婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊

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第二部 辺境の地

第16話 ダンジョン踏破

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最奥は、空気そのものが濁っていた。
瘴気が壁を舐め、黒い脈が鼓動するように揺れる。

「……来る」
エリシアは息を整え、杖を構えた。

次の瞬間、闇の塊が姿を現した。
巨大な影狼のような魔物。
魔王軍の残滓が濃く凝った“瘴気の核”だ。

「俺が引きつける! エリシア、準備を!」
レオンが一気に駆ける。

「はい!」

レオンの剣が闇を裂き、エリシアの光が後ろから重なる。
斥候のシグルドは影に潜り、魔物の動きを止める隙を作る。

「動きを鈍らせた。今だ!」
シグルドの声に、リリアが魔法を重ねる。

「氷鎖、拘束!」

ハウンドが前に出て、長い腕で魔物の突進を受け止めた。

「レオン、行けるぞ!」
「任された!」

エリシアは聖力を一気に高める。
胸の奥で魔力が弾け、光が周囲を満たす。

「――浄化します!」

光がレオンの剣へ流れ込む。
彼の剣が白金に輝き、闇を切り裂く。

「はあっ!」

一閃。
魔物の叫びが瘴気を吹き飛ばし、その巨体が崩れ落ちた。

闇の核が割れ、光の粒となって消える。
同時にダンジョン全体に広がっていた瘴気が引き、空気が軽くなる。

「終わった……!」
リリアが肩で息をつき、ハウンドが微笑む。

エリシアは杖を握ったまま、静かに浄化の余波を確認する。

「これで、このダンジョンは安全になります。
しばらくは魔物も弱体化したままのはず」

「じゃあ、一般の冒険者でも入れるってことか?」
レオンが剣を拭いながら問う。

「ええ。危険な“魔王残滓”だけ落としましたから」



奥の部屋には、宝箱が三つ。
古い魔導書。
希少な鉱石。
魔物の核を加工した素材。

どれも、領地を立て直す大きな資源になる。

「……本当に、あなたが来てくれてよかった」
エリシアが言うと、レオンは照れたように笑った。

「俺の居場所は、もうここしかないさ」

シグルドは何も言わず、ただ荷物の整理をしていた。
横顔は淡々としているが、その背中はどこか安堵している。



洞窟を出ると、ミアが駆け寄ってくる。

「皆さま……! 本当に、ご無事で……!」

エリシアはミアの手をとり、優しく笑った。

「ただいま、ミア。これで、この土地は一歩進めるわ」

村人たちが遠くから歓声を上げ、彼らを迎えに走ってくる。

瘴気は晴れ、新たな資源と希望が芽吹いた。
ダンジョンはもう脅威ではなく、領地の“財宝”になる。

そしてエリシアは確信する。

――領地は豊かになる。
ここから本当の開拓が始まる。
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