【完結】前世で教祖(ペテン師)してましたが、転生後「聖女」になって崇められてます

藤原遊

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第24話:信じる場を守るために、もうただの剣ではいられない

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「正式に……ですか」

クラリスの声が、まるで誰かの悪夢を、ゆっくり音読してるみたいだった。

 

目の前の紙には、こんな文言が並んでいる。

 

『本通達をもって、ライオネル=クローヴァの剣士資格を一時剥奪する』
『信仰秩序の維持に抵触する対象への常任的な従属を不適切と判断し、
該当任務からの離脱および帰還を命ず』
『代替措置として、“聖務騎士団”から新たな護衛派遣が予定されている』

 

要するに、こうだ。

「異端に肩入れするなら、お前もセットで異端ね」

……やれやれ、制度ってのは、本当に器用に人を切る。

 

「……これが、中央のやり方か」

ライオネルは低く吐き出した。

怒っているようには見えなかった。
どちらかといえば、“なるほどね”って顔。

すごく遠くの景色でも見てるみたいな、そんな目。

 

「剥奪されても、あなたはあなたでしょ?」

私は、できるだけあっさりと言った。

 

「肩書きって、“誰に剣を振るうか”を決めるためのものでさ。
“誰を守るか”を決めるのは、自分だよ。そうじゃない?」

 

ライオネルは、黙ったまま。

でも、窓の向こうに目をやったその視線は、ほんの少しだけ優しかった。

 

その先では、今日も祈祷会が開かれていた。

……いや、“会”っていうほど固くない。

もうあれは、“ただの居場所”だ。

 

子どもたちがわいわい集まってて、
旅の女の人が、ちょっと疲れた足を休めてて、
近くにいた年配の男の人が、持ってたパンを何気なく分けてた。

 

誰かが説教してるわけでもない。

でも、全員が“いていいんだ”って顔をしていた。

 

「……祈ることを、誰かに“許可”される時代って、もう終わってよくない?」

私は、誰にともなくそう呟いた。

 

「“誰が神に近いか”じゃなくて、“誰が隣にいるか”で信仰は生まれていい。
……私はね、そういう祈りを守りたいの」

 

 

その夜。村の入口に、馬車が止まった。

銀の装飾をつけた黒い外套の騎士たちが、そこから静かに降りてくる。

 

胸元の紋章は、“神の剣”――聖務騎士団。

形式に忠実で、信仰に厳格。
まあ、中央が“制度の威光”を示したいときの定番キャストだ。

 

「教会の命により、特例聖女マリア=フェルツィアの活動記録および信仰状況の確認に参上した」

……はいはい、おつかれさまです。

冷たい声が夜の空気を裂くと、その背後からもう一人――
無言のまま現れた覆面の“監察筆記官”。

記録の化け物だ。空気より厳密に空気を読むやつ。

 

ああ、いよいよ来たのね。

この村の、自由すぎる祈りを――
“秩序”って名前の絵の具で塗り直しに来たってわけだ。

 

私は、ため息をひとつだけ吐いた。

それから、そっと手を組んで、空に祈った。

 

「……神様。今回は、私の方が信仰、持ってますからね?」

 

たぶん、あんたが一番驚いてると思うよ。
私が、祈ってることに。
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