世界を救った聖女ですが、浮気されたので魔王と手を組みます

藤原遊

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第4章 魔王軍再建と理解

4-1

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「協力者、ということでいい」

魔王ヴァルは、玉座に深く腰掛けたまま言った。

「だが条件がある」

室内の空気が、少し引き締まる。

「君は、聖女としてではなく――一個人として迎える」

その言葉に、リュミエールは迷いなく頷いた。

「望むところよ」

称号も、義務も、ここには持ち込まない。
それは、彼女にとって解放でしかなかった。

こうして、魔王軍再建は静かに始まった。

まず着手したのは、戦力でも補給でもない。
書類だった。

「ちょっと待って、これ何?」

「こっちはどこに回せばいいの?」

謁見の間の一角が、即席の執務室と化している。
書類の山に埋もれていたのは、サキュパスのリリスと死霊術師のセイルだった。

「……フォーマット、作りましょう」

リュミエールの一言で、状況は一変した。

報告書、申請書、決裁書。
用途ごとに形式を統一し、処理の流れを明確にする。

「この書類はここ。
これは担当部隊へ回して。
最終確認だけ、あなたたちがやればいいわ」

仕事は、他の魔族たちへと割り振られていく。

結果、リリスとセイルは――
決裁だけを行う立場になった。

「……ちょっと待って」

セイルが、書類を抱えたまま首を傾げる。

「武力も強いのに、なんで書類仕事までできるの?」

純粋な疑問だった。

リュミエールはペンを置き、少し考える。

「国策……というか、魔王討伐の旅が一人だったから」

淡々と続ける。

「報告書を書けるのが、私しかいなかったの。
それに私は、王太子妃になる予定だったでしょう?」

リリスの手が、止まった。

「不在の間の書類を、全部整理して、
各部署に振り分けていたわ」

一拍。

リリスが、ゆっくりと顔を上げる。

「……なにそれ」

完全に、引いていた。

「それ、普通に地獄じゃない?」

「そう?」

首を傾げるリュミエールに、
セイルは一瞬黙り込んだあと、ぽつりと言った。

「……やむを得ず、その能力を身につけたんだね」

そして、少し照れたように続ける。

「よく、頑張ったんだと思う」

その言葉に、リュミエールは瞬きをした。

一度。
二度。

「……そんなこと、言われたのは初めて」

小さく、けれどはっきりと。

「ありがとう」

それは、社交辞令でも、形式的な礼でもなかった。

リリスは、その様子を見て、視線を逸らす。

「……ほんと、光の女神様って、容赦ないわね」

セイルは苦笑し、
ガルドは何も言わずに、静かに頷いた。

魔王ヴァルは、その光景を少し離れた場所から見ている。

聖女ではない。
英雄でもない。

一個人として迎えられ、
初めて「労い」を受け取った存在。

条件付きの同盟は、
確かな形を持って、動き始めていた。
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