戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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4章 次なる手

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村の中心で展開される戦いは、激しさを増していた。
フィオラの部隊は周囲から徐々に包囲を進め、敵の補給拠点を圧迫していた。だが、それを守る紅炎の術師団が粘り強く抵抗を続け、戦局は一進一退を繰り返していた。

「これ以上の消耗は避けたい……。」

フィオラは自軍の損耗を見極めながら、次の一手を模索していた。
村の地形を利用し、さらに敵を包囲しきるためには、より大胆な手が必要だと感じていた。

ロイドがその横で口を開いた。

「フィオラ、ここで一気に突撃を仕掛けるのはどうだ? 術師団の中心を崩せば、補給部隊も総崩れになる。」

彼の提案に、フィオラは迷った。確かに一気に片をつける策だが、それには大きなリスクが伴う。
彼女は地図を見つめながら静かに答えた。

「それは危険すぎるわ。彼らの中心には……ライナーがいる。」

その名前を口にした瞬間、ロイドの表情が微かに変わった。

「そうか。あいつに気を取られすぎていないか?」

彼の言葉には、彼女を案じる気持ちと苛立ちが混じっていた。
フィオラは彼の目を見つめたが、答えることができなかった。

「……彼がどう動くかはわからない。でも、私はこの戦いを終わらせる。」

彼女の決意の言葉に、ロイドは口を閉ざした。
だが、その胸の奥では、彼女がライナーに惹かれているのではないかという疑念が大きく膨らんでいた。

その頃、ライナーは村の中央で自軍の動きを冷静に見つめていた。
紅炎の術師団が徐々に包囲されつつある状況にも、彼はまったく動じていなかった。

「彼女は慎重だが、大胆な手を使う時が来る。」

ライナーは静かにそう呟き、部下に指示を送った。

「村の中央部隊を一旦後退させろ。包囲の隙を作る。そして、彼女をそこに誘い込む。」

「隙を……作るのですか?」

部下が驚いた顔で尋ねると、ライナーは笑みを浮かべた。

「策を張る者は、敵が動く隙を与えなければならない。そうでなければ、相手を誘い出せない。」

部下はその言葉に従い、すぐに動き出した。
ライナーの目には、戦略的な冷静さと、どこか楽しむような光が宿っていた。

「さあ、どう動く……フィオラ・カイゼルン。」

戦場に変化が訪れた。
村の中央部隊が後退を始め、そこに広がる隙間がフィオラの目に映る。

「……あの動きは……罠?」

フィオラは即座にその意図を感じ取った。
だが、その隙を利用しなければ、この戦いを終わらせることはできない。

「ロイド。」

彼女が呼びかけると、ロイドはすぐに彼女の隣に駆け寄った。

「どうした?」

「中央の隙を突くわ。ただし、全軍を動かすのではなく、精鋭部隊だけを投入する。」

その決断に、ロイドは少し驚いた表情を見せたが、すぐに頷いた。

「わかった。俺が君を守る。」

「ありがとう。」

フィオラは静かにそう言い、精鋭部隊を率いて前進を開始した。

戦場の中央で、フィオラはライナーと再び対峙することになった。
赤いマントを翻し、彼は静かに馬を降りる。

「来たか。」

ライナーの声は低く響き、その目はフィオラをまっすぐに見つめていた。
彼女もまた、彼の視線を受け止める。

「……これで終わりにする。」

フィオラの声には揺るがない決意が込められていた。
だが、ライナーは微かに笑みを浮かべた。

「終わりにするのはお前の自由だ。ただし、それが本当に可能ならな。」

その言葉と共に、彼は再び炎の魔法を放つ。
フィオラは即座に水の壁を展開し、その攻撃を受け止めた。

「……次は私の番よ!」

彼女が放った水の波動が、ライナーを包み込むように襲いかかる。
だが、その攻撃を受け流すように彼の炎が燃え上がり、再び激しい衝突が戦場を揺るがせた。

その瞬間、戦場の裏側でロイドが敵の伏兵を制圧し、フィオラの安全を確保していた。
彼は剣を握り締めながら、遠くで戦う彼女の姿を見つめていた。

「……フィオラ。君を守るために俺がいるんだ。」

その言葉には、彼自身の覚悟と、彼女への想いが込められていた。
だが、その想いが彼女に届く日は来るのか――それを彼自身も知る由はなかった。
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