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月が高く昇り、静寂に包まれた王宮の夜。アルフォンス殿下の執務室に再び、レティシア、リシャール、ディアナ、レオン、そしてマリアが集まっていた。
アルフォンス殿下が、手元の資料を見ながら静かに言葉を切り出す。
「皆の協力のおかげで、今回の件に関わる黒幕がほぼ特定できた」
その言葉に、全員の視線が殿下に注がれた。
「王宮内の問題の文書。これを偽造した者の筆跡と、その流通経路を突き止めた結果、一人の名前が浮上した」
殿下は、手元の資料を示しながら言葉を続けた。
「名前はロラン・ハインリヒ。文官として長く王宮で働いており、表向きは忠実な職員として知られている。だが、過去に旧ハロルド派の貴族と接触していた記録が残っている」
リシャールが顎に手を当て、思案深げに呟いた。
「なるほど。確かに、内部の者でなければこれほど巧妙に文書を偽造し、流通させることは不可能だ」
レティシアも冷静に言葉を継いだ。
「さらに、夜会で得た情報と照らし合わせると、ロランが旧ハロルド派を煽動している貴族たちとも繋がりがある可能性が高いわね」
ディアナが口を開いた。
「つまり、ロランがこの策略の中心にいると考えて間違いないということね」
アルフォンス殿下は頷き、指示を出した。
「ディアナ、レオン。君たちは旧ハロルド派のリーダーたちと接触し、ロランの名前を伝え、彼らが騙されていることを理解させてほしい」
「了解しました」
ディアナとレオンが頷き、力強い返事を返す。
「リシャール卿、レティシア嬢。君たちは、ロランと繋がりがある貴族たちの動きを引き続き監視してくれ。彼らがロランに直接指示を出していた証拠があれば、事態を一気に動かせる」
「分かりました」
リシャールが穏やかに答え、レティシアもその隣で静かに頷いた。
「そして、僕とマリアは、ロランを直接問い詰める」
その言葉に、マリアは驚いたように目を見開いた。
「殿下、直接ですか?」
「そうだ。この件を終わらせるには、彼に全てを白状させる必要がある。ただし、慎重に動く。君には、彼の不正を記録する役目をお願いしたい」
「……分かりました」
マリアは緊張した様子ながらも、その目には決意が宿っていた。
翌日、ディアナとレオンは旧ハロルド派のリーダーとの再会に臨んでいた。古びた屋敷の一室で、リーダー格の男が険しい表情で彼らを出迎える。
「また来たのか。今度は何の用だ?」
ディアナは真っ直ぐな視線で彼を見つめ、言葉を投げかけた。
「ロラン・ハインリヒという名前に聞き覚えはない?」
その名前を聞いた瞬間、男の表情が曇った。
「……あいつか。文官のくせに、ずいぶんと俺たちに干渉してきた奴だ」
「そう。彼があなたたちを利用しているのよ。彼の目的は、あなたたちが思う“平等”を叶えることではなく、王宮を混乱させ、貴族社会の一部を操ること」
ディアナの言葉に、男はしばらく沈黙していたが、やがて低い声で呟いた。
「……証拠はあるのか?」
「今、集めている最中よ。でも、これ以上彼に踊らされていたら、あなたたちが利用されるだけで終わるわ」
ディアナの言葉に、リーダー格の男は強い不信感を浮かべながらも、彼女の言葉に耳を傾けているようだった。
「考えさせてもらう」
その返答に、ディアナとレオンは静かに頷き、その場を後にした。
同じ頃、アルフォンス殿下とマリアは、王宮内でロランを呼び出していた。
ロランは穏やかな表情を浮かべていたが、その目には冷静さを超えた何かが潜んでいた。
「ロラン、君に確認したいことがある」
アルフォンス殿下が静かに切り出すと、ロランは軽く頭を下げた。
「何なりと、殿下」
「最近、偽造された文書が出回り、それが王宮内で作成された可能性があると判明した。その文書には、君の筆跡が含まれている」
ロランの表情が一瞬硬直した。
「……殿下、それは何かの誤解では?」
「そうか? だが、ここにある記録がそれを示している」
殿下が手にした資料を突きつけると、ロランの目が一瞬だけ泳いだ。
「……それが事実だとしても、私がその文書を作った証拠にはなりません」
ロランは余裕を装っていたが、マリアの目にはその内心の焦りが見て取れた。
(この人……やはり何か隠している)
マリアはその様子を細かく観察し、記録に記しながら、次の一手を考えていた。
それぞれが動き出す中、物語はいよいよ黒幕との対峙へと向かおうとしていた――。
アルフォンス殿下が、手元の資料を見ながら静かに言葉を切り出す。
「皆の協力のおかげで、今回の件に関わる黒幕がほぼ特定できた」
その言葉に、全員の視線が殿下に注がれた。
「王宮内の問題の文書。これを偽造した者の筆跡と、その流通経路を突き止めた結果、一人の名前が浮上した」
殿下は、手元の資料を示しながら言葉を続けた。
「名前はロラン・ハインリヒ。文官として長く王宮で働いており、表向きは忠実な職員として知られている。だが、過去に旧ハロルド派の貴族と接触していた記録が残っている」
リシャールが顎に手を当て、思案深げに呟いた。
「なるほど。確かに、内部の者でなければこれほど巧妙に文書を偽造し、流通させることは不可能だ」
レティシアも冷静に言葉を継いだ。
「さらに、夜会で得た情報と照らし合わせると、ロランが旧ハロルド派を煽動している貴族たちとも繋がりがある可能性が高いわね」
ディアナが口を開いた。
「つまり、ロランがこの策略の中心にいると考えて間違いないということね」
アルフォンス殿下は頷き、指示を出した。
「ディアナ、レオン。君たちは旧ハロルド派のリーダーたちと接触し、ロランの名前を伝え、彼らが騙されていることを理解させてほしい」
「了解しました」
ディアナとレオンが頷き、力強い返事を返す。
「リシャール卿、レティシア嬢。君たちは、ロランと繋がりがある貴族たちの動きを引き続き監視してくれ。彼らがロランに直接指示を出していた証拠があれば、事態を一気に動かせる」
「分かりました」
リシャールが穏やかに答え、レティシアもその隣で静かに頷いた。
「そして、僕とマリアは、ロランを直接問い詰める」
その言葉に、マリアは驚いたように目を見開いた。
「殿下、直接ですか?」
「そうだ。この件を終わらせるには、彼に全てを白状させる必要がある。ただし、慎重に動く。君には、彼の不正を記録する役目をお願いしたい」
「……分かりました」
マリアは緊張した様子ながらも、その目には決意が宿っていた。
翌日、ディアナとレオンは旧ハロルド派のリーダーとの再会に臨んでいた。古びた屋敷の一室で、リーダー格の男が険しい表情で彼らを出迎える。
「また来たのか。今度は何の用だ?」
ディアナは真っ直ぐな視線で彼を見つめ、言葉を投げかけた。
「ロラン・ハインリヒという名前に聞き覚えはない?」
その名前を聞いた瞬間、男の表情が曇った。
「……あいつか。文官のくせに、ずいぶんと俺たちに干渉してきた奴だ」
「そう。彼があなたたちを利用しているのよ。彼の目的は、あなたたちが思う“平等”を叶えることではなく、王宮を混乱させ、貴族社会の一部を操ること」
ディアナの言葉に、男はしばらく沈黙していたが、やがて低い声で呟いた。
「……証拠はあるのか?」
「今、集めている最中よ。でも、これ以上彼に踊らされていたら、あなたたちが利用されるだけで終わるわ」
ディアナの言葉に、リーダー格の男は強い不信感を浮かべながらも、彼女の言葉に耳を傾けているようだった。
「考えさせてもらう」
その返答に、ディアナとレオンは静かに頷き、その場を後にした。
同じ頃、アルフォンス殿下とマリアは、王宮内でロランを呼び出していた。
ロランは穏やかな表情を浮かべていたが、その目には冷静さを超えた何かが潜んでいた。
「ロラン、君に確認したいことがある」
アルフォンス殿下が静かに切り出すと、ロランは軽く頭を下げた。
「何なりと、殿下」
「最近、偽造された文書が出回り、それが王宮内で作成された可能性があると判明した。その文書には、君の筆跡が含まれている」
ロランの表情が一瞬硬直した。
「……殿下、それは何かの誤解では?」
「そうか? だが、ここにある記録がそれを示している」
殿下が手にした資料を突きつけると、ロランの目が一瞬だけ泳いだ。
「……それが事実だとしても、私がその文書を作った証拠にはなりません」
ロランは余裕を装っていたが、マリアの目にはその内心の焦りが見て取れた。
(この人……やはり何か隠している)
マリアはその様子を細かく観察し、記録に記しながら、次の一手を考えていた。
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