悪役令嬢の破滅フラグ？転生者だらけの陰謀劇！勝者は誰だ

藤原遊

文字の大きさ

大中小

17 / 49

16

しおりを挟む

舞踏会から数日が経過した。ハロルドの突如現れた一件は、学園や貴族社会で大きな波紋を呼んでいた。ディアナが彼の計画に関与していた事実が徐々に明るみに出る一方で、彼女の名声は次第に失墜し始めている。

レティシアは学園の廊下を歩きながら、その余韻を感じ取っていた。周囲の視線が以前ほど冷たくないことに気づく。

（“悪役令嬢”としてのイメージが少しずつ薄れてきている……）

舞踏会での対決が、彼女の名誉を少し取り戻してくれたのだと実感する。しかし、彼女の胸中には別の不安が渦巻いていた。

（ハロルド・ローレンス……彼の目的は一体何？）

彼の最後の言葉――「私はまだ終わっていない」――が耳に残り続けている。

昼休み、学園の庭園でレティシアはリシャールと向かい合っていた。彼は変わらず飄々とした態度で、手に持った紅茶を軽く傾けている。

「君の活躍で、ディアナの計画はほぼ崩れた。だけど、舞台はまだ終わっていないね」

リシャールの言葉に、レティシアは頷いた。

「ええ。彼女は舞台から降りたけれど、ハロルドがまだ動いている。彼の計画が完全に終わったわけじゃない」

「それどころか、ここからが彼の本気の始まりかもしれないね」

リシャールの言葉に、レティシアは視線を上げた。

「本気……？」

「彼は貴族社会の支配構造を壊すために、次の一手をすでに準備しているだろう。今までの動きはただの序章だ。むしろ、ディアナの失墜を利用してさらに混乱を加速させる可能性もある」

リシャールは椅子にもたれながら、静かに微笑んだ。

「君はどうする？」

「どうする、ですって？」

「君はもう、自分の舞台を降りられない。この国を守るために、ハロルドを止める必要がある。そして、それが君自身の破滅フラグを完全に消す道でもある」

リシャールの冷静な言葉に、レティシアは短く息を吐いた。

「……分かっているわ。だから私は動く。次に彼が何を企んでいるのかを突き止める」

その夜、レティシアは邸宅の書斎で、ハロルドの背後関係を調べた資料に目を通していた。リシャールやアルフォンスの協力を得て集めた情報は少しずつ形を成し始めている。

ハロルドは、表向きはある地方の領主を名乗っているが、その影では大規模な貴族派閥を動かしている可能性が高い。そして、彼の背後にいるのは――

「……国外勢力……？」

資料の一部に記されていたのは、隣国の有力者たちとの密接な繋がりだった。

（彼の計画は、この国だけでは完結しない。隣国の力を借りて、この国そのものを乗っ取るつもりなの……？）

その時、扉が軽くノックされた。

「お嬢様、王太子殿下がお見えです」

「アルフォンスが？」

突然の訪問に驚きながらも、レティシアは扉を開けた。そこには、険しい表情のアルフォンスが立っていた。

「緊急の話がある」

「……分かったわ。入って」

アルフォンスは書斎に入り、扉を閉めると、低い声で言った。

「ハロルドの次の計画が分かった。彼は隣国との密約を進めている」

「密約……？」

「彼は隣国の軍事力を利用し、貴族社会と平民を分断し、内乱を起こすつもりだ。そしてその混乱の中で、自らを新たな“平等の象徴”として押し上げる計画だ」

その言葉に、レティシアは背筋が凍るのを感じた。

「そんなことを……」

「だが、その計画にはまだ隙がある。隣国との密会が数日後に予定されている。その場所と日時を突き止めた」

アルフォンスは一枚の地図を広げた。そこには、国境付近の小さな村が示されていた。

「ここでハロルドが隣国の使者と会う。その場で計画を阻止することができれば、彼の動きを封じることができる」

「……分かった。私も行くわ」

レティシアの言葉に、アルフォンスは驚きながらも静かに頷いた。

「君が同行するのは危険だが……その決意があるなら、受け入れよう」

こうして、ハロルドの計画を阻止するための新たな戦いが始まろうとしていた。ディアナを退けたことで少しだけ光が差し込んだものの、その先にはさらに大きな闇が待ち受けている。

（私は絶対に負けない。ハロルド、あなたの計画を終わらせる――）

レティシアは強く心に誓い、次の舞台に向けて準備を進めるのだった。

しおりを挟む