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4章 次なる手
④
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戦場が静まり返る中、フィオラは立ち尽くしていた。
ライナーが最後に見せた行動――自分を助けたあの手の感触が、まだ腕に残っている。
「……彼は……どうして?」
彼女の頭には、彼の言葉と行動が繰り返し浮かんでいた。
自分を敵として見ているはずなのに、あの一瞬だけ、まるでそうではないように思えた。その違和感が、彼女の胸をざわつかせていた。
「フィオラ!」
声がして振り返ると、ロイドが駆け寄ってきた。
彼は血塗れの剣を手にしていたが、無事であることに安堵の表情を浮かべている。
「無事か? あいつに何かされたのか?」
彼は心配そうにフィオラの全身を見渡した。
その目には、フィオラを守りたいという想いがあふれている。
「……何もないわ。」
フィオラはそう言いながらも、視線を逸らした。
ライナーとのやり取りを思い出すと、ロイドにそれを伝えることがためらわれた。
「本当に何もないのか?」
ロイドの声には、疑念と苛立ちが混じっていた。
彼の視線は、どこかフィオラを問い詰めるようでもあった。
「ロイド、今は戦いが終わったばかりよ。少し休ませて。」
フィオラの声にはわずかに疲れが滲んでいた。
ロイドは一瞬ためらったが、頷いて剣を収めた。
「……わかった。でも、何かあったら言え。俺は君を守るためにここにいるんだ。」
彼の言葉は真摯で、フィオラの心に響いた。
だが、彼女はそれ以上何も言えなかった。
夜、フィオラは陣営の外れに立ち、戦場の跡地を見つめていた。
月明かりが薄く地面を照らし、遠くにはライナーの軍が撤退していった痕跡が見える。
「……私は、彼をどう思っているの?」
自分自身に問いかけても、答えは出なかった。
ライナーの言葉や行動が、自分にとって何を意味するのか――それを考えれば考えるほど、彼女の心は揺れていく。
その頃、ライナーもまた、自軍の天幕で地図を広げながら考え込んでいた。
戦術的には敗北と言える結果だったが、それを引き換えに得たものが彼にはあった。
「……やはり、あの女は面白い。」
彼の呟きは、独り言のようだったが、その言葉には確信が込められていた。
敵として向き合う中で、フィオラの持つ冷静さと強さ、そしてその中に宿る何かに彼は惹かれていた。
部下が報告を持って入ってくると、彼はいつもの冷静な指揮官に戻った。
「次の戦略を進める。こちらの狙いを見せるのは十分だ。次は、彼女がどう動くかを見せてもらおう。」
その言葉の奥には、純粋な興味と、奇妙な期待が隠されていた。
翌朝、フィオラの陣営では次の作戦会議が開かれていた。
ロイドは彼女の横に立ち、いつも以上に真剣な表情を浮かべている。
「ライナーの軍が一旦退いたとはいえ、彼が諦めるとは思えない。」
ロイドがそう言うと、フィオラも頷いた。
「ええ。彼は次の手を考えているはず。でも、私たちにも時間があるわ。その間に、もっと精度の高い戦術を組み立てる。」
フィオラの声には力強さがあったが、その中には微かな不安が隠されていた。
ライナーとの次の対峙を想像するたび、自分の中に芽生えた感情の正体に向き合うことを避けたくなった。
ロイドは彼女を見つめながら、静かに決意を固めていた。
彼女を守る――それが自分の使命だと信じてきた。だが、その想いがただの「使命」ではないことに、彼は気づき始めていた。
ライナーが最後に見せた行動――自分を助けたあの手の感触が、まだ腕に残っている。
「……彼は……どうして?」
彼女の頭には、彼の言葉と行動が繰り返し浮かんでいた。
自分を敵として見ているはずなのに、あの一瞬だけ、まるでそうではないように思えた。その違和感が、彼女の胸をざわつかせていた。
「フィオラ!」
声がして振り返ると、ロイドが駆け寄ってきた。
彼は血塗れの剣を手にしていたが、無事であることに安堵の表情を浮かべている。
「無事か? あいつに何かされたのか?」
彼は心配そうにフィオラの全身を見渡した。
その目には、フィオラを守りたいという想いがあふれている。
「……何もないわ。」
フィオラはそう言いながらも、視線を逸らした。
ライナーとのやり取りを思い出すと、ロイドにそれを伝えることがためらわれた。
「本当に何もないのか?」
ロイドの声には、疑念と苛立ちが混じっていた。
彼の視線は、どこかフィオラを問い詰めるようでもあった。
「ロイド、今は戦いが終わったばかりよ。少し休ませて。」
フィオラの声にはわずかに疲れが滲んでいた。
ロイドは一瞬ためらったが、頷いて剣を収めた。
「……わかった。でも、何かあったら言え。俺は君を守るためにここにいるんだ。」
彼の言葉は真摯で、フィオラの心に響いた。
だが、彼女はそれ以上何も言えなかった。
夜、フィオラは陣営の外れに立ち、戦場の跡地を見つめていた。
月明かりが薄く地面を照らし、遠くにはライナーの軍が撤退していった痕跡が見える。
「……私は、彼をどう思っているの?」
自分自身に問いかけても、答えは出なかった。
ライナーの言葉や行動が、自分にとって何を意味するのか――それを考えれば考えるほど、彼女の心は揺れていく。
その頃、ライナーもまた、自軍の天幕で地図を広げながら考え込んでいた。
戦術的には敗北と言える結果だったが、それを引き換えに得たものが彼にはあった。
「……やはり、あの女は面白い。」
彼の呟きは、独り言のようだったが、その言葉には確信が込められていた。
敵として向き合う中で、フィオラの持つ冷静さと強さ、そしてその中に宿る何かに彼は惹かれていた。
部下が報告を持って入ってくると、彼はいつもの冷静な指揮官に戻った。
「次の戦略を進める。こちらの狙いを見せるのは十分だ。次は、彼女がどう動くかを見せてもらおう。」
その言葉の奥には、純粋な興味と、奇妙な期待が隠されていた。
翌朝、フィオラの陣営では次の作戦会議が開かれていた。
ロイドは彼女の横に立ち、いつも以上に真剣な表情を浮かべている。
「ライナーの軍が一旦退いたとはいえ、彼が諦めるとは思えない。」
ロイドがそう言うと、フィオラも頷いた。
「ええ。彼は次の手を考えているはず。でも、私たちにも時間があるわ。その間に、もっと精度の高い戦術を組み立てる。」
フィオラの声には力強さがあったが、その中には微かな不安が隠されていた。
ライナーとの次の対峙を想像するたび、自分の中に芽生えた感情の正体に向き合うことを避けたくなった。
ロイドは彼女を見つめながら、静かに決意を固めていた。
彼女を守る――それが自分の使命だと信じてきた。だが、その想いがただの「使命」ではないことに、彼は気づき始めていた。
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