悪役令嬢の破滅フラグ？転生者だらけの陰謀劇！勝者は誰だ

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「囲まれたからといって、私が終わると思うのか？」

ハロルドの声にはまだ余裕が感じられた。彼の指示を受けた隣国の兵士たちは武器を構え、周囲を警戒している。一方、アルフォンスの増援部隊も戦闘態勢に入っていた。村の中心部は、一触即発の緊張に包まれている。

レティシアは冷静さを保ちながら、ハロルドに一歩近づいた。

「あなたがどんなに言い逃れようとしても、ここでの会話の記録が証拠となる。この国を裏切った事実を覆すことはできないわ」

ハロルドはその言葉に一瞬だけ険しい表情を浮かべたが、すぐに冷ややかな笑みを見せた。

「証拠を握っているだけでは足りない。この場で私を取り押さえることができなければ、意味はない」

彼の言葉とともに、隣国の兵士たちが一斉に動き出した。

アルフォンスが声を張り上げる。

「全員、戦闘準備！ ハロルドを取り押さえろ！」

アルフォンスの部隊が前進し、隣国の兵士たちとぶつかり合う。剣と剣が交錯する音が村中に響き渡る。レティシアも後方で戦況を見守りながら、兵士たちに指示を出した。

「ハロルドを逃がさないように！ 隣国の使者たちも確保して！」

リシャールは戦場の端で悠然と立ち、短く笑みを浮かべた。

「さて、僕も少し動こうか」

彼はポケットから小型の魔導具を取り出し、光を放ちながら隣国の兵士たちを翻弄し始めた。敵の武器が光に反応して動きを鈍らせられると、リシャールは軽く肩をすくめる。

「これで少しは楽になるだろう？」

戦闘が激化する中、レティシアはハロルドの姿を探していた。そして、彼が混乱の中を抜け出し、村の外れへ向かおうとしているのを目にする。

（逃げる気……？）

彼女はすぐにその場を飛び出し、彼を追った。足を止めないハロルドに向かって、声を張り上げる。

「逃げられると思わないで！」

ハロルドは振り返らず、低く笑いながら応じる。

「私がここで終わると思うか？ 君たちの思い通りにはならない！」

レティシアはその声に苛立ちを覚えながらも、冷静さを保って彼の後を追い続けた。

村の外れにたどり着いた二人。そこには崖が広がり、その下には激しい流れの川があった。ハロルドは崖の端に立ち、振り返る。

「君がここまで追ってくるとはね」

「これ以上逃がすわけにはいかないわ」

レティシアは毅然とした表情で言い放った。ハロルドは短く息を吐き、冷たく笑う。

「君のような若い令嬢に、私のような男を止められると思うのか？」

「私はただの“令嬢”じゃない。あなたの計画を終わらせるためにここにいるのよ」

その言葉に、ハロルドは一瞬だけ目を細めた。

「君には何か特別なものがあるようだな……だが、それもここまでだ」

彼が懐から小型の魔導具を取り出した瞬間、リシャールの声が響いた。

「それ以上はやめておくんだね、ハロルド」

木々の影から現れたリシャールが、無表情のままゆっくりと歩み寄ってくる。彼の手には魔導具が握られていた。

「僕を見くびらない方がいい。君のような人間の行動は全部読めるんだ」

「……君まで来るとはね」

ハロルドが苦々しく呟くと、背後からアルフォンスと兵士たちも現れた。

「もう逃げ場はない、ハロルド」

アルフォンスの声には、王太子としての威厳が満ちていた。ハロルドは周囲を見渡し、最後の抵抗を試みようとしたが、リシャールが彼に向かって指を鳴らす。

「終わりだよ」

その瞬間、ハロルドの魔導具が動作を停止し、彼の動きが封じられる。

「これで終わりよ、ハロルド・ローレンス」

レティシアの声が静かに響いた。ハロルドは深く息を吐き、冷たい視線を彼女に向ける。

「君たちが勝ったように見えるかもしれないが、この国の変革は止められない」

「それでも、私たちは戦い続けるわ。どんなに困難でも」

その言葉に、ハロルドは小さく笑みを浮かべた。

「強いな、君は……だが、覚えておけ。この国の未来は不安定だ。いつか君もその混乱に飲み込まれるだろう」

その言葉を最後に、彼は兵士たちに取り押さえられた。

夜が明ける頃、レティシアたちはハロルドの身柄と証拠を持ち帰る準備を進めていた。村には静寂が戻り、冷たい朝の空気が漂っている。

アルフォンスがレティシアの横に立ち、低い声で言った。

「君がいなければ、ここまで来られなかった。感謝する」

「これで本当に終わるのかしら？」

レティシアが問いかけると、アルフォンスは小さく笑いながら答えた。

「終わりではない。だが、確実に一つの勝利だ」

その言葉に、レティシアは静かに頷いた。

（私は“悪役令嬢”なんかじゃない。この国の未来を守るために、もっと強くなる――）

朝の光が差し込む中、彼女の中で新たな決意が芽生えていた。