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第3章 魔王城再訪
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魔王城は、以前と変わらずそこにあった。
黒い城壁は威圧的で、近づく者を拒むようにそびえ立っている。それでもリュミエールは足を止めなかった。同行者はいない。武器を掲げることもなく、単身で城門をくぐる。
空気が、わずかに張り詰めた。
魔力の流れが、こちらを探る。明確な警戒だ。前にここを訪れた時、彼女は敵だった。その記憶が、城全体に刻まれているのだろう。
城内に入った瞬間、荷を抱えた下働きの魔族と目が合った。相手は一瞬きょとんとした顔をし、次の瞬間、目を見開いてこちらを二度見する。
「……聖女?」
呟くような声を残し、その魔族は走って逃げていった。
同じ反応が、何度も続く。視線が合い、動きが止まり、そして逃げる。誰一人、武器を取らない。誰も、立ち向かおうとしない。
それを見て、リュミエールは歩きながら思い出していた。
前にここへ来た時、戦いを挑んできたのは戦闘職の魔族ばかりだった。四天王や近衛、前線に立つ者たち。彼らは例外なく、戦えない魔族を背後に置き、自分たちが盾になる位置に立っていた。
逃げる者を責めない。無理に戦わせない。役割を理解し、守るべき存在をきちんと守る。
「……人間より」
ぽつりと、独り言が零れる。
「光の女神の教えを、よほど忠実に守っているのかもしれないわね」
弱き者を守ること。無意味な犠牲を出さないこと。それらは本来、人間の側が誇っていた理念だったはずだ。それを、魔族の方が当たり前のように実践している。
「種として……完成してるわ」
感嘆は、偽りのないものだった。
恐れられているのは分かる。それでも城内は混乱していない。悲鳴はあっても、秩序は保たれている。どこかで走る足音が重なり、報告が上がっているのだろう――聖女が、再び魔王城に現れたと。
リュミエールは歩みを止めない。
ここに来たのは、戦うためではない。確かめるためでもない。話をするためだ。
視線の先に、玉座へと続く通路が見える。外套を翻しながら、彼女はその奥へと進んでいった。
警戒されるのは当然だ。恐れられるのも、受け入れている。それでも、この城の在り方が、自分の見立てを裏切っていないことに、静かな確信があった。
世界を救った聖女は、再び魔王城の中心へ向かう。
今度は、剣を抜かずに。
黒い城壁は威圧的で、近づく者を拒むようにそびえ立っている。それでもリュミエールは足を止めなかった。同行者はいない。武器を掲げることもなく、単身で城門をくぐる。
空気が、わずかに張り詰めた。
魔力の流れが、こちらを探る。明確な警戒だ。前にここを訪れた時、彼女は敵だった。その記憶が、城全体に刻まれているのだろう。
城内に入った瞬間、荷を抱えた下働きの魔族と目が合った。相手は一瞬きょとんとした顔をし、次の瞬間、目を見開いてこちらを二度見する。
「……聖女?」
呟くような声を残し、その魔族は走って逃げていった。
同じ反応が、何度も続く。視線が合い、動きが止まり、そして逃げる。誰一人、武器を取らない。誰も、立ち向かおうとしない。
それを見て、リュミエールは歩きながら思い出していた。
前にここへ来た時、戦いを挑んできたのは戦闘職の魔族ばかりだった。四天王や近衛、前線に立つ者たち。彼らは例外なく、戦えない魔族を背後に置き、自分たちが盾になる位置に立っていた。
逃げる者を責めない。無理に戦わせない。役割を理解し、守るべき存在をきちんと守る。
「……人間より」
ぽつりと、独り言が零れる。
「光の女神の教えを、よほど忠実に守っているのかもしれないわね」
弱き者を守ること。無意味な犠牲を出さないこと。それらは本来、人間の側が誇っていた理念だったはずだ。それを、魔族の方が当たり前のように実践している。
「種として……完成してるわ」
感嘆は、偽りのないものだった。
恐れられているのは分かる。それでも城内は混乱していない。悲鳴はあっても、秩序は保たれている。どこかで走る足音が重なり、報告が上がっているのだろう――聖女が、再び魔王城に現れたと。
リュミエールは歩みを止めない。
ここに来たのは、戦うためではない。確かめるためでもない。話をするためだ。
視線の先に、玉座へと続く通路が見える。外套を翻しながら、彼女はその奥へと進んでいった。
警戒されるのは当然だ。恐れられるのも、受け入れている。それでも、この城の在り方が、自分の見立てを裏切っていないことに、静かな確信があった。
世界を救った聖女は、再び魔王城の中心へ向かう。
今度は、剣を抜かずに。
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