信徒守護官カトリナの辺境ライフ〜魔王討伐後、救済はじめました〜

藤原遊

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夜が深まり、村に戻った二人は静かな広場に立ち止まった。小屋での激闘が嘘のように、辺りは平穏そのものだった。風が木々を揺らし、月明かりが淡く地面を照らしている。

リリアナは少し疲れた様子で、メイスを握る手をじっと見つめていた。

「カトリナさん……。私、やっぱりまだまだですね」

ぽつりと呟くその声には、自分の未熟さへの悔しさが滲んでいる。彼女の言葉を聞いたカトリナは、少し歩みを止め、振り返った。

「リリー、今日あなたがやったことを振り返りなさい」

「でも……最初からカトリナさんがいなかったら、何もできなかったですし……」

リリアナが言いかけると、カトリナは微笑みながら彼女の肩に手を置いた。

「それでいいのよ。最初から全てを完璧にこなせる人なんていないわ」

カトリナは空を見上げながら続けた。

「私だって、ここまで来るのに何度も失敗してきた。でも、それでも進むことで、今の私がある」

「……進むことで?」

リリアナが不思議そうに顔を上げると、カトリナは視線を彼女に向けた。

「そうよ。大切なのは、立ち止まらずに次へ進むこと。今日あなたが助けた命が、それを証明しているわ」

リリアナはその言葉を聞いて、少しだけ顔をほころばせた。

「私、少しずつでも進めていますかね……?」

「ええ、確実に。そして、これからもね」

その時、不意に風が強く吹き抜けた。カトリナはその風を受けながら、村の外れに目を向けた。

「……また、何かが動いている気がするわね」

リリアナもその言葉に反応して顔を上げた。「何か、嫌な予感ですか?」

「予感というより……確信に近いわ。理不尽は、一つ終われば次が始まるものだから」

カトリナは軽くハンマーを担ぎ直し、歩き出した。その後ろ姿を追いながら、リリアナも覚悟を決めたように足を踏み出した。
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