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第二部 辺境の地
第15話 ダンジョン攻略
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森奥の入口は冷たい瘴気に覆われていた。
一歩踏み入れると、空気の質が変わる。
「……ここ、普通の巣窟じゃない」
リリアが眉を寄せる。
「罠の匂いもするな。お前ら、足元見るなよ」
シグルドが最前列で低く告げた。
進んだ直後だった。
シグルドが手を素早く上げる。
「止まれ。そこ、落ちる」
全員が一瞬で静止する。
シグルドはしゃがみ、床を軽く叩いた。
ぱき、と石が割れ、薄皮一枚の“偽床”が崩れた。
「うわ……!」
リリアが息をのむ。
「よく気づいたな」
レオンが感心したように言う。
「魔物の匂いが急に薄くなった。こういう仕掛けは“誘導”の可能性が高い」
説明も短く、的確だ。
これが斥候の技。
「シグルドがいると安心できるわ」
エリシアが言うと、彼は視線を逸らし肩をすくめた。
「仕事だ。先を急ぐぞ」
隠し通路に続く壁際で、シグルドが再び立ち止まる。
「ここ、風の流れがおかしい。……押すぞ」
彼が石に触れると、壁が横に滑り、暗い通路が顔を出した。
「見事ね」
リリアが微笑む。
「斥候は“道を見つけるのが仕事”だ」
通路を抜けると、広間に魔物が群れていた。
「来るぞ!」
レオンが剣を構え、エリシアが聖結界を展開する。
「レオン、右側をお願い」
「任せろ!」
二人の動きは自然と噛み合い、前衛を押し返す。
背後からリリアの魔法が飛ぶ。
「凍りつけ!」
氷槍が魔物を貫く。
「ハウンド、前へ!」
「了解!」
ハウンドが盾で突撃し、前線を支える。
その間、シグルドは素早く影に潜り、魔物の背後へ回り込む。
短剣が閃き、敵の動きが止まる。
「後方制圧完了。前だけ見ろ!」
「助かるわ、シグルド!」
エリシアが声を上げる。
◆
ダンジョン外では、ミアが結界の中心で祈っていた。
「……皆さま、どうかお守りください……」
祈りは薄い光となり、周囲の結界を強める。
小型の魔物が外から押し寄せるが、結界は破れない。
「エリシア様……ご無事で……」
強い力じゃない。
でもその祈りは、確かに仲間を支えていた。
◆
広間の魔物を片付けた瞬間、レオンが息を吐いた。
「エリシア、感じるか?」
「ええ……奥に“核”があるわ。まだ動いてる」
深く、古い瘴気がこちらを待っている。
「――行きましょう。ここが本番よ」
決意が静かに全員の胸へと落ちた。
一歩踏み入れると、空気の質が変わる。
「……ここ、普通の巣窟じゃない」
リリアが眉を寄せる。
「罠の匂いもするな。お前ら、足元見るなよ」
シグルドが最前列で低く告げた。
進んだ直後だった。
シグルドが手を素早く上げる。
「止まれ。そこ、落ちる」
全員が一瞬で静止する。
シグルドはしゃがみ、床を軽く叩いた。
ぱき、と石が割れ、薄皮一枚の“偽床”が崩れた。
「うわ……!」
リリアが息をのむ。
「よく気づいたな」
レオンが感心したように言う。
「魔物の匂いが急に薄くなった。こういう仕掛けは“誘導”の可能性が高い」
説明も短く、的確だ。
これが斥候の技。
「シグルドがいると安心できるわ」
エリシアが言うと、彼は視線を逸らし肩をすくめた。
「仕事だ。先を急ぐぞ」
隠し通路に続く壁際で、シグルドが再び立ち止まる。
「ここ、風の流れがおかしい。……押すぞ」
彼が石に触れると、壁が横に滑り、暗い通路が顔を出した。
「見事ね」
リリアが微笑む。
「斥候は“道を見つけるのが仕事”だ」
通路を抜けると、広間に魔物が群れていた。
「来るぞ!」
レオンが剣を構え、エリシアが聖結界を展開する。
「レオン、右側をお願い」
「任せろ!」
二人の動きは自然と噛み合い、前衛を押し返す。
背後からリリアの魔法が飛ぶ。
「凍りつけ!」
氷槍が魔物を貫く。
「ハウンド、前へ!」
「了解!」
ハウンドが盾で突撃し、前線を支える。
その間、シグルドは素早く影に潜り、魔物の背後へ回り込む。
短剣が閃き、敵の動きが止まる。
「後方制圧完了。前だけ見ろ!」
「助かるわ、シグルド!」
エリシアが声を上げる。
◆
ダンジョン外では、ミアが結界の中心で祈っていた。
「……皆さま、どうかお守りください……」
祈りは薄い光となり、周囲の結界を強める。
小型の魔物が外から押し寄せるが、結界は破れない。
「エリシア様……ご無事で……」
強い力じゃない。
でもその祈りは、確かに仲間を支えていた。
◆
広間の魔物を片付けた瞬間、レオンが息を吐いた。
「エリシア、感じるか?」
「ええ……奥に“核”があるわ。まだ動いてる」
深く、古い瘴気がこちらを待っている。
「――行きましょう。ここが本番よ」
決意が静かに全員の胸へと落ちた。
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