悪役令嬢の破滅フラグ?転生者だらけの陰謀劇!勝者は誰だ

藤原遊

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次の日、学園に静かな緊張感が漂っていた。ハロルドが捕らえられたという報せは一部の貴族たちにも伝わり、騒ぎにはなっていないものの、じわじわと影響が広がり始めている。特に、貴族社会の中でハロルドの派閥に属していた者たちは、動揺を隠せない様子だった。

レティシアは廊下を歩きながら、今後の情勢をどう乗り切るべきかを考えていた。

(ハロルドの計画は止められたけれど、まだこの国の不安定さが消えたわけじゃない。彼がいなくなったことで、新たな争いの種が芽生えないとは限らない)

その時、彼女に声をかけてきたのはアルフォンスだった。

「少し話がある。今夜、学園を出られるか?」

「……また何か起きたの?」

レティシアが問いかけると、アルフォンスは表情を引き締めながら頷いた。

「ハロルド派の残党が動き始めた可能性がある。彼らが隣国との関係を引き継ごうとしているという情報が入った」

「隣国と……?」

その言葉に、レティシアは胸の奥に冷たいものを感じた。

「ハロルドの捕縛によって隣国との関係は断たれたと思っていたけれど、残党が再びその線を繋ごうとしているのね」

「その可能性が高い。そして、次の計画の中心になる人物が特定できた」

アルフォンスが取り出した文書には、一人の貴族の名前が記されていた。

「グレン・エスタフォード……?」

「彼はハロルドの派閥に属していた貴族の一人だが、隠然たる力を持っている。彼がハロルドの計画を引き継ぐ形で動き始めたとの報告がある」

「具体的にはどんな動きを?」

「表向きは社交界での活動に専念しているが、裏では隣国の密使と連絡を取り合っているらしい。その会合が、数日後に予定されている」

「また密会……ね」

レティシアは小さく息を吐いた。

「私が行く必要があるの?」

「君が動いてくれれば、彼らの動きを封じる手掛かりが掴める可能性が高い。だが、今回は以前よりも危険だ。無理をしないでくれ」

その言葉に、レティシアは短く頷いた。

「分かったわ。私も協力する」

夜、再び邸宅を出たレティシアは、リシャールと合流していた。彼は相変わらずの余裕を漂わせながら、月明かりの下で彼女を見つめていた。

「君も相変わらずだね。危険な状況に飛び込むのが好きなのかい?」

「好きでやっているわけじゃない。必要だからよ」

レティシアの毅然とした言葉に、リシャールは短く笑った。

「そうだろうね。君は誰かに操られる人間じゃない。だからこそ、君が次にどう動くかが楽しみなんだ」

「……リシャール、あなたは私に何を期待しているの?」

その問いに、彼は少しだけ目を細めた。

「君が自分の運命をどう切り開くかを見たい。それだけさ」

その言葉に、レティシアは小さく息を吐いた。

「だったら、最後まで見届けてちょうだい」

「もちろん」

リシャールの微笑みには、どこか本気とも遊びともつかない不思議な温かさがあった。

グレン・エスタフォードが密会を行う場所として指定されたのは、郊外の古い屋敷だった。屋敷の周囲には警備の兵士が立ち、簡単に近づける状況ではない。

レティシアとリシャール、そしてアルフォンスが距離を取りながら様子を伺っていた。

「中に入るのは難しそうだな」

アルフォンスが低い声で呟く。リシャールは軽く肩をすくめた。

「難しいほど面白いものだろう?」

「そんな余裕を持っている場合じゃないわ」

レティシアが鋭く言い返すと、リシャールは笑いながら頷いた。

「分かった分かった。君に怒られるのはごめんだ。僕が少し手を貸そう」

彼は懐から再び小型の魔導具を取り出し、屋敷の周囲に張り巡らされた警備の動きを混乱させる仕掛けを施した。

「これで少しは進みやすくなっただろう?」

「ありがとう。さあ、行きましょう」

レティシアはリシャールとアルフォンスを引き連れ、屋敷の裏手から中へと忍び込んだ。

屋敷の一室では、グレンと隣国の密使たちが密談を行っていた。

「ハロルドがいなくなった今、私たちが計画を引き継がなければならない」

グレンの声には焦りと同時に決意が滲んでいた。

「隣国の支援を得るには、さらなる混乱が必要だ。この国の貴族たちを分断し、平民たちを煽り立てる新たな策を打ち出そう」

その言葉を耳にしたレティシアは、隣室から静かにその様子を見つめていた。

(やはり、ハロルドと同じことを……)

彼女は心の中で決意を固めた。

(この計画を、ここで終わらせる――)

その時、グレンが何かに気づいたように振り返る。

「誰だ!?」

緊張が走る中、レティシアは一歩前に出る覚悟を決めた。

「私よ。あなたたちの計画を止めに来たわ」

その声に、部屋の空気が一瞬凍りつく。次なる対決の幕が上がった――。
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