信徒守護官カトリナの辺境ライフ〜魔王討伐後、救済はじめました〜

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「つまり、他の地域にも似たような封印がある可能性が高いってことか」

エドガーが地図を見下ろしながら言った。双子のセオが頷き、フィオが指で地図の一部をなぞる。

「私たちが調べた丘陵地帯にも瘴気の痕跡が残っていたわ。でも、まだ封印そのものは見つかっていないの」

「北の森も同じだな。瘴気は感じるが、どこに封印があるのかは分からなかった」

カインが短剣を弄びながら言うと、リリーが考え込むように呟いた。

「でも、これだけ広範囲に瘴気が漂っているってことは……」

「そうよ、リリー」

カトリナが微笑みながら頷いた。「誰かが意図的に封印を設置して、瘴気を広げている可能性が高いわ」

「じゃあ、封印を解除していけば、その術者を追い詰められるかもしれないですね！」

リリーが顔を輝かせて言うと、カインが少し笑って言った。

「お、リリーもやる気になったみたいだな」

「ええ、だって……みんながこんなに一生懸命なのに、私だけ何もできないのは嫌ですから！」

その言葉に、エドガーが優しく微笑んだ。

「リリー、お前はちゃんと役割を果たしてるぞ。カトリナがこうして前線に立てるのも、お前の祈りのおかげだ」

「そ、そうでしょうか……？」

リリーが照れくさそうに言うと、フィオがにっこり笑った。

「そうよ！シスターの祈りは、私たち後衛にとっても心強いの」

「だから、自信を持ちなさい」

カトリナがリリーの肩に手を置いて言うと、リリーはきつく頷いた。

翌日、一行は次の封印があると思われる廃村へ向かっていた。道中、リリーはカトリナの隣で歩きながら尋ねた。

「カトリナさん、私……もっと回復魔法をうまく使えるようになりたいです」

「もちろんよ、リリー。そのために私がいるんだから」

カトリナが微笑むと、リリーは真剣な表情で続けた。

「でも、どうしてカトリナさんは、戦闘中でもあんなに安定して回復魔法を使えるんですか？」

「簡単よ」

カトリナがふっと笑って言った。

「私は常に“誰かを救いたい”という祈りを心に持っているから」

「祈りを、心に……？」

リリーが考え込むように呟くと、カトリナが静かに語り始めた。

「回復魔法は、神の力を借りて発動するもの。だけど、それを引き出す鍵は、私たちの“信念”なのよ」

カトリナは優しく微笑みながら、リリーの目を見つめた。

「あなたの祈りは、もう十分に強いわ。ただ、もっと自分を信じなさい。あなたの光は、必ず誰かを救うのよ」

リリーはその言葉を胸に刻み、小さく頷いた。

「はい……私、もっと頑張ります！」

廃村に到着した一行は、廃墟と化した家々の間を慎重に進んでいった。

「この辺り、瘴気が濃いな……」

エドガーが警戒しながら言うと、カインが短剣を構えた。

「気をつけろ。何か出てくるぞ」

その瞬間、崩れた家の隙間から巨大な魔物が姿を現した。体からは黒い瘴気が立ち上り、鋭い牙をむき出しにしている。

「来たわね……！」

カトリナがハンマーを構えると、リリーは深呼吸してメイスを握りしめた。

「私も、祈ります！」

彼女の手から漏れる光が、カトリナの背中に届いた。その光は前回よりも安定していて、確かな温かさを伴っている。

「いいわ、リリー。その光をもっと強く！」

カトリナがハンマーを振り上げ、魔物に向かって突進した。

「聖なる光よ、この者に救済を与えたまえ！」

ハンマーが輝きを放ち、魔物は轟音と共に崩れ落ちた。瘴気が晴れ、空気が清浄に戻っていく。

「終わりましたね……！」

リリーが笑顔で言うと、カトリナが微笑んで頷いた。

「ええ、あなたの祈りのおかげよ、リリー」

「私、本当に役に立てたんですね……！」

リリーは涙ぐみながら、嬉しそうに笑った。その姿を見て、エドガーが肩を叩いた。

「お前は立派なシスターだよ、リリー」

「ありがとう……ございます！」

リリーの成長を感じながら、一行は次の封印へ向かう準備を整えていった。