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ファーストダンスが終わり、再び音楽が切り替わると、周囲の貴族たちはゆるやかに舞踏の輪へと加わっていった。
けれど、私とユーリ殿下はそのまま中央に残されるように立ち止まっていた。
場の空気が、わずかに緊張を孕む。
「リディア嬢――」
ユーリ殿下の声は、先ほどまでの甘やかさを残しつつも、一段と真剣さを帯びていた。
澄み渡る湖のような青い瞳がまっすぐ私を見つめ、柔らかな金髪が燭光に照らされて輝く。
まるで物語の中の王子のように美しかった。
「この国で過ごした日々は、私にとってかけがえのない時間となりました。
……貴女と出会い、言葉を交わし、共に歩いたこの短い日々は、祖国の日々よりも遥かに私の心を満たしてくれたのです」
その言葉に、周囲の貴族たちのさざめきがピタリと止まる。
舞踏の輪も静まり、誰もがこちらに視線を向け始めていた。
ユーリ殿下は、私の目をまっすぐに見据えたまま、ゆっくりと跪く。
その所作は優雅で、まるで絵画の一幕のようだった。
赤絨毯の上に片膝をつき、その手には小さな箱が現れる。
「どうか――私の妃として、我が国に共に来てはいただけませんか?」
静寂。
大広間全体が凍りついたようだった。
貴族たちの目が、驚愕と動揺と、そして好奇に揺れる。
(……っ)
思考が追いつかず、私は息を呑んだまま固まる。
まさか、こんな公の場で正式に求婚されるとは――
想定できたはずなのに、現実となった瞬間はあまりにも現実味がなかった。
その時――
「――失礼、ユーリ殿下」
静かに、けれど確かな響きで声が届く。
壇上から、アレクシス殿下がゆっくりと歩み出てきた。
闇を纏ったような漆黒の礼服。夜の宝石のように光る黒髪と鋭い銀灰の瞳。
毅然としたその姿は、静謐で、けれど威厳に満ちた美しさを湛えていた。
「既に貴殿のご決意は十分に理解いたしました。ですが――私にも譲れぬ想いがございます」
アレクシス殿下は、堂々とユーリ殿下の隣へと進む。
そして――同じように片膝をついた。
殿下の手には、小さな漆黒の箱があった。
ゆっくりと開かれた箱の中で、深紅の紅玉が艶やかに輝く。
「リディア。これまで貴女とは幾度となく王宮の政において助け合い、支え合ってきた。
だが今夜、私はもう一歩、踏み込みたいと願っている。」
殿下の銀灰の瞳が、真っ直ぐに私を射抜く。
「私が望むのは、ただの協力者ではなく――生涯の伴侶だ。」
静かな声だが、その熱は誰の耳にも届いていた。
「どうか私の妻となり、ともに人生を歩んでほしい」
空気が震えた。
驚愕、動揺、興奮――
会場の貴族たちは誰もが息を呑み、この瞬間の行方を固唾を呑んで見守っていた。
私は――まるで時が止まったかのように、その場に立ち尽くしていた。
(殿下……)
視界が滲みそうになるのを、私は必死に堪えた。
しかし、まだ――私は答えを口に出せなかった。
けれど、私とユーリ殿下はそのまま中央に残されるように立ち止まっていた。
場の空気が、わずかに緊張を孕む。
「リディア嬢――」
ユーリ殿下の声は、先ほどまでの甘やかさを残しつつも、一段と真剣さを帯びていた。
澄み渡る湖のような青い瞳がまっすぐ私を見つめ、柔らかな金髪が燭光に照らされて輝く。
まるで物語の中の王子のように美しかった。
「この国で過ごした日々は、私にとってかけがえのない時間となりました。
……貴女と出会い、言葉を交わし、共に歩いたこの短い日々は、祖国の日々よりも遥かに私の心を満たしてくれたのです」
その言葉に、周囲の貴族たちのさざめきがピタリと止まる。
舞踏の輪も静まり、誰もがこちらに視線を向け始めていた。
ユーリ殿下は、私の目をまっすぐに見据えたまま、ゆっくりと跪く。
その所作は優雅で、まるで絵画の一幕のようだった。
赤絨毯の上に片膝をつき、その手には小さな箱が現れる。
「どうか――私の妃として、我が国に共に来てはいただけませんか?」
静寂。
大広間全体が凍りついたようだった。
貴族たちの目が、驚愕と動揺と、そして好奇に揺れる。
(……っ)
思考が追いつかず、私は息を呑んだまま固まる。
まさか、こんな公の場で正式に求婚されるとは――
想定できたはずなのに、現実となった瞬間はあまりにも現実味がなかった。
その時――
「――失礼、ユーリ殿下」
静かに、けれど確かな響きで声が届く。
壇上から、アレクシス殿下がゆっくりと歩み出てきた。
闇を纏ったような漆黒の礼服。夜の宝石のように光る黒髪と鋭い銀灰の瞳。
毅然としたその姿は、静謐で、けれど威厳に満ちた美しさを湛えていた。
「既に貴殿のご決意は十分に理解いたしました。ですが――私にも譲れぬ想いがございます」
アレクシス殿下は、堂々とユーリ殿下の隣へと進む。
そして――同じように片膝をついた。
殿下の手には、小さな漆黒の箱があった。
ゆっくりと開かれた箱の中で、深紅の紅玉が艶やかに輝く。
「リディア。これまで貴女とは幾度となく王宮の政において助け合い、支え合ってきた。
だが今夜、私はもう一歩、踏み込みたいと願っている。」
殿下の銀灰の瞳が、真っ直ぐに私を射抜く。
「私が望むのは、ただの協力者ではなく――生涯の伴侶だ。」
静かな声だが、その熱は誰の耳にも届いていた。
「どうか私の妻となり、ともに人生を歩んでほしい」
空気が震えた。
驚愕、動揺、興奮――
会場の貴族たちは誰もが息を呑み、この瞬間の行方を固唾を呑んで見守っていた。
私は――まるで時が止まったかのように、その場に立ち尽くしていた。
(殿下……)
視界が滲みそうになるのを、私は必死に堪えた。
しかし、まだ――私は答えを口に出せなかった。
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