戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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2章 戦乙女の第一歩

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騎馬隊が地面を蹴立て、土埃を巻き上げて進んでくる。その先に立つのは、ただ二人――フィオラとロイドだった。

「数が多い……だが、止めなきゃ村が危ない。」

ロイドは剣を抜き、深く息を吸い込んだ。隣を見ると、フィオラが静かに手を掲げている。指先には水の粒が浮かび上がり、冷たい光を放っていた。

「君がいるなら、いけるな。」

その一言に、フィオラは微かに微笑んだ。

「私を信じて。あなたは前線を頼むわ。」

ロイドは頷き、敵の先頭に向かって駆け出した。剣が空気を裂き、馬上の敵を一人、二人と打ち倒していく。だが、数の差は圧倒的だった。

フィオラはすぐさま手を掲げ、集中した。

「……私にできることを。」

空気が震え、地面がわずかに揺れる。やがて彼女の手の先から放たれた魔力が、水の壁となって騎馬兵を押し返す。兵士たちが驚きの声を上げる中、ロイドが振り返った。

「すごい……この魔法なら!」

しかし、フィオラの表情は険しいままだった。水の壁は一定時間しか持続しない。次々と押し寄せる敵に対抗するには、さらに強い力が必要だった。

「もっと……!」

彼女は両手を組み、再び魔力を集中させた。波のようにうねる水が渦を巻き、敵兵を飲み込む。轟音と共に崩れ落ちる敵の隊列。だが、フィオラの呼吸は次第に荒くなっていく。

「フィオラ!」ロイドが駆け寄った。

「大丈夫……まだやれる……!」

そう言いながらも、フィオラの足はわずかに震えていた。魔法を使うたびに、体力と魔力が削られていくのがわかる。だが、村を守るためには引くわけにはいかなかった。

敵兵たちが次第に撤退を始めたのは、それからしばらくしてからだった。
隣国の騎馬隊はすべてを諦めたように方向を変え、森の中へと姿を消していく。

フィオラはその場に膝をつき、息を切らした。
その肩にロイドが手を置き、優しく声をかけた。

「君の魔法が、村を守ったんだ。」

フィオラはロイドの言葉に頷きながらも、胸に残る違和感を覚えていた。
村は守れた――だが、次はもっと大きな戦いが待っているのだという予感があった。

「守っただけじゃ、終わらない……。」

ロイドはその言葉に驚きつつも、すぐに頷いた。

「そうだな。だからこそ、準備を進めないといけない。」

フィオラはその場で立ち上がり、村を見渡した。村人たちが避難場所から戻り、互いの無事を確認している。彼女は静かに目を伏せ、決意を胸に刻んだ。
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