魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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8章 古代戦場跡

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ギルドの打ち上げから数日後、アリアとイアンは再びギルドの依頼掲示板の前に立っていた。掲示板には数多くの依頼が貼り付けられ、その中には高報酬だが危険度の高いものも混じっている。

「どれにしようかな~。次はもうちょっと面白そうなやつがいいよね!」
アリアが掲示板を覗き込みながら言う。

「……面白さを基準に選ぶのはやめてください。依頼の内容を慎重に検討するべきです。」
イアンが冷静に返す。

「そうは言うけどさ、これとかどう思う?」
アリアが指差したのは、「古代戦場跡の調査および魔物討伐」の依頼だった。

「古代戦場跡……ここには確か、かつて魔族と人間の大規模な戦闘が行われた記録があります。」
イアンが依頼書を読みながら言った。

「えっ、それってなんかすごくロマンあるじゃん!」

「ロマンを求めて行く場所ではありません。魔族の力が今も残っている可能性が高い危険な場所です。」

「でも、こういうのこそ『選ばれし刃』が役に立つかもしれないよ!」
アリアが腰に下げた剣をポンと叩く。

「……確かに、この剣の力を試すには適した場所かもしれません。」
イアンが少し考え込んだ後、頷いた。

「よし、決まり!じゃあ受付で手続きしよう!」

受付で依頼を受けた二人は、ギルドを出て準備を始めた。アリアは冒険用の食料や水を調達し、イアンは魔道具の点検と補充を進める。

「ねえイアン、こういうのってすごくワクワクしない?」
アリアが買ったばかりの果物を頬張りながら聞く。

「……危険地帯へ向かうのにワクワクするのは理解に苦しみます。」
イアンは少し呆れたように答える。

「だって、こういう場所って絶対に新しい発見があるじゃん!そういうのが冒険の醍醐味だよ!」

「その楽観的な考え方が、君を危険にさらすことになるのです。」

「まあまあ、イアンがいるから大丈夫だよ!」
アリアは笑顔でそう言い放った。その無邪気な言葉が、イアンの胸に小さな温かさを灯す。

翌朝、二人は古代戦場跡を目指して出発した。目的地は街から東へ数日歩いた先にある広大な平原。その地はかつての激戦の場として知られ、今もなお多くの魔物が巣食っているという。

道中、イアンは杖を握りながら周囲を警戒していた。一方、アリアは剣を肩に担ぎ、楽しそうに鼻歌を歌っている。

「平原かあ。広い場所で戦うのって、なんかテンション上がるよね!」

「そのテンションが戦闘中に消えないことを祈ります。」
イアンが静かに答える。

古代戦場跡にたどり着いた二人は、その荒涼とした景色に目を奪われた。枯れた草が風に揺れ、石碑のように立つ古い武具が点々と散らばっている。その場全体が不気味な静寂に包まれていた。

「ここが……古代戦場跡。」
アリアがつぶやく。

「魔力の残留が感じられます。この地は未だ浄化されていない。」
イアンが周囲を見回す。

突然、遠くから低い唸り声が響いた。二人はすぐに身構える。

「来た!」
アリアが剣を構える。

霧の中から姿を現したのは、巨大な狼の魔物だった。全身が黒い煙に包まれ、その瞳は不気味な赤い光を放っている。

「これは……普通の魔物ではない。」
イアンが杖を構える。

「まあ、やるしかないでしょ!」
アリアが力強く答え、狼型の魔物に向かって突進した。

アリアの剣が魔物に振り下ろされるが、その刃は煙のような体に触れると弾かれる。

「何これ!?攻撃が通らない!」

「この魔物は実体を持たない。通常の武器では有効ではありません!」
イアンが素早く魔法を放ち、魔物の動きを止める。

「じゃあ、この剣ならどうかな!」
アリアは「選ばれし刃」を握りしめ、集中する。すると、剣が青白い光を放ち始めた。

「……剣が反応している!」
イアンが驚きの声を上げる。

次の瞬間、アリアは光る刃を振り下ろした。その光が魔物の煙を切り裂き、狼の形が一瞬で崩れ去った。

「やった……のかな?」
アリアが剣を下ろしながら息を整える。

「君の剣が魔物の核心を断ち切ったようだ。この剣には、特異な力が宿っている。」
イアンが剣を見つめながら言った。

「やっぱりすごい剣じゃん!」
アリアは笑顔で剣を握り直した。

「ただし、使い方を間違えれば危険でもある。その力を理解しなければならない。」
イアンの言葉に、アリアは少しだけ真剣な表情を見せた。

「分かった。ちゃんと気をつけるよ。」

二人はさらに奥へと進み、戦場跡の謎を追い始めた。その刃がもたらす運命と共に――。
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