戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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6章 将たちの対話

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ライナーが前線に現れたことで、戦場の空気が一変した。
彼の存在は敵軍の士気を高め、フィオラの部隊にさらなる圧力をかけてくる。

「フィオラ、奴が来たぞ。ここが正念場だ!」

ロイドが剣を構えながら叫んだ。
フィオラは水の壁をさらに強化しながら、避難がまだ終わっていない村の方を一瞥した。

「あと少し……あと少しで全員が安全な場所に移動できる!」

彼女は自分に言い聞かせるように呟き、視線をライナーに向けた。

「ライナー、あなたがここに来たのは私を試すため?」

「試す、か。そう思うのは自由だ。」

ライナーはゆっくりと剣を抜き、周囲の兵士たちに目配せを送った。彼の部下たちは一斉に動きを止め、後退する。

「何を……?」

フィオラはその異様な行動に眉をひそめた。
ライナーの兵士たちは攻撃を止め、彼自身が静かに前に出てきた。

「この状況でお前が何をするか、それを見せてくれ。」

「……!」

フィオラはライナーの真意を測りかねながらも、すぐに魔力を集中させた。彼がただの挑発で動いているわけではないことは明らかだった。

「なら、私は私の信念を示すだけ!」

彼女の両手から水の槍が形成され、ライナーに向かって放たれる。その槍は彼を威嚇するように空気を裂いて突き進んだが、ライナーは剣を振るい、一瞬でそれを消し去った。

「力は十分だな。だが、それが本当に戦場を変えると思うのか?」

ライナーの声は静かだったが、その言葉には挑発だけではない重みがあった。

「私の力が誰かを守れるなら、それで十分よ!」

フィオラの声が戦場に響く。その瞬間、水の壁がさらに広がり、敵兵たちの進軍を完全に遮断した。

ロイドはその様子を見ながら、剣を握りしめていた。
彼にとってフィオラの言葉はまさに理想そのものであり、彼女の信念を守ることが自分の使命だと感じていた。

「フィオラ、あいつに振り回されるなよ。お前が信じる道だけを見ろ。」

ロイドはそう叫びながら前へ進み、フィオラの隣に立った。
彼の剣が光を反射し、二人の間に立つように構えられる。

「ロイド……ありがとう。でも、この戦いは私が決着をつけるわ。」

フィオラの言葉に、ロイドは短く頷いた。

「俺はお前を信じる。それだけだ。」

戦場の中心で、フィオラとライナーが再び激突した。
水と炎の魔法が空中でぶつかり合い、蒸気となって戦場を包み込む。

「君の信念は美しい。だが、それが本当に通用するのかを知るべきだ。」

ライナーはさらに炎を強め、その熱気がフィオラの水を蒸発させる。だが、フィオラは臆することなくさらに魔力を注ぎ込み、水の波を彼に叩きつけた。

「私は信じている!民間人を守ることが、未来を守ることだって!」

その言葉に、ライナーの目が一瞬だけ細められた。

「……未来、か。」

彼は呟き、剣を振るってフィオラの水を切り裂いた。
だが、その瞬間、フィオラの背後に立つロイドが彼に向かって突進した。

「フィオラ、お前の信念を貫け!」

ロイドの剣がライナーに迫る。ライナーはすぐに防御の魔法を展開し、剣と剣がぶつかり合う音が響いた。

その間に、フィオラはさらに水の魔力を練り上げ、巨大な波を形成していた。彼女の目はライナーではなく、村を見据えていた。

「この波で、村の全てを包み込み、守る……!」

彼女の手から放たれた魔法が村全体を覆い尽くすように広がり、ライナーの部隊を完全に遮断した。その水の力が、民間人を守る盾となる。

ライナーはその光景を見つめながら、短く息をついた。

「君の決意は本物だ。だが、戦場はそれだけでは終わらない。」

彼は剣を収め、部下たちに撤退の合図を送った。

「……私たちを見逃すの?」

フィオラが驚きの声を上げると、ライナーは振り返らずに答えた。

「君の信念を、もう少し見てみたくなった。それが俺の答えだ。」

彼の部隊が森の中へと消えていくのを見届け、フィオラは力が抜けたように地面に膝をついた。

ロイドがすぐに彼女の隣に駆け寄った。

「おい、大丈夫か?」

「ええ……無事よ。でも、ライナーが何を考えているのか、ますます分からなくなったわ。」

フィオラの言葉にロイドは険しい表情を浮かべたが、彼女の肩にそっと手を置いた。

「分からなくてもいい。お前が信じた道を歩き続ければ、それで十分だ。」

フィオラは彼の言葉に小さく微笑み、再び前を向いた。
守るべきものを守れたという確信と、ライナーの真意を探るための新たな決意が、彼女の中で強まっていた。
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