悪役令嬢の破滅フラグ?転生者だらけの陰謀劇!勝者は誰だ

藤原遊

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ロランとの直接対話を終えたアルフォンス殿下とマリアは、執務室に戻ってきた。
殿下は深く椅子に座り、目を閉じながら思考を巡らせていた。対するマリアは机に資料を広げ、熱心に記録を整理している。

「マリア、彼の反応をどう見た?」

静かな声で問われたマリアは、少し考え込むように間を取ってから答えた。

「完全に余裕を装っていましたが、殿下が示された証拠に対しては動揺を隠せていませんでした。特に、筆跡の件に触れたとき……」

アルフォンス殿下は小さく頷いた。

「やはり、彼は何かを隠している。ただ、それを暴くにはもう少し決定的な証拠が必要だ」

「ええ……ですが、今の段階でもかなり追い詰められていると思います」

マリアの言葉に、殿下の口元が微かに緩む。

「君が見ていた通りだ。だからこそ、彼をさらに揺さぶる必要がある」

殿下はそう言うと立ち上がり、窓の外を見つめた。月明かりが差し込む中、彼の表情には深い決意が宿っていた。

その夜、ディアナとレオンは旧ハロルド派の隠れ家を再び訪れていた。
昼間の話を受け、リーダー格の男が部下たちと相談を重ねた結果、彼らにも微妙な変化が見られた。

「お前たちが言っていたロランという文官の話だが、確かに心当たりがある」

リーダーは険しい表情を浮かべながら話を続けた。

「あいつは、俺たちに『王宮の腐敗を暴く』ための手段をいくつか提案してきた。だが、今思えば、あれはただ俺たちを煽るためだったのかもしれない」

ディアナはその言葉に素早く反応した。

「そう。彼があなたたちに与えた情報や指示は、すべて王宮の混乱を狙ったものでしかない」

「……だが、俺たちには彼を裏切ることができるほどの力はない」

リーダーは唇を噛みしめながら、厳しい現実を吐露した。その言葉に、レオンが静かに語りかける。

「力なら、俺たちが貸す。ただし、お前たちが本気で彼と決別する覚悟を持っているならだ」

その言葉に、リーダーの目が大きく見開かれた。

「お前たちが協力するだと……?」

「俺たちは、お前たちが間違った道を進むのを見過ごすわけにはいかない。それがこの国のためでもある」

レオンの言葉に、リーダーはしばらく考え込んだ後、深い溜息を吐いた。

「分かった。お前たちを信じる。だが、俺たちの中にも疑念を持つ者がいる。そいつらを説得するのはお前たちの仕事だ」

ディアナは迷いなく頷いた。

「もちろんよ。そのためにここに来たのだから」

一方、夜会の中では、レティシアとリシャールがオズヴァルト侯爵への調査を進めていた。
彼らは侯爵の動向を観察しながら、次の一手を考えていた。

「リシャール、侯爵はここ数日、他の貴族たちとも頻繁に接触しているわ」

レティシアが耳打ちすると、リシャールは静かに笑みを浮かべた。

「その通りだね。そして、どうやらその中には、ロランとも繋がりがある者が含まれている」

二人は視線を交わしながら、侯爵の動きを追った。やがて、侯爵が一人の男と密談をしている場面に遭遇した。

「レティシア嬢、少し大胆な手に出てみようか」

リシャールがそう提案すると、レティシアは微笑を浮かべながら頷いた。

「いいわね。私たちの直感を試す時だわ」

彼らは侯爵に近づき、穏やかに声をかけた。

「侯爵様、少しお時間をいただけますか?」

「おや、リシャール卿にレティシア嬢。どうなさいました?」

侯爵は笑顔を浮かべながらも、その目には警戒の色が滲んでいる。

「少し興味深い話を耳にしましてね。ロランという方の名前が挙がっていましたが、侯爵様も彼をご存じなのでしょうか?」

その問いに、侯爵の笑みが僅かに揺らいだ。

「ロラン……ええ、もちろん知っていますとも。文官として優秀な方ですよ」

「なるほど。では、その優秀な文官が、王宮内で何かしらの問題に関与しているという噂については?」

リシャールの言葉に、侯爵の顔色が変わった。

「そんな話、初耳ですが……それが本当だとすれば、由々しき事態ですね」

「ええ、ですから、私たちも詳しく調査しているのです。侯爵様のお力添えをいただければ助かりますわ」

レティシアの穏やかな声に、侯爵は短く息をつき、軽く頷いた。

「分かりました。私も何かお役に立てることがあれば、お手伝いいたしましょう」

その言葉を聞きながら、リシャールとレティシアは確信を深めていた。

(この侯爵……ロランの動きについて何かを知っている)

二人は静かに退席し、次の動きを考え始めた。

全員がそれぞれの場で着実に前進し、黒幕への包囲網が狭まりつつあった。
しかし、ロランもまたその危機を察知し、動き出そうとしていた。
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