30 / 200
8章 古代戦場跡
③
しおりを挟む
戦場跡での冒険を終え、夕暮れの中、二人は街へ向かって歩いていた。道のりは長いが、周囲の穏やかな景色が彼らの心を少し和ませていた。
「ふぅ、今回は大変だったね。でも、剣の力も少しずつ分かってきたし、充実した冒険だった気がする!」
アリアが剣の柄に触れながら、満足そうに言う。
「充実しているのは君だけかもしれません。私はまだ、この剣の力に危険性を感じています。」
イアンが冷静に返す。
「それでも、こうしてちゃんと帰れてるんだからいいじゃん!」
アリアが明るく笑うと、イアンは少し呆れたようにため息をついた。
しばらく歩いた後、ふとアリアが足を止めた。
「ねえ、イアン。」
その声はいつもの軽い調子ではなく、どこか真剣だった。
「どうしました?」
イアンが振り返る。
「私さ……これまでずっとソロで冒険してきたんだよね。ソロの方が気楽だし、自分のペースで動けるし、誰かに迷惑かけることもないから。」
アリアは少し視線を落としながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「でも、気がついたらイアンがいるのが当たり前になっててさ。一緒に冒険するのが、なんか自然になっちゃってた。」
イアンは黙って彼女の言葉を聞いていた。その顔には驚きとわずかな戸惑いが浮かんでいる。
「イアンがいてくれなかったら、たぶん、あの戦場跡でもやられてたかもしれないし……いや、それ以前に、今までの冒険も危ないときがいっぱいあったかも。」
アリアは少し照れたように笑った後、真っ直ぐにイアンを見上げた。
「ありがとう。イアンがいてくれて、本当に助かってるよ。」
イアンは一瞬だけ言葉を失った。感謝されることに慣れていない彼には、どう返事をすればいいのかが分からなかった。
「……私は、ただ君を守るべき立場にいるだけです。感謝されるようなことはしていません。」
少し硬い声で答えたが、その視線はどこか柔らかだった。
「そんなことないよ!イアンがいなかったら、私ここまで来られなかったもん。」
アリアは屈託のない笑顔でそう言った。
イアンは彼女の笑顔を見ながら、胸の奥に湧き上がる感情を静かに押し込める。
(この場所にいられる理由は、彼女がいるからだ。)
「……ならば、これからも君のそばで力を尽くすだけです。」
イアンが短くそう答えると、アリアは嬉しそうに頷いた。
「よーし、これからもよろしくね、イアン!」
二人の間に温かい沈黙が流れたまま、街の明かりが見えてきた。その光を見ながら、アリアは再び剣に触れ、自分が手にした力と、それを支えてくれる仲間の存在を心の中で噛みしめていた。
イアンもまた、隣を歩く彼女をちらりと見つめながら、アリアの無邪気な言葉が自分にどれほどの安らぎを与えているかに気付いていた。
「ふぅ、今回は大変だったね。でも、剣の力も少しずつ分かってきたし、充実した冒険だった気がする!」
アリアが剣の柄に触れながら、満足そうに言う。
「充実しているのは君だけかもしれません。私はまだ、この剣の力に危険性を感じています。」
イアンが冷静に返す。
「それでも、こうしてちゃんと帰れてるんだからいいじゃん!」
アリアが明るく笑うと、イアンは少し呆れたようにため息をついた。
しばらく歩いた後、ふとアリアが足を止めた。
「ねえ、イアン。」
その声はいつもの軽い調子ではなく、どこか真剣だった。
「どうしました?」
イアンが振り返る。
「私さ……これまでずっとソロで冒険してきたんだよね。ソロの方が気楽だし、自分のペースで動けるし、誰かに迷惑かけることもないから。」
アリアは少し視線を落としながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「でも、気がついたらイアンがいるのが当たり前になっててさ。一緒に冒険するのが、なんか自然になっちゃってた。」
イアンは黙って彼女の言葉を聞いていた。その顔には驚きとわずかな戸惑いが浮かんでいる。
「イアンがいてくれなかったら、たぶん、あの戦場跡でもやられてたかもしれないし……いや、それ以前に、今までの冒険も危ないときがいっぱいあったかも。」
アリアは少し照れたように笑った後、真っ直ぐにイアンを見上げた。
「ありがとう。イアンがいてくれて、本当に助かってるよ。」
イアンは一瞬だけ言葉を失った。感謝されることに慣れていない彼には、どう返事をすればいいのかが分からなかった。
「……私は、ただ君を守るべき立場にいるだけです。感謝されるようなことはしていません。」
少し硬い声で答えたが、その視線はどこか柔らかだった。
「そんなことないよ!イアンがいなかったら、私ここまで来られなかったもん。」
アリアは屈託のない笑顔でそう言った。
イアンは彼女の笑顔を見ながら、胸の奥に湧き上がる感情を静かに押し込める。
(この場所にいられる理由は、彼女がいるからだ。)
「……ならば、これからも君のそばで力を尽くすだけです。」
イアンが短くそう答えると、アリアは嬉しそうに頷いた。
「よーし、これからもよろしくね、イアン!」
二人の間に温かい沈黙が流れたまま、街の明かりが見えてきた。その光を見ながら、アリアは再び剣に触れ、自分が手にした力と、それを支えてくれる仲間の存在を心の中で噛みしめていた。
イアンもまた、隣を歩く彼女をちらりと見つめながら、アリアの無邪気な言葉が自分にどれほどの安らぎを与えているかに気付いていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる