戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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8章 戦争の終結

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影を倒した翌朝、静寂が訪れた荒野で、フィオラたちは一時的な陣を張っていた。
黒の裂け目が閉じたことで、影の脅威が大きく後退したことを全員が感じていたが、戦争そのものが終わったわけではない。

フィオラは焚火の前に座り、地図を見つめていた。その顔には疲労がにじんでいたが、目はまだ燃えるような意志を宿している。

ロイドが近づいてきて、彼女の隣に腰を下ろした。

「お前、昨夜からほとんど寝てないだろう。」

「少しだけ……でもまだ考えることがあるの。」

ロイドは短く息を吐き、フィオラから地図を取り上げた。

「少し休め。お前が倒れたら、俺たち全員が終わりだ。」

フィオラは困ったように微笑むと、ロイドの言葉に素直に頷いた。

「分かったわ。ありがとう、ロイド。」

その少し離れた場所で、ライナーは影を倒した後の状況を静かに見つめていた。
彼は地平線の向こうを見据えながら、自分の中に渦巻く感情を整理しようとしていた。

「これで……戦争が本当に終わるのか?」

影を倒しても、戦争そのものが続く可能性が高い。国同士の対立は、影の存在を超えて根深いものがあることを彼は知っていた。

「フィオラはそれでも進むのだろうな。」

彼は遠くにいるフィオラの姿を見つめ、短く微笑んだ。その笑みには、少しの諦めと敬意が混じっていた。

昼過ぎ、フィオラたちは次の行動を決めるために集まった。
地図上に広げられたのは、影の拠点を制圧した後の戦況を示す両軍の配置図だった。

「影を倒したことで、敵軍の動きが鈍くなっているわ。でも、このままでは戦争そのものが長引く可能性がある。」

フィオラの言葉に、ロイドが険しい顔で応じた。

「つまり、影が消えた今、戦争の本質が見えてきたってことか。」

「ええ。戦争の原因となっている利権や領土問題、それを解決しない限り、私たちはまた別の戦場に立たされることになるわ。」

ライナーが静かに地図に指を置いた。

「戦争を終わらせるには、両国の指導者たちに影の真実を知らせるしかない。だが、それをするには、大きなリスクが伴う。」

フィオラはその言葉に深く頷いた。

「それでも私はやるべきだと思う。私たちがこの戦争を終わらせるために動かなければ、誰も止めることはできない。」

その決意に、ロイドが目を閉じて深く息を吐いた。

「なら、俺もお前について行く。どんな道だろうと。」

「ありがとう、ロイド。」

ライナーは短く笑い、言葉を続けた。

「俺も同行しよう。俺の国の指導者たちに話を通すには、俺の力が必要だ。」

最終的な目的地として決まったのは、両国の国境付近にある中立地帯だった。
そこには、両軍の指導者たちが一時的に集まる交渉の場が設けられていた。影の真実を伝え、この戦争を終結に向かわせるには、その場が最後のチャンスだった。

進軍中、フィオラはロイドと並んで馬を進めながら、静かに口を開いた。

「ロイド、もしこの先で私たちが何かを失うことになったら……あなたはどうする?」

「簡単だ。お前が生きていれば、それで十分だ。」

ロイドの言葉に、フィオラは驚いたように彼を見つめた。

「ロイド……。」

「俺はお前を守るためにいる。それ以上でも、それ以下でもない。」

フィオラはその言葉に胸を締め付けられるような感情を抱きながらも、静かに頷いた。

中立地帯に到着したフィオラたちは、指導者たちとの会談を開始した。
だが、影の存在を伝えた直後、両軍の指導者たちは一斉に困惑の表情を浮かべた。

「影だと?そんなものが戦争を操っていたと?」

「信じられない……だが、それが本当ならば……。」

フィオラは一歩前に出て、力強く語った。

「影の存在を無視して戦争を続けるなら、私たちは再び同じ悲劇を繰り返すことになります!両国が協力して影の影響を排除し、新しい未来を築く必要があります。」

その声に、会場が静まり返る。ライナーが短く息を吐きながら口を開いた。

「俺たちが影を打ち破った証拠もある。これを見れば、彼らの存在を否定することはできない。」

彼が示したのは、影の残骸として回収した黒い石だった。その証拠が両国の指導者たちを動かし始める。

最終決戦の後、フィオラたちの行動が影響を及ぼし、両国は休戦に向けて動き出した。
その夜、フィオラは星空の下で静かに目を閉じていた。

ロイドが彼女の隣に立ち、短く声をかけた。

「お前は、やり遂げたな。」

「そうね……でも、これが終わりじゃないわ。」

「分かってる。だが、お前の隣にいるのは、俺だ。それだけは忘れるな。」

フィオラは微笑み、ロイドの言葉を胸に刻んだ。
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