魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

文字の大きさ
44 / 200
11章 呪い

しおりを挟む
街へ戻ったアリアとイアンは、その足でギルドを訪れた。イアンはまだ疲労の色が濃く、アリアが肩を貸している状態だった。

ギルドのホールでは、ユーゴがすでに二人を待っていた。その表情はいつになく厳しい。

「イアン、何があった?」

ユーゴが問うと、イアンは静かに椅子に腰を下ろし、短く答えた。

「呪いが……制御を失いかけた。」

その言葉に、ユーゴの眉が僅かに動いた。

「やはり、君の中に眠る魔族の力が問題を起こしているか。詳しく話を聞かせてもらおう。」

アリアは驚いた表情でイアンを見つめた。

「魔族の力……?イアン、それってどういうこと?」

イアンはしばらく沈黙していたが、やがて重い口調で語り始めた。

「私の母は……魔族だった。父は人間だ。二人の間に生まれた私は、その血を受け継いでいる。」

その言葉にアリアは目を見開いた。

「魔族……。でも、イアンは今まで普通に生活してたじゃない。それがどうして呪いに?」

「魔族の血を引く者には、時に制御できない力が宿ることがある。それは力でもあり、呪いでもある。」

イアンは自分の手を見つめながら続けた。

「私は魔力を使うたびに、その血が反応し、暴走の危険を孕む。普段は抑えているが、今日のように魔力を大量に使うと……。」

「じゃあ、さっきの魔力の嵐みたいなのは……全部、呪いのせい?」

アリアが少し不安げに尋ねると、イアンは静かに頷いた。

「そうだ。もし君がいなければ、私は自分の力を止められなかったかもしれない。」

「私が……?」

アリアは驚きながらも、少し照れくさそうに目を逸らした。

「でも、それなら良かった。イアンを助けられたなら。」

「君が私の暴走を止めた。君の存在が、私にとっての……安定を与えているのかもしれない。」

イアンの言葉に、アリアは少し赤くなりながら小さく頷いた。

ユーゴは二人のやり取りを黙って聞いていたが、やがて重々しく口を開いた。

「イアン、君の力は確かに危険だ。しかし、それを完全に抑え込む方法がないわけではない。」

「方法……?」

イアンがユーゴを見上げる。

「街の結界を司るこの地には、封印術の記録が残されている。それを応用すれば、君の呪いを一時的に抑える手段が見つかるかもしれない。」

「封印術……。」

「ただし、完全に解決するものではない。君が引き続き力を使えば、いずれ抑えきれなくなる危険は残る。」

その言葉にイアンは少し目を伏せたが、すぐに静かに頷いた。

「試してみる価値はある。アリアのためにも、私は制御を取り戻さなければならない。」

「分かった。それなら私も協力するよ!」

アリアが勢いよく手を挙げる。

「お前はもっと自分の疲労を気にしろ。剣の代償もまだ完全には明らかになっていないのだからな。」

ユーゴの冷静な声に、アリアは少しだけ肩をすくめた。

「そ、それは分かってるけど……でも、私だってイアンを助けたいし!」

「まったく、君たちは似た者同士だな。」

ユーゴが苦笑しながら答えると、ホールの空気が少し和らいだ。

その夜、アリアは自室で剣を手にしながら、今日の出来事を振り返っていた。

「イアンが魔族の血を引いてるなんて……全然気づかなかった。」

剣の刃が月明かりを反射し、微かに光る。彼女はその光を見つめながら、呟いた。

「でも、あの呪い……本当に怖かった。イアンがいつも抑えてるなんて、どれだけ辛いんだろう。」

彼女は剣をそっと脇に置き、窓の外に広がる夜空を見上げた。

「私がもっと強くならなきゃ。イアンを助けるためにも……。」

彼女の決意は、静かな夜風の中に溶け込んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

処理中です...