世界を救った聖女ですが、浮気されたので魔王と手を組みます

藤原遊

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第3章 魔王城再訪

3-4

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魔王の間へ向かう通路で、竜族のバルザがふと足を止めた。

「正直に言う」

低く落ち着いた声で、背中越しにそう告げる。

「魔王城に、聖女が単身で来たと聞いた時はな……役目がないと思った」

その言葉に、リュミエールは表情を変えない。

「戦えないものを嬲る趣味は、俺にはない」

淡々とした言い方だった。
誇示も、威圧もない。
ただ、当たり前の価値観として述べている。

それを聞いて、リュミエールは小さく息を吐いた。

――やっぱり。

魔族は、真っ当だ。

思い出すのは、以前ここへ来た時のことだ。
騎士は付けられないと言われ、小さなナイフ一本で魔物を屠りながら、黙々と魔王城を目指した旅。

守る者は、いなかった。
守られる者も、いなかった。

「……あの時より、ずっと楽ね」

ぽつりと漏れた言葉は、誰に向けたものでもない。

寝台のある部屋に入ると、重い空気が漂っていた。
そこに横たわっているのが、魔王――ヴァルだ。

顔色は悪く、呼吸も浅い。

リュミエールは、首を傾げる。

「私、そこまで重傷にした覚えはないのだけれど……」

その言葉に、オーガのガルドが静かに首を振った。

「魔王様は、オーガ族じゃない」

短い説明だったが、十分だった。

人間より頑丈でも、
オーガほどの耐久力はない。

四天王が守り抜かなければ、
とっくに命は尽きていただろう。

リュミエールは、寝台の傍に立つ。

表情から、迷いが消えた。

「……では、始めるわね」

光が、彼女の足元から広がる。

回復魔法。
それも、単なる治癒ではない。

怪我を癒し、
内臓の損傷を修復し、
毒や呪いを洗い流す。

さらに、状態回復魔法を重ねる。
病気も、衰弱も、魔力枯渇も――すべて。

一切の躊躇なく、
一切の選別なく。

それが、リュミエールの本質だった。

光が収まる。

重かった空気が、嘘のように澄んだ。

次の瞬間。

「……は?」

間の抜けた声が、部屋に響く。

目を覚ました魔王ヴァルが、天井を見上げたまま、完全に状況を理解できていない顔をしている。

四天王たちは、一斉に息を呑んだ。

リュミエールは、少しだけ微笑む。

「おはよう、魔王様」

その言葉が、
この世界の常識を、静かに塗り替え始めていた。
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