婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊

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第三部 世界と対立

第24話 勇者の選択

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辺境の空気が、朝からざわついていた。
砂煙を巻き上げて進むのは、妹 リュシア と王太子 ヘルマン。
武装兵を従え、まるで“罪人を断罪しに来た側”の態度だ。

リュシアは馬上から冷たい笑みを浮かべる。

「姉さま。国家への反逆行為……今日こそ裁かれるのよ」

エリシアは前に出て、一切怯えない声で返す。

「反逆者の定義を捻じ曲げてるのは、そちらです」

その瞬間、村人の怒りが一気に爆発した。

「どの口が言うんだ!」
「村が滅びそうだって訴えた時、避難すらさせてくれなかったのは王都だろ!」

兵たちは明らかに動揺し、ヘルマンへ不安げな視線を送る。
背後から聞こえるヒソヒソ声はエリシアにも届いた。

「(勇者と聖女だぞ……国軍をまとめても勝てない魔族を蹴散らした連中だ)」
「(四天王を全て撃破して魔王城へ突っ込んだんだ……四天王一人に勝てなかった俺らが何できるんだよ)」

完全に士気が死んでいた。

リュシアは苛立ちを隠さず叫ぶ。

「黙りなさい! 反逆者はそっちよ!
 聖女と勇者が武器を向け――」

「それは違うな」

静かな声が、前へ進み出た。
村の教会で“監査”の名目で滞在していた 上級司祭クレイン だ。

神に誓い、嘘をつけない“神誓持ち”。

「先に武器を抜いたのは、そちらだ。教会の命令で神誓していた私が見ている」

リュシアの顔が一気に青ざめた。

教会は国とは別の組織だ。
複数の国に跨る組織であるため、一国の権力に捕らわれることは無く、王太子妃程度の一存でどうにかできるものではない。

よりによって、相手は監査を任されるほどの上級司祭。
どこかの国の貴族の生まれであることは確実だ。教会と彼の出身国、両方から睨まれることになる。

「な、なによ……!」

「真実はひとつだ、リュシア様。
 よって、この断罪は成立しない。ヘルマン殿下も、理解されよ」

ヘルマンは歯を食いしばり、睨み返すしかない。

その空気を切り裂いたのは──レオンだった。

エリシアの側に立ち、はっきりと宣言する。

「エリシア。俺は……君を守り続けたい。
 誰に何と言われても、君の味方でいたい」

エリシアは一瞬、息を呑んだ。

「レオン……?」

「隠さない。俺は君を愛している。
 王族としてではなく、一人の男として──君を選ぶ」

胸が熱くなる。
視線を合わせただけで、心が震えた。

エリシアは、ほんの少しだけ勇気を出す。

「私も……レオンの隣が、好きです」

その言葉が落ちた瞬間。

リュシアは悲鳴のような声を上げた。

「どうして……!
 なんで姉さまばっかり!?
 私より出来て、皆に褒められて……勇者からまで愛されるなんて……!」

ヘルマンは顔を歪め、低く言う。

「……撤収するぞ、リュシア」

兵たちも、司祭の証言が出た以上、強行はできない。

リュシアは涙混じりに叫びながら、ヘルマンに引きずられるようにして退却していった。

村には、静かな余韻と少しだけ甘やかな風だけが残ったのだった。
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