常識も覆し、
それでも“救われた目をした者”が彼女のまわりに増え続ける。
矛盾は、論理じゃ測れない。
だが、俺はそれを目にした。
言葉じゃ説明できない“変化”を、何度も。
「ライオネルさん。これ、どう思います?」
クラリスが封書を差し出してきた。
開ける前から嫌な予感しかしない。
案の定――教会内からの“異動命令”。
『護衛対象の活動が教会と対立的と判断される場合、任務を一時凍結し、
指定本部への帰還を要請する。従わぬ場合、剣士としての地位も再検討する』
つまり、“もうそろそろ降りろ”という、やんわりとした圧力だ。
いや、やんわりというには、妙に鋭利だ。
俺はゆっくり封を閉じた。
「マリア様には、話さない方がいいでしょう」
「でも……いいんですか?」
クラリスが不安げに尋ねてくる。
「俺の任務は、まだ終わってない。
“護衛対象”が“異端”かどうかなんて、上が決めることだ。
俺は“あの人の目”を見て、剣を抜くかどうか決めてる」
そう答えてから、ふと我ながら妙なことを言ったなと思った。
だが、嘘ではない。
今の俺は、“教会の剣”ではなく――
“ひとりの祈る者の隣にいる剣”でありたいと思っている。
その日の夜、礼拝堂の灯を見て、俺はふらりと立ち寄った。
レティシアが、小さな子どもたちに“祈り方”を教えていた。
……いや、正確には“自由に願う方法”を。
「願いはね、口にしても、しなくてもいいの。
でも、“自分に聞こえるように”言うと、ちゃんと届く気がするの」
俺は、それを黙って見ていた。
そして誰にも聞かれないよう、小さく、声にした。
「……今だけでいい。
あの人が、静かに笑える日が、もう少し長く続きますように」
人生で初めての祈りだった。
それは、誰に聞かれたくもない願いだった。
でも、願ってしまったのなら――もう、戻れないのかもしれない。
いや、もっと正確に言えば――
“信仰制度”のほうだ。
形を守るため、教義を支えるため、俺は何度も剣を抜いた。
だが今、目の前で。
一人の少女が、震える手で祈りを組み、
「ありがとう」と初めて口にしたのを見て。
その全ての“正しさ”が、急に色褪せて見えた。
マリア様は、矛盾している。
教会の制度には逆らい、
信者たちの常識も覆し、
それでも“救われた目をした者”が彼女のまわりに増え続ける。
矛盾は、論理じゃ測れない。
だが、俺はそれを目にした。
言葉じゃ説明できない“変化”を、何度も。
「ライオネルさん。これ、どう思います?」
クラリスが封書を差し出してきた。
開ける前から嫌な予感しかしない。
案の定――教会内からの“異動命令”。
『護衛対象の活動が教会と対立的と判断される場合、任務を一時凍結し、
指定本部への帰還を要請する。従わぬ場合、剣士としての地位も再検討する』
つまり、“もうそろそろ降りろ”という、やんわりとした圧力だ。
いや、やんわりというには、妙に鋭利だ。
俺はゆっくり封を閉じた。
「マリア様には、話さない方がいいでしょう」
「でも……いいんですか?」
クラリスが不安げに尋ねてくる。
「俺の任務は、まだ終わってない。
“護衛対象”が“異端”かどうかなんて、上が決めることだ。
俺は“あの人の目”を見て、剣を抜くかどうか決めてる」
そう答えてから、ふと我ながら妙なことを言ったなと思った。
だが、嘘ではない。
今の俺は、“教会の剣”ではなく――
“ひとりの祈る者の隣にいる剣”でありたいと思っている。
その日の夜、礼拝堂の灯を見て、俺はふらりと立ち寄った。
レティシアが、小さな子どもたちに“祈り方”を教えていた。
……いや、正確には“自由に願う方法”を。
「願いはね、口にしても、しなくてもいいの。
でも、“自分に聞こえるように”言うと、ちゃんと届く気がするの」
俺は、それを黙って見ていた。
そして誰にも聞かれないよう、小さく、声にした。
「……今だけでいい。
あの人が、静かに笑える日が、もう少し長く続きますように」
人生で初めての祈りだった。
それは、誰に聞かれたくもない願いだった。
でも、願ってしまったのなら――もう、戻れないのかもしれない。
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