戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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4章 次なる手

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戦場の余韻が薄れつつある中、フィオラは新たな作戦を練るため、地図を睨んでいた。
ライナーが撤退したのは事実だが、それが本当の退却かどうかは判断できなかった。むしろ、次に仕掛けられる一手に備えるための布石である可能性が高い。

「彼は、どこで動いてくるのかしら……。」

フィオラは思わず呟いた。
その声に気づいたロイドが、彼女の隣に歩み寄る。

「次の一手を考えているのか?」

「ええ。でも、まだはっきりとした狙いが見えないわ。」

フィオラの表情には微かな疲れが見えた。
ロイドは地図を一瞥し、優しく声をかけた。

「少し休め。君が倒れたら、俺たちはどうすればいい?」

その言葉に、フィオラは短く笑った。

「ありがとう。でも、今は休んでいる暇はないの。」

ロイドは彼女の言葉に反論しようとしたが、フィオラの目に宿る強い意志を見て、それ以上何も言えなかった。

「……わかった。でも、無理はするな。」

ロイドの言葉には、彼女への深い想いが滲んでいた。

その夜、偵察隊からの報告がフィオラの元に届いた。
隣国軍が南の村で再び動きを見せているという。

「補給拠点を作り直している……?」

フィオラは地図を確認しながら、次の行動を考えた。
補給拠点を破壊することは戦略的に重要だが、それがライナーの本当の狙いかどうかは不明だった。

「……動かないわけにはいかない。」

フィオラはそう言って、作戦指示書をまとめ始めた。

翌朝、部隊が南の村へ向けて移動を始める中、ロイドは彼女の隣で馬を並べていた。
彼は何度も口を開きかけては言葉を飲み込んでいたが、ついに意を決して口を開いた。

「フィオラ……一つだけ聞かせてくれ。」

「何?」

「君は……ライナー・フォルクスのことをどう思っている?」

その問いに、フィオラは一瞬言葉を失った。
ロイドの真剣な目に、彼女は何も隠すことができなかった。

「私は……彼を止めなければならない。それだけよ。」

「それだけか?」

ロイドの声には、どこか切実な響きがあった。
フィオラは視線を伏せ、静かに答えた。

「……彼が敵である以上、それ以上のことを考える余裕なんてないわ。」

その言葉に、ロイドは小さく頷いた。だが、その胸の中に広がる不安は、消えることはなかった。

南の村に到着したフィオラの部隊は、すぐに敵の動きを確認した。
村を中心に展開する補給部隊と、それを守る紅炎の術師団が視界に入る。

「……やっぱりここにいたのね。」

フィオラは指揮を執り、部隊を分けて包囲網を形成させた。
彼女は村の地形を利用し、敵を囲みながら補給拠点を徐々に圧迫していく。

「中央突破を狙うわけにはいかない……。」

彼女は慎重に動きを見極めながら、敵の隙を突くタイミングを計っていた。
その時、遠くに見える赤いマントの姿が、彼女の目に飛び込んできた。

「ライナー……!」

彼は村の中央で馬に乗り、彼女の動きを見据えているようだった。
その存在感が、フィオラの胸に再び緊張と動揺をもたらした。

戦場の火蓋が切られる。
フィオラの部隊が村を取り囲み、敵軍を追い詰める中、ライナーが動き始める。

「今度はこちらが仕掛ける番だ。」

彼は静かに呟き、炎の魔法を放った。
その勢いはこれまで以上に強く、フィオラの水の防御壁を瞬時に突き破るほどだった。

「くっ……!」

フィオラは素早く再び防御を展開するが、その衝撃で馬から落ちそうになる。
その瞬間、ライナーの目が鋭く光る。

「危険だぞ、フィオラ・カイゼルン。」

彼が放った言葉には、敵将らしからぬ感情がこもっているようだった。
その声を聞いたフィオラの胸は、またしても複雑な感情で揺れた。
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