信徒守護官カトリナの辺境ライフ〜魔王討伐後、救済はじめました〜

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廃村の瘴気を浄化し、一行はその場に腰を下ろして休息を取っていた。リリーは焚き火を囲みながら、じっと自分の手を見つめている。

「私……少しずつ、できるようになってきたんですね」

彼女がぽつりと呟くと、フィオが優しく微笑んだ。

「うん、見てて分かるよ。前は手が震えてたけど、今はしっかり祈れてる」

「そうそう。リリーの光、安定してきたしね！」

セオも頷きながら、杖をくるくると回している。

「お前、ずっと見てたけど、随分頑張ってたよな」

カインが短剣を磨きながら言うと、リリーは少し顔を赤らめた。

「ありがとうございます……でも、まだまだです」

「その謙虚さが大事なのよ、リリー」

カトリナが笑いながら彼女の隣に座る。「でも、覚えておきなさい。私たちのような守護官は、戦いの中でこそ成長するものよ」

「戦いの中で……」

リリーが考え込むように呟くと、エドガーが焚き火の炎を見つめながら言った。

「でもさ、なんでこんなに封印がたくさんあるんだ？魔王が倒されたってのに、世界が平和になるどころか、逆に理不尽が増えてる気がするんだが」

「確かに……」

セオが額に手を当てて考え込む。「誰かが意図的に封印を増やしてるとしか思えないよね」

「その術者の目的が分からないのが、今の問題ね」

カトリナが真剣な表情で言うと、フィオがふと地面に落ちている石板の欠片を拾い上げた。

「ねえ、これって……」

フィオが拾い上げた石板には、見覚えのある古い文字が刻まれていた。それを見たカトリナの顔が険しくなる。

「これは……魔族の紋章ね」

「魔族！？」

リリーが驚いた声を上げると、カインが短剣を握り直した。

「まさか、魔王の残党が封印を作ってるのか？」

「可能性はあるわね」

カトリナがゆっくりと頷いた。「でも、普通の魔族では、こんな複雑な術式を扱えるはずがないわ。相当な知識と力を持った者が関わっている……」

「つまり、四天王の生き残りとか？」

エドガーが眉をひそめると、カトリナが静かに答えた。

「それか、四天王よりもさらに上の存在かもしれないわ」

その言葉に、一行の空気が一瞬で張り詰めた。

「ま、そういう理不尽は、私たちがぶっ叩いて解決するんだけどね」

カトリナがさらりと言うと、リリーが思わずツッコミを入れた。

「だから、それ理屈になってませんってば！」

「でも、結局そういう解決が一番手っ取り早いんだよな」

エドガーが笑いながら言うと、セオとフィオも頷いた。

「そうそう。どんなに強い敵でも、カトリナさんのハンマーで浄化されちゃうからね」

「……本当にこの人たち、世界を救ったんですよね？」

リリーが呆れたように言うと、カインがニヤリと笑った。

「まあ、適当に集められた寄せ集めパーティにしては、よくやっただろ？」

「その適当さが怖いんですけど！」

笑い声が広がる中、カトリナはリリーに優しく声をかけた。

「リリー、あなたはもう十分成長しているわ。でも、これからもっと大きな試練が来るかもしれない」

「もっと大きな試練……」

リリーが不安げに呟くと、カトリナが力強く言った。

「ええ。でも、覚えておきなさい。あなたの光は、必ず誰かを救うのよ。それを信じて、進んでいきなさい」

「……はい！」

リリーは頷き、メイスをしっかりと握りしめた。その姿は、かつての不安な見習いシスターではなく、少しずつ自信を持ち始めたシスターの顔になっていた。