世界を救った聖女ですが、浮気されたので魔王と手を組みます

藤原遊

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第4章 魔王軍再建と理解

4-2

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執務の合間、ふとした沈黙の中で、リリスが口を開いた。

「ねえ、ひとつ聞いていい?」

リュミエールは書類から顔を上げる。

「なにかしら」

サキュパスは、少しだけ真剣な表情をしていた。

「闇の神の加護を持つ私たち魔族に、嫌悪感はないの?」

試すような問いではない。
けれど、軽い質問でもなかった。

リュミエールは一瞬考え、それから正直に答える。

「嫌悪、はないわ」

ペンを置き、淡々と続ける。

「わかるのはね、どの辺りに強い人がいるか、とか、魔力の濃淡くらい。
危険かどうかは判断できるけど……それだけよ」

視線をリリスに戻す。

「善悪とか、好き嫌いとは、結びついていないわ」

リリスは、じっと彼女を見つめた。

サキュパスの瞳が、わずかに色を変える。
魅了でも、混乱でもない。
感情の奥を撫でるような、探る視線。

――読む。

心の底。
言葉になる前の感覚。
意図の歪み。

数秒後、リリスは目を瞬いた。

「……」

そして、小さく息を吐く。

「この人、嘘ついてない」

ぽつりと、確信を込めて。

その言葉に、周囲の空気がわずかに緩む。

リュミエールは首を傾げた。

「疑われていたの?」

「まあ、一応ね」

リリスは肩をすくめる。

「光の女神の聖女が、闇の神の眷属を前にして平気な顔してるんだもの。
普通は、どこかで引っかかる」

少し間を置いて、続ける。

「でも、あなたの中には“拒絶”がない。
警戒はあるけど、それは理性。
感情じゃない」

リュミエールは、ふっと微笑んだ。

「役に立つかどうか、危険かどうかは見るわ。
でも、属性で嫌ったりはしないもの」

「……そう」

リリスは短く返した。

それ以上、何も言わない。

けれどその一言には、
警戒を解いた合図が、はっきりと含まれていた。

サキュパスは、嘘を許さない。
同時に、真実を見抜いた相手には、無駄な疑いを向けない。

その沈黙の意味を、
リュミエールはきちんと理解していた。

こうしてまた一つ、
魔王軍の中で、
彼女は「信用できる存在」として認識されていく。
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