悪役令嬢の破滅フラグ？転生者だらけの陰謀劇！勝者は誰だ

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ハロルドの身柄を抑え、隣国との密約の証拠も手に入れたことで、一連の事件はひとまず収束を迎えた。アルフォンスはすぐさま王宮に報告を行い、王国全土に彼の陰謀を明らかにするための準備を進めていた。

一方で、レティシアは事件の影響をまだ肌で感じ取っていた。自分がここまで動いたことで、王都でも少しずつ“悪役令嬢”という噂が薄れてきている。だが、それはまだ完全に消え去ったわけではない。

学園に戻った彼女は、冷たい視線の代わりに、少しだけ好奇心や警戒の混ざった視線を受けながらも、堂々と廊下を歩いていた。

昼休み、学園の庭園でリシャールと再び顔を合わせた。

「君は相変わらず堂々としているね。誰もがその姿勢に目を奪われる」

「皮肉かしら？」

レティシアは紅茶を口に運びながら軽く笑った。リシャールも肩をすくめながら微笑みを返す。

「いや、本心だよ。君は本当に強くなった」

その言葉に、レティシアは小さく息を吐いた。

「私はただ、生き延びるために動いてきただけ。まだ完全に破滅フラグを回避できたわけじゃないわ」

「それでも、君は舞台を降りるどころか、自分の舞台を作り上げた。それが何よりの証明だよ」

リシャールの言葉にはどこか含みがあり、彼女の中で少しだけ気になるものを残した。

その日の放課後、アルフォンスが学園を訪れ、レティシアを呼び出した。学園の裏庭で彼と向かい合ったレティシアは、彼がどこか疲れた表情を浮かべているのを見て、少しだけ気遣うように声をかけた。

「王宮での対応、大変だったんじゃない？」

「……ああ。父上――いや、国王陛下も今回の件には深く関心を持たれている。だが、それ以上に君が証拠を掴み、動いたことを高く評価されている」

「……私はただ、必要なことをしただけよ」

アルフォンスは少し微笑み、彼女に視線を向けた。

「君はそう言うだろうな。でも、君の存在がこの国を変えた。それは否定できない」

彼の言葉に、レティシアは複雑な気持ちを抱えながらも、短く頷いた。

「ハロルドがいなくなったとしても、この国の問題が全て解決するわけじゃない。まだ、いくらでも火種は残っている」

「そうだな。それを取り除くのが、僕の役目だ」

アルフォンスの目には、未来への強い覚悟が宿っていた。

「レティシア、君がいなければ、僕たちはこの国の未来を守ることができなかった。本当に感謝している」

「……私にできることがあるなら、これからも協力するわ」

その言葉に、アルフォンスは静かに頷いた。

その夜、レティシアは自室の窓から外を眺めていた。月明かりが庭園を照らし、静かな風が木々を揺らしている。

（私は、“悪役令嬢”として破滅する運命を避けることができた……でも、それで全てが終わったわけじゃない）

彼女は胸の中に新たな目標を抱き始めていた。この国を守るために、そして自分自身が望む未来を切り開くために――。

その時、窓をノックする音が聞こえた。振り返ると、そこにはリシャールが立っていた。

「また夜中に現れるなんて、非常識だと思わない？」

レティシアが眉をひそめながら問いかけると、リシャールは悪びれる様子もなく微笑んだ。

「非常識な君の友人がいないと、君も退屈だろう？」

「……何の用なの？」

「次の舞台の話をしようと思ってね」

その言葉に、レティシアは驚きながらも冷静を装った。

「次の舞台？」

「そうさ。この国の未来は、まだ不安定だ。そして、君はその中心にいる。君がどう動くかで、これからの物語が決まるだろう」

リシャールの言葉に、レティシアは短く息を吐いた。

「……私は、ただ“破滅”を避けたいだけだったのに」

「君がそれだけで終わる人物じゃないことは、もう分かっているはずだ」

その言葉に、レティシアは何も言わず、夜空を見上げた。

（私は、この国の未来にどう関わるべきなのだろう――）

新たな舞台の幕が上がる気配を感じながら、彼女の心には再び覚悟が芽生えていた。

（これが、私自身の物語――）